【なぜ減る?】弁理士の減少が止まらない理由と今後の可能性|将来性は本当にないのか?

弁理士という仕事

こんにちは、運営者のcoffeeです。

最近、弁理士を目指す人が減っている感覚があります。特に「資格を取って特許事務所に移りたい」という人が以前と比べて明らかに少なくなっています。セミナーや業界の集まりに出ても、同世代以下の参加者が少なく、若手の顔ぶれがほぼ変わっていない、ということも珍しくありません。

私自身は材料系大学院卒業後、メーカーの開発職を経て知財部に異動し、2022年に弁理士試験に合格しました。現在は外資系企業の知財部でビジネス戦略に近い仕事をしながら、このブログを運営しています。

この記事では「なぜ弁理士が減っているのか」「将来性はあるのか」について、実体験と実際のデータをもとに書きます。ネガティブな面もポジティブな面も、できるだけ正確に伝えます。


第1章:「弁理士が減っている」の実態――数字で確認する

1-1. 登録弁理士の総数は実は増えている

まず事実確認として、登録弁理士の総数は増加しています。日本弁理士会のデータによると、2013年の10,171人から2022年には11,743人と、約15%増えています。

では「弁理士が減っている」という話はどこから来ているのか。問題は総数ではなく年齢構成です。

1-2. 40歳未満の弁理士が10%しかいない

特許庁の報告書「弁理士制度の現状と将来の課題」(2024年)によると、登録弁理士の約90%が40歳以上で、40歳未満はわずか約10%です。しかも2013年には約2,800人いた若手弁理士が、2022年には1,257人に減少しており、10年で55%も減っています。

さらに深刻なのは、毎年約150人の40歳未満の合格者が出ているにもかかわらず、40歳未満の登録弁理士は毎年約110人ずつ減っているという点です。合格しても登録しない・すぐに抹消するという動きが起きています。

1-3. 今後10年で最大1,400人の減少が予測されている

現在の弁理士の約25%(約3,000人)が60歳以上です。この世代が今後10年で引退・退職していく一方、新規参入が追いつかないため、特許事務所に所属する弁理士は最大1,400人減少すると日経XTECHも報じています(2024年2月)。

1-4. 試験の志願者数の推移

年度志願者数
2010年(平成22年)約8,600人
2015年(平成27年)約4,700人
2020年(令和2年)約3,200人
2024年(令和6年)3,502人(特許庁公式)

ピーク時と比べると半分以下まで志願者数が落ちています。ただし2024年は前年比で若干増加しており、底を打った可能性もあります。


第2章:なぜ若手が弁理士を目指さなくなっているのか

2-1. 試験の難しさと長期戦になるリスク

弁理士試験は合格率6〜7%の難関試験で、平均受験回数は約4回です。働きながら数年間勉強を続けるのは体力的にも精神的にも消耗します。「やっと合格したのに30代後半になってしまった」というケースも珍しくありません。

私が合格できたのはスタディングを使ってスキマ時間に学習を積み上げたことが大きかったです。

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2-2. キャリアパスが見えにくい

「弁理士を取ってどうなるのか」が具体的にイメージしにくいことも一因だと思います。特許事務所に移れば年収が上がるのかどうか、知財部での評価に直結するのかどうか、答えは人によって全然違います。

実際、私の場合は弁理士取得後に転職で年収が大幅に上がりましたが、それは資格だけでなく実務経験と転職先の選択が組み合わさった結果です。「資格を取れば自動的に上がる」とは言いにくい部分があります。

2-3. AIへの漠然とした不安

「AIで特許明細書が書けるようになるなら弁理士は不要になるのでは」という議論は、若手層を中心に広がっています。この点については次の章で詳しく書きます。

2-4. 国内特許出願件数の長期的な減少

日本国内の特許出願件数はピーク時(2005年頃の約43万件)から2020年には30万件を下回るまで減少しています。出願が減れば弁理士の仕事も減るという懸念は理解できます。ただしこれは国内出願の話であり、国際出願(PCT)は別の傾向があります。


第3章:AIは弁理士の仕事を奪うのか――現場の実感

3-1. 実務でのAI活用は進んでいる

結論から言うと、私は業務でAIを使いまくっています。先行技術調査の補助、明細書のドラフト作成補助、クレーム検討の壁打ち相手など、AIが入り込んでいる場面はかなり多いです。

ただし「AIが弁理士を代替する」という感覚はまったくありません。AIは道具として使っており、判断・責任・クライアントや発明者とのコミュニケーションは人間がやっています。

3-2. AIが変えるのは「作業量」であって「仕事の本質」ではない

明細書のドラフトを作る時間は確実に短縮されます。でも、クライアントの技術を理解して権利範囲を設計する、競合の特許を読んで戦略を立てる、無効審判で戦う——こういった部分はAIに任せられません。

むしろAIで定型作業が効率化された分、戦略的な判断や交渉の比重が増しています。技術と法律の両方を理解した上で意思決定できる人材の価値は、AIが普及するほど上がっていくと私は考えています。

業務の種類AIの影響
先行技術調査大幅に効率化(ただし最終判断は人間)
明細書ドラフト作成補助ツールとして活用可能
権利範囲の設計・戦略立案代替困難
係争・無効審判対応代替困難
外国出願・国際対応代替困難
発明者・クライアントとのコミュニケーション代替困難

第4章:若手弁理士が減っているからこそ需要がある

4-1. 供給が減っても需要は消えていない

試験の志願者が減っている一方で、企業の知財部や特許事務所が若手弁理士を必要としているという状況は変わっていません。40歳未満が10%しかいないという現実は、言い換えれば「若手というだけで希少になっている」ということです。

私が転職活動をしたとき、弁理士資格を持っているというだけで面接の数が増え、オファーの条件も上がりました。資格がある人材の絶対数が少ないので、需要と供給のバランスが受験者にとって有利な方向に傾いています。

4-2. 国際出願の需要は増えている

国内出願は減っていますが、PCT(特許協力条約)を使った国際出願は増加傾向にあります。グローバル展開を進める日本企業が増える中で、外国出願の経験・英語力・複数国の特許制度の知識を持った弁理士は今後も必要とされます。

4-3. 知財戦略の重要性が高まっている

AI・半導体・バイオテクノロジー・グリーンエネルギーなど、産業の最前線では特許戦略が競争の鍵になっています。技術の理解と法律の知識を両方持ち、事業と絡めて知財戦略を組める人材の需要は増しています。これは特許事務所よりも企業知財部で特に顕著で、私自身も今まさにその領域の仕事をしています。

知財業界の転職については、リーガルジョブボードが専門特化していて実用的でした。担当エージェントが知財業界全体を把握しており、どの事務所・企業が何を求めているかを具体的に教えてもらえました。

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第5章:弁理士として活躍するために今重要なこと

5-1. 資格だけでは足りない、でも資格がないと始まらない

弁理士資格を持っているだけで採用・転職が有利になるのは事実です。一方で、資格を取った後にどんな業務経験を積むかで実力の差が出ます。明細書作成・中間処理・外国出願・係争対応など、担当できる範囲を広げていくことが重要です。

5-2. 今後価値が上がるスキルセット

スキル重要性
外国出願(PCT・パリルート)の実務高い(国際出願増加に伴い需要増)
英語での特許業務高い(外資系・グローバル企業の需要が大きい)
AIツールを活用した業務効率化高い(使えない人との差が開く)
知財戦略の立案・事業連携高い(企業知財部で特に評価)
係争・無効審判対応高い(AIでの代替が困難)

5-3. まず全体像をつかむための一冊

これから弁理士試験を目指す方には、最初に全体像をつかめる入門書をおすすめします。『弁理士スタートアップテキスト』(中央経済社)は、法律が初めての理系出身者でも読みやすく、試験の範囲と弁理士の仕事のリアルを両方カバーしています。


まとめ:弁理士の現状と、これから目指すことの意味

  • 登録弁理士の総数は増えているが、40歳未満は全体の10%しかいない
  • 試験志願者はピーク時の半分以下まで減少したが、2024年は若干増加
  • 今後10年で特許事務所の弁理士が最大1,400人減少と予測されている
  • AIは実務に入り込んでいるが、戦略・判断・交渉の部分は代替されていない
  • 国際出願・知財戦略など、成長している領域での需要は続いている
  • 若手弁理士の絶対数が少ないため、資格があるだけで市場での希少性がある

弁理士を目指す人が減っているのは事実ですが、それは業界のニーズが消えたからではありません。試験の難しさやキャリアの見えにくさが参入を妨げているだけで、需要は残っています。そのことを業界の中にいる立場として正直にお伝えしておきます。

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