弁理士は本当に激務なのか?理系出身の現役弁理士が実態を語ります

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弁理士=激務というイメージ、実際どうなの?

弁理士という職業について調べていると、「激務」「ブラック」「残業が多い」といったネガティブな言葉が検索候補に出てくることがあります。実際に「弁理士 激務」で検索をかけると、SNSや掲示板でも「平日は毎日終電」「納期に追われて土日も仕事」といった体験談が見つかることも。

では、弁理士は本当に激務なのでしょうか?
答えは「職場によるが、激務になるケースも確かにある」です。

私は2021年から知財部に異動し、現在は社内弁理士として働いています。本記事では、現役弁理士の立場から「どんな職場が激務なのか」「激務にならないための選び方」などをできるだけ実態に即して詳しく解説します。

また、この記事では必要に応じて私の別記事も紹介します。弁理士試験の勉強法や、知財部の仕事の具体的な内容についても、興味があればぜひご覧ください。

【第1章】弁理士の主な働き方3パターンと激務度の違い

弁理士として働く場は主に以下の3つに分かれます。

1. 特許事務所勤務(いわゆる「外内」or「内外」事務所)

弁理士の中でも「激務」とされがちなのがこのパターン。
なぜなら、クライアント(企業)から依頼を受けて、期限に厳しい特許明細書の作成や中間対応などを高い精度とスピードでこなす必要があるからです。

納期管理、クレーム修正、翻訳対応、意見書作成……案件が重なると、繁忙期には休日出勤や深夜残業も珍しくありません

それでもこの働き方を選ぶ弁理士が多いのは、高収入が期待できるから。実力主義の側面もあり、年収1000万円超えも十分可能です。

2. 企業知財部勤務(インハウス弁理士)

私自身が現在このパターンです。
企業知財部の弁理士は、社内の研究・開発部門と連携して、発明の発掘や特許出願の戦略立案、権利化、他社権利のクリアランス対応、特許係争などを行います。

確かに調整業務が多くストレスもありますが、激務度は事務所勤務よりマイルドな場合が多いです。
特に大手企業の知財部ではフレックス制やリモート勤務も進んでおり、ワークライフバランスを重視する方にとっては良い選択肢です。

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3. 独立開業(個人事務所・副業型)

最近は、特許事務所を自分で立ち上げたり、副業で出願支援を行う弁理士も増えてきています。

自由度が高い分、自己管理がすべて。営業・事務・実務を一手に担うため、激務になる可能性もあります。ただし、自分の裁量でコントロールできる点は魅力です。

【第2章】なぜ「弁理士=激務」と言われるのか?5つの理由

弁理士に限らず、「士業」には激務のイメージがつきまといますが、弁理士が特に「きつい」と言われる背景には以下のような理由があります。

理由①:納期がシビアすぎる

特許や意匠、商標の手続きには「審査請求期限」「応答期限」などが厳格に設定されています。これらの期限は**1日でも過ぎると重大な不利益(権利の消滅など)**が発生するため、常にスケジュールとの戦いです。

特に特許事務所勤務では、複数の案件が同時進行し、緊急対応も日常茶飯事。結果として、納期前には休日返上での対応も発生します。

理由②:ミスが許されない責任の重さ

特許明細書は、そのまま将来の訴訟でも使用される「証拠」にもなりうる非常に重要な文書です。
弁理士が1文字ミスをすれば、何億円もの価値を持つ発明が無効になってしまうことも。

そのプレッシャーの中で、正確かつ論理的な文章を作り上げるスキルが求められます。これは新人には特に厳しく、精神的に「激務」と感じることもあるでしょう。

理由③:急なスケジュール変更が多い

クライアント企業の都合、審査官からの連絡、海外代理人とのやり取りなど、予定通りに進まないことは日常茶飯事です。

予定していた作業が飛び、深夜に対応する羽目になるということも。
こうした「読めない忙しさ」も、弁理士の激務イメージを強めています。

理由④:OJT中心で教育体制が整っていない事務所もある

特許事務所によっては新人教育にあまり時間を割けないことも多く、実務未経験でいきなり明細書作成を任されるケースもあります。

その結果、「やり方が分からないのに、納期はある」という過酷な状況に陥ることも。
「毎日怒られる」「眠れない」などと感じてしまう新人弁理士も少なくありません。

理由⑤:勉強と実務のギャップ

弁理士試験に合格したばかりの人が直面するのが、実務とのギャップ
たとえば試験で学んだ法律知識と、実際の出願・中間処理との間には大きな乖離があります。

このギャップを埋めるために、夜中に自己学習しながら仕事をこなす必要が出てくるのも「激務」だと感じる一因です。

【第3章】弁理士の激務を回避するための3つの戦略

弁理士=激務というイメージに怯える必要はありません。
自分に合った働き方や職場を選べば、無理なく長く続けられるキャリアになります。

戦略①:働き方の違いを理解して選ぶ

前述のように、「特許事務所」と「企業知財部」では働き方のスタイルが大きく異なります。
ワークライフバランスを重視するなら、企業知財部への就職・転職が現実的な選択肢です。

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【第4章】激務な弁理士の現実と、それでも目指す価値

ここまで弁理士の「激務」の実態について深堀りしてきましたが、それでもなお「弁理士になってよかった」と感じる人は少なくありません。
それはなぜでしょうか?以下で、現役弁理士としての私の実感を含めてお伝えします。

1. 自分の専門性が直接お金に換わる

弁理士は、専門性の高い職業です。理系知識×法律知識×言語スキル(日本語・英語)の掛け算によって、唯一無二のスキルを提供することができます。

たとえば、特許明細書は1件あたり10万円〜30万円程度の報酬が発生することもあり、自分のスキルが直接収入につながる感覚を持てます。これは大きなモチベーションになります。

2. 年収の上限が高い

企業知財部でも30代で年収700〜800万円、特許事務所勤務なら実力次第で年収1000万円を超えることも珍しくありません。

「激務」=「割に合わない」ではなく、激務だがしっかり見返りがあるというのが実情です。

3. 自分の仕事が世の中に影響を与える実感

特許出願を通じて、新しい技術を世の中に送り出す支援ができるのが、弁理士という職業です。

私は開発職から知財部に異動して弁理士になりましたが、「発明を守る側」に立てたことで、技術者時代とはまた違う形で社会に貢献している実感を持っています。

【第5章】激務を避けて弁理士を目指すには?効率的な学習が鍵

では、これから弁理士を目指す方が「激務すぎる実務」を回避し、効率的にキャリアを築くためにはどうすればいいのでしょうか?

その答えの1つが「最小の努力で最短合格する」ことにあります。
働きながら弁理士試験に挑む場合、無駄のない勉強計画を立てないと、モチベーションが維持できず途中で挫折してしまいます。

私自身、働きながら独学中心で勉強していましたが、限られた時間を最大限に活かすため、通信講座を併用しました。

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【第6章】弁理士を激務にしないためのスキルとマインド

仮に特許事務所であっても、工夫次第で激務度を下げることは可能です。以下のようなスキルや心構えを持つことが大切です。

  • タイムマネジメント能力:先回りして準備する習慣を身につける
  • 案件の優先順位付け:緊急かつ重要な仕事に集中する
  • 明細書作成のテンプレ化:独自のフォーマットやフレーズを構築することで時短につなげる
  • 技術・法律の理解力を上げる:迷いが減ることで対応速度が上がる
  • メンタルケア・体調管理:長く働き続けるには健康が最優先

こうしたスキルを身につけるためには、まず弁理士業務を具体的にイメージできる参考書を手に取るのがオススメです。

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→ 弁理士試験の全体像をやさしく解説しており、法律に苦手意識がある方にも最適な入門書です。現役弁理士の私も初心者の頃に助けられました。

【まとめ】弁理士は激務?結局、自分の選び方と働き方次第

「弁理士=激務」というイメージは、確かに一部では事実です。特に特許事務所における業務は納期も責任も重く、常に高い精度とスピードが求められます。
しかし一方で、企業の知財部や独立開業など、自分のライフスタイルやキャリア志向に合わせた働き方を選べば、無理なく長く続けることも可能です。

弁理士という資格は、理系出身者にとっては特に大きな強みになります。私自身も、技術者から知財の道へ進み、専門性を活かしながらより広い視野で仕事ができるようになりました。

これから弁理士を目指す方にとって大切なのは、「資格を取ること自体」ではなく、「その先にどんな働き方を実現したいか」を明確にすることです。
激務を避けて働きたいなら、どのルートを選べば自分に合っているのか、試験勉強の段階から逆算して考えていくのが理想です。

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