特許は誰でも取れる?素人でも簡単に取得するためのコツ【現役弁理士が解説】

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私自身は2018年に理系大学院を卒業後、メーカーの開発職に就職しましたが、会社の研修で知的財産に関する講義を受けたことがきっかけで弁理士資格に興味を持ちました。2020年10月から弁理士試験の勉強を始め、約1年後の2022年1月に無事合格。現在はメーカーの知財部で実務を担当しつつ、ブログを通じて知財業界や弁理士試験の情報を発信しています。

「特許」と聞くと、「大企業や研究者しか縁がない」「すごく難しそう」といったイメージを抱く方が多いのではないでしょうか。

確かに、特許を取得するためには、法律や技術的な知識が必要になる場面も多く、専門家である弁理士が関わることが一般的です。しかし、結論からお伝えすると、特許は個人や中小企業の方でも、正しい知識と手順を踏めば、誰でも取得できます。

私も日頃、メーカーの知財部で多くの発明者の方と関わっていますが、革新的なアイデアは、必ずしも専門家から生まれるわけではありません。ふとした日常生活の中でのひらめきや、趣味が高じて生まれた工夫など、あらゆる場所から生まれてきます。

この記事では、「特許は誰でも取れる」という視点から、特許取得の基本的な知識から、個人で取得するための具体的なステップ、そしてよくある疑問まで、初心者の方にも分かりやすく、しかし深く掘り下げて解説していきます。この記事を読めば、あなたの素晴らしいアイデアを、特許という強力な権利で守るための具体的な一歩を踏み出すことができるはずです。


1. 特許は「誰でも取れる」が、その前に知っておきたい基本の「き」

「特許は誰でも取れる」と聞くと、自分のアイデアを思いついた瞬間に権利化できると誤解される方もいますが、それは違います。特許を取得するためには、特許法に定められたいくつかの要件を満たす必要があります。この要件を理解することが、特許取得への第一歩です。

特許取得の3つの基本要件

特許として認められるためには、大きく分けて以下の3つの要件を満たす必要があります。

  1. 新規性(Newness) 「新規性」とは、あなたの発明が、出願する時点までに、すでに世の中に知られていない、または使われていないものであることを意味します。 特許庁の審査官は、あなたの発明がすでに雑誌やインターネット、論文、あるいは先行する特許公報などで公表されていないかを徹底的に調査します。 【具体例】
    • すでに世の中で販売されている製品の技術
    • 学会で発表された論文に記載された技術
    • インターネットのブログやSNSで公開された技術 これらの技術は、新規性がないと判断される可能性が高いです。
  2. 進歩性(Inventive Step) 「進歩性」とは、その分野の専門家が、すでに公知の技術から容易に思いつくことができない発明であることを意味します。 たとえば、既存の技術Aと技術Bを単純に組み合わせただけの発明は、進歩性がないと判断される可能性があります。進歩性が認められるためには、「この組み合わせは、今まで誰も思いつかなかった画期的なアイデアだ!」と審査官を納得させるだけの論理的な説明が必要です。
  3. 産業上の利用可能性(Industrial Applicability) 「産業上の利用可能性」とは、その発明が産業で利用できるものであることを意味します。つまり、単なる芸術作品や自然法則、個人的な趣味の範囲にとどまらない、社会全体で活用できる発明である必要があります。 ただし、趣味が高じて生まれた発明でも、それが工業的に利用できるものであれば、この要件は満たされますのでご安心ください。

2. 素人でもできる!特許出願の具体的なステップ

特許出願と聞くと、専門家しかできないようなイメージがありますが、特許庁のウェブサイトや書籍を参考にすれば、個人で出願することも十分に可能です。ここからは、具体的なステップを順を追って解説します。

ステップ1:先行技術調査(これが一番重要!)

特許出願の前に、必ずやるべき最も重要なステップが、先行技術調査です。この調査によって、あなたの発明が「新規性」や「進歩性」を満たしているか、ある程度自己判断することができます。 特許庁が提供している「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」は、誰でも無料で利用できる強力なツールです。ここでは、日本国内の特許や実用新案、意匠、商標の情報を検索できます。

【調査のコツ】

  • キーワード検索: 発明の核心となるキーワードを複数組み合わせて検索します。
  • 分類検索: 発明の分野を表す国際特許分類(IPC)やFI/Fタームなどの分類コードを使って検索すると、より関連性の高い情報を絞り込めます。

ステップ2:特許出願書類の作成

特許出願書類は、主に「願書」「明細書」「特許請求の範囲」「要約書」「図面」から構成されます。

  • 明細書: 発明の詳細な内容を説明する部分です。発明の目的、構成、効果を明確かつ詳細に記載する必要があります。
  • 特許請求の範囲: 特許権として保護を求める範囲を、法律の言葉で厳密に記載する部分です。ここが特許の権利範囲を決定するため、最も重要かつ専門性が高い部分と言えます。
  • 図面: 発明の理解を助けるために、発明の構成を分かりやすく図示します。

ステップ3:特許庁への出願

書類が完成したら、特許庁へ出願します。インターネット出願ソフトを利用すれば、自宅からでも簡単に出願が可能です。出願が完了すると、あなたの発明が世の中に公開され、審査の順番待ちに入ります。

ステップ4:審査請求と審査対応

出願から3年以内に「審査請求」を行う必要があります。審査請求を行うことで、特許庁の審査官があなたの発明を審査します。審査の結果、「拒絶理由通知」が送られてくることがあります。これは、特許の要件を満たしていないと判断された場合に送られるもので、この通知に対して「意見書」や「補正書」を提出し、審査官と議論を重ねながら特許取得を目指します。


3. 特許は「自分でやる」か「専門家に依頼する」か?

個人で特許出願を行うことは可能ですが、先述の通り、専門的な知識が不可欠です。そこで、特許取得をより確実に、そしてスムーズに進めるために、弁理士という専門家に依頼するという選択肢があります。

自分でやるメリット・デメリット

  • メリット: 費用を安く抑えられる。
  • デメリット:
    • 時間と労力がかかる: 法律や審査実務を理解する必要があり、多大な時間と労力がかかります。
    • 拒絶されるリスクが高い: 特に「特許請求の範囲」の作成は高度な専門知識が必要で、不備があると権利範囲が狭くなったり、最悪の場合は特許が取得できなくなったりします。

弁理士に依頼するメリット・デメリット

  • メリット:
    • 成功率が高い: 弁理士は、特許法や審査基準に精通しているため、権利化の成功率が格段に上がります。
    • 権利範囲を最大限に確保できる: 弁理士は、発明のコアとなる部分を正確に読み取り、将来的なビジネス展開も見据えた上で、最も広い権利範囲を確保できるように書類を作成します。
    • 時間と労力を節約できる: 書類作成や特許庁とのやり取りをすべて任せられるため、本業に集中できます。
  • デメリット: 費用がかかる。

弁理士に依頼するなら?

自分で出願手続きを進めるのはハードルが高いと感じる方や、より確実に特許を取りたい方は、弁理士に相談することをおすすめします。特に、知財部に初めて異動したような方、または法律に苦手意識がある方は、studyingの弁理士講座のような、法律の全体像を分かりやすく学べる学習サービスで、まず知財の基礎知識を身につけるのも良いでしょう。

私も活用したstudyingの弁理士講座は、働きながら合格を目指す方に特におすすめです。実際の合格体験記もご覧いただけます。

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4. 弁理士の専門家から見た特許の「リアル」

私は、弁理士として企業の知財部で勤務していますが、日々多くの発明者や開発者の方と関わる中で、特許に対する様々な疑問や誤解に触れてきました。ここでは、私の経験に基づいた特許の「リアル」についてお伝えします。

よくある質問1:特許を取ったら、そのアイデアは自由に使えるの?

答え:いいえ、必ずしもそうではありません。 特許は「独占排他権」であり、他人がその発明を勝手に使うことを排除できる権利です。しかし、特許権を持っていても、その発明が他人の特許権を侵害している場合は、その発明を実施することはできません。 これは特許制度の非常に重要なポイントで、「自分の特許」と「他人の特許」は全く別の概念です。

よくある質問2:特許はビジネスでどう活かせるの?

答え:特許は「守り」と「攻め」の武器になります。

  • 守り(参入障壁の構築): 競合他社があなたの発明を模倣することを防ぎ、市場での優位性を確保できます。
  • 攻め(ライセンス収入や事業拡大): あなたの特許を他社にライセンス供与することで、使用料(ライセンスフィー)を得ることができます。また、特許を担保に資金調達をしたり、技術力をアピールして事業提携を進めたりすることも可能です。

より詳しい知財部の実務内容については、こちらの記事もおすすめです。


5. 知財業界でのキャリアと転職の可能性

特許の専門家である弁理士や知財部の仕事に興味を持った方もいるかもしれません。ここでは、知財業界でのキャリアパスについて少しだけご紹介します。

1. 弁理士として専門性を高める

弁理士は、特許事務所や企業の知財部で、発明の権利化や知財戦略の立案を専門に行うことができます。特に、AIやバイオなど、特定の技術分野に強みを持つ弁理士は市場価値が高く、引く手あまたです。 弁理士資格を活かした転職を考えているなら、業界に特化した転職エージェントの利用が有効です。

リーガルジョブボードは、弁理士・特許技術者専門の求人情報に強く、あなたのスキルや経験に合った最適なキャリアパスを提案してくれます。

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2. 弁理士資格を活かして年収アップを目指す

弁理士資格は、専門性の高さを証明する強力な武器です。特に企業の知財部への転職では、資格手当やキャリアアップによる年収増が期待できます。私も資格取得後、より専門的な業務に携わることで、仕事の幅が大きく広がりました。

転職活動の具体的なポイントについては、別記事でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。


6. まとめ:特許は誰もが持つべき「現代の武器」

この記事では、「特許は誰でも取れるのか?」という疑問にお答えし、そのための具体的なステップや、知財の専門家である弁理士の視点から特許のリアルをお伝えしました。

  • 特許は誰でも取れる: 専門知識がなくても、正しい手順と要件を理解すれば、個人でも特許取得は可能です。
  • 重要なのは先行技術調査: 出願前に徹底的に調査することで、無駄な労力と費用を抑えられます。
  • 弁理士という選択肢: 自分でやるのが不安なら、専門家に頼ることで、より確実に、そして広い権利範囲を確保できます。

もし、あなたが素晴らしいアイデアを持っているなら、それを漠然としたままにせず、ぜひ特許という形で守ることを検討してください。特許は、あなたのアイデアを守り、ビジネスを加速させるための強力な武器となります。

最後に、特許や知財の学習を始めたい方におすすめの書籍を2冊ご紹介します。

  • 『弁理士スタートアップテキスト』 法律知識がない方でも、特許の基本的な考え方や弁理士試験の全体像をスムーズに理解できる入門書です。
  • 『知財部という仕事』 企業の知財部がどのような仕事をしているのか、特許がビジネスでどのように活用されているのかを、実務的な視点から解説しています。

あなたの素晴らしいアイデアが、特許によって守られ、世の中で花開くことを心から願っています。

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