【在学中に弁理士を目指すべき?】大学生・大学院生が知っておくべき現実と戦略

弁理士全般

こんにちは、運営者のcoffeeです。

私は材料系の大学院で電池の電解液研究をしていました。添加物の組成を変えながら充電特性を最適化する研究で、今思えばまさに特許になりうるテーマでした。大学院では知財の授業も受けたことがありましたが、当時は深く意識していませんでした。

卒業後にメーカーの開発職に就き、社内の特許研修で弁理士という職種を知って本格的に興味を持ちました。その後知財部に異動し、2022年に弁理士試験に合格しています。

今振り返ると、学生のうちに弁理士を目指しておけばよかったと感じています。社会人になってから取得すると、そこがキャリアのゴールになりやすい。でも学生のうちに取得していれば、米国特許資格(USPTO登録)や弁護士資格へのステップアップ、留学・インターンとの組み合わせなど、もっと多様な選択肢が広がっていたはずです。

この記事では、そういった実体験をもとに「在学中に弁理士を目指すことの現実」をできるだけ正直に書きます。メリットだけでなく、デメリットや難しさについても触れます。


第1章:まず現実を知る――学生合格者の実態

1-1. 合格者に占める学生の割合

令和6年度(2024年度)弁理士試験の合格者は205名で、合格率は6.4%でした。このうち学生が9名(4.4%)。少数派ではありますが、毎年一定数の学生が合格しています。

年代合格者数割合
10代0人0%
20代71人34.6%
30代89人43.4%
40代29人14.1%
50代以上16人7.8%

最年少合格者は20歳。20代全体では34.6%と一定数います。ただし合格者の中心は30〜40代の社会人で、学生の合格は簡単ではありません。

1-2. 合格までに何回かかるか

令和6年度試験のデータでは、初回合格は15.2%(29名)のみ。残りの約85%は複数回の受験を経て合格しています。弁理士試験は1〜2年で簡単に受かる試験ではなく、平均受験回数は約4回です。

これは在学中の合格を目指す際に重要な前提です。修士2年間で1回か2回しか受験できないことを考えると、学部1〜2年など早い段階からスタートする方が現実的です。

1-3. 理系出身者が圧倒的に多い

出身学部別では理工系が81.7%を占めています。弁理士試験の科目は特許法・意匠法・商標法など法律系ですが、実際の特許業務では技術分野の知識が必要なため、理系出身者が多くなっています。

私自身の電池研究のように、自分の研究テーマが特許と直結していると感じられるなら、それは知財を学ぶ強い動機になります。


第2章:在学中に弁理士を目指すメリット

2-1. 知財職への就職がほぼ確実になる

メーカーに新卒で入ると、配属先は基本的に会社が決めます。希望を出しても知財部に行けないことはよくあります。でも弁理士資格を持っていれば、知財部への配属がほぼ確実になります。余程のことがない限り、弁理士を採用しておきながら知財部以外に配属することはしません。

特許事務所も「未経験OK・合格者歓迎」の求人が多く、資格さえあれば実務経験ゼロでもスタートできます。

2-2. キャリアを早くスタートできる

知財業界に入ってくる人の平均年齢は30歳前後です。弁理士になって新卒で知財職に就けば、同年齢の人がスタートを切る頃には、資格と数年分のキャリアを両方持てることになります。

私は30代で合格しましたが、資格取得後に転職で年収が大幅に上がりました。同じ成果を20代で出せていたら、その後の選択肢はもっと広かったと思います。

2-3. 若い方が記憶力・集中力で有利

学生のうちはピンと来ないかもしれませんが、年齢とともに暗記効率は下がります。弁理士試験の受験生は30〜40代が大半なので、記憶力・集中力のある若いうちに勉強するのは純粋に有利です。また学生は社会人と違って「本業が忙しくて勉強できない」という制約がありません。

2-4. 就職後に試験勉強しなくて済む

社会人になってから弁理士試験を受ける人の苦労は相当なものです。仕事が終わってから毎日2〜3時間勉強を続けるのは、体力的にも精神的にも消耗します。平均受験回数4回というデータは、そういう状況を反映しています。

在学中に合格しておけば、就職後は仕事だけに専念できます。

2-5. その後の選択肢が大きく広がる

私が一番後悔しているのはここです。社会人になってから弁理士を取ると、それがゴールになりがちです。でも学生のうちに取得していれば、その先が見えてきます。

  • 米国特許資格(USPTO登録弁理士)へのチャレンジ:国際的な知財業務を担える人材になれる。社会人になってから英語と米国資格を両立させるのは難しい
  • 弁護士とのダブルライセンス:知財訴訟まで一貫して扱える。司法試験の勉強は若い方が向いている
  • 留学・インターンとの組み合わせ:資格+海外経験という掛け合わせは社会人では作りにくい。私自身、留学やインターンをもっとやっておけばよかったと今でも思っています

第3章:在学中に弁理士を目指すデメリット・難しさ

3-1. 研究・授業・就活との両立が相当きつい

社会人の「仕事との両立」が大変なのと同様に、学生の「研究・授業との両立」も相当きついです。特に修士課程は研究に集中しなければならない時期と試験の山場が重なります。

正直に言うと、弁理士試験の勉強は3,000時間程度が目安とされています。2年間で割ると1日4〜5時間。研究・授業がある中でこれを確保するのは簡単ではありません。

3-2. 進路が知財に絞られる

弁理士を目指すということは、ある程度知財の方向に進路を絞ることになります。研究職→知財部という転換は後からでもできますが、弁理士→研究職というルートは現実的ではありません。

「将来何をしたいかまだわからない」という方は、急いで弁理士を目指すより、まず研究や就活を通じて自分の方向性を固める方が先かもしれません。

3-3. 在学中に受からなかった場合のリスク

在学中に合格できなかったとしても、試験勉強で得た知財の知識・法律知識は就職活動や実務で活きます。「受からなかったら意味がない」ということはありませんが、それでも合格を前提にスケジュールを組むと、万一の場合のリカバリーが必要になります。


第4章:在学中に合格するための現実的なスケジュール

4-1. 試験制度の概要

試験区分内容実施時期合格率(目安)
短答式試験択一式(特許法・意匠法・商標法・条約など)5月約15〜20%
論文式試験論述(特許・意匠・商標)7月約10〜15%
口述試験口頭試問10月約90%

短答・論文で大半がふるい落とされます。最終合格率は全体で6〜7%程度です。

4-2. 修士課程在学中の学習モデル

時期主な学習内容
修士1年 4〜10月特許法・実用新案法のインプット中心。条文を読む習慣をつける
修士1年 11月〜翌3月意匠法・商標法・著作権などのインプット+短答演習開始
修士2年 4〜6月短答試験対策に集中(5月が本番)
修士2年 6〜7月論文試験対策へ切り替え
修士2年 8〜10月口述対策

学部生の場合はもう1年余裕を持たせた3年計画が現実的です。早く始めるほど、在学中の複数回受験という保険がかけられます。

4-3. 通信講座を使うべき理由

研究・授業・就活と並行しながら独学で進めるのは効率が悪いです。何をどの順番でどこまで学ぶかを設計してくれる講座があると、スキマ時間を無駄なく使えます。

スタディング弁理士講座はスマホ一つで学習が完結します。講義動画も短く区切られているので、通学の移動時間や研究の合間に使いやすいです。

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第5章:在学中に合格した後の就職先・キャリア

5-1. 就職先は大きく2つ

就職先特徴向いている人
特許事務所クライアントの特許出願・権利化を担当。弁理士全体の約70%が在籍。個人プレーの要素が強い専門性を深めたい、将来独立を考えている
メーカー知財部自社の知的財産の取得・管理・ライセンス交渉など。業務の幅が広い事業に近い仕事がしたい、ビジネス戦略に関わりたい

私はメーカー知財部を経て現在も知財部に在籍しています。知財部の仕事はコスト部門と見られがちですが、ビジネス戦略と絡めていくと面白みが出てきます。特許事務所か知財部かは、どちらの働き方が自分に合うかで選ぶのが基本です。

5-2. 研究テーマ×資格で差別化できる

技術分野主な就職先
機械・材料・電気系製造業の知財部、機械・電気系特許事務所
化学・薬学系製薬会社の知財部、化学特許事務所
情報・AI・ソフトウェアIT企業の知財部、ソフトウェア特許事務所

5-3. 転職を考えるなら専門エージェントを使う

知財業界の転職は、一般の求人サイトだけでは情報が限られます。私が転職活動で使ったリーガルジョブボードは、知財業界に特化したエージェントで、担当者が業界全体を深く把握していました。年収水準から各社の内部情報(面接で何が見られるか、どんな人材を求めているか)まで具体的に教えてもらえたので、転職活動がスムーズに進みました。

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第6章:おすすめ参考書

6-1. まず全体像をつかむことから始める

いきなり分厚い過去問集や条文集から入ると挫折しやすいです。「知的財産権とは何か」「特許と商標の違いは何か」という概念的な理解を先に固める方が効率的です。

6-2. 初学者におすすめの一冊

『弁理士スタートアップテキスト』(中央経済社)は、法律に苦手意識がある人でも読みやすく、試験の全体像から弁理士の仕事のリアルまでカバーしています。在学中から学習を始める方の最初の一冊として最適です。

6-3. ステップアップの教材

カテゴリ教材例使い方
条文集工業所有権法逐条解説制度の背景理解に
過去問集短答過去問題集(LEC・TAC)短答式対策の中心
論文対策論文マニュアル文章構成の型を身につける

よくある質問

Q. 法学部じゃないと弁理士は難しいですか?

難しくありません。むしろ合格者の8割以上が理工系出身です。法律は試験勉強で身につけられますが、技術背景は簡単には補えません。理系出身であることは強みです。

Q. 学部生でも弁理士試験に受験資格はありますか?

はい。弁理士試験に受験資格の制限はありません。年齢・学歴問わず誰でも受験できます。最年少合格者は20歳です。

Q. 在学中に合格できなかった場合はどうなりますか?

勉強で得た知識は就職活動でも実務でも活きます。また短答式試験は合格した年から2年間有効なので、就職後も継続して受験できます。在学中の受験は「挑戦しておくだけで意味がある」と考えていいです。

Q. 社会人になってから取るのとどちらが現実的ですか?

どちらも現実的です。ただし在学中の方が時間的な自由度が高く、社会人の方は実務経験という武器があります。取れるなら早い方が選択肢は広がります。社会人になってから取る場合は働きながら平均4回受験が必要になることを前提に計画を立てる必要があります。


まとめ

  • 学生合格者は毎年一定数いるが全体の4〜5%程度で、簡単ではない
  • 在学中に取得するメリットは大きい(就職確実・キャリアを早くスタート・若い記憶力を活かせる・その後の選択肢が広がる)
  • デメリットも正直にある(研究との両立・進路が絞られる)
  • 理系バックグラウンドは試験にも実務にも直接活きる
  • 学生のうちに取得すると、米国資格・弁護士・留学など次のステップが取りやすくなる

私自身は社会人になってから取得しましたが、大学院で知財の授業を受けながら当時は動かなかったことを今でも少し後悔しています。この記事を読んでいる学生の方は、まず試験の概要と参考書を確認するところから始めてみてください。

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