QRコードはなぜ特許を取らなかったのか?技術の自由と戦略の選択

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こんにちは、当ブログにお越しいただきありがとうございます。運営者のcoffeeです。

私はメーカーの開発職から知財部に異動し、2022年に弁理士試験に合格しました。このブログでは、資格試験に関する体験談や、知財の実務、業界の裏側などをわかりやすく発信しています。

今回は、「QRコードはなぜ特許を取らなかったのか?」という疑問を深掘りします。

なぜQRコードの話題が今注目されているのか?

QRコードは今やコンビニのレジ、スマホ決済、イベントの入場管理など、生活のあらゆるシーンで目にします。そんなQRコードが日本で開発されたことをご存知でしょうか?

開発元は、自動車部品メーカー「デンソーウェーブ」。1994年に誕生したこの技術は、当初は工場の部品管理用途として使われていました。

ここで一つの疑問が生まれます。

「これだけ世の中に普及したのに、なぜ特許を取らなかったの?」

実はこのQRコード、「特許を取らなかった」のではなく、「特許を取得した上で無償公開した」という戦略を取ったのです。

特許を取らなかったわけではない?QRコードの戦略とは

正確には、QRコードに関する基本技術について特許は出願済みであり、実際に登録されています。

しかし、その後、誰でも無料で使えるように無償公開されました。つまり「権利行使をしない」方針を取ったのです。

これは、企業にとってはかなり思い切った決断です。なぜなら、特許は本来、他社の参入を防ぎ、自社の独占利益を確保するための道具だからです。

ではなぜ、あえてそれをしなかったのでしょうか?

無償公開に込められた戦略的意図

デンソーウェーブの狙いは明快でした。

  • QRコードを社会インフラとして広く普及させたい
  • 業界標準(デファクトスタンダード)を取りにいく
  • 自社の技術力と信頼性を広くアピールする

このような目的のため、特許の使用料を取るのではなく、「誰でも使っていい」という寛容さ=先進性を示したのです。

結果としてQRコードは瞬く間に世界中に広まり、デンソーウェーブの技術力と名前は業界内外で大きな評価を受けました。

「特許を取らなかった」のではなく、「特許を取ってから無償公開した」

ここで誤解してはいけないのは、「特許を出さなかった」わけではないという点です。

特許出願をして権利化したうえで、他社に無料で使わせるということは、企業が技術の主導権を握りつつ、あえて市場を開放するという、知財戦略の一つです。

このような「オープン戦略」は、以下のようなメリットをもたらします。

  • 標準化の際に自社技術が採用されやすくなる
  • 他社の技術依存を防ぎつつ、自社の知見を広められる
  • 技術的な信用が市場に蓄積される

特許制度とオープン戦略のジレンマ

〜守るか、広げるか。技術者と企業が迫られる選択〜

QRコードのように、「特許を取ったうえで無償公開する」という戦略は、知財の世界では極めて珍しいものではありますが、決して例外的というわけではありません。

この背景には、特許制度そのものが持つ“二面性”があります。

特許の本質:独占か、普及か

まず前提として、特許とは「発明を公開する代わりに、一定期間その発明を独占的に実施できる権利」です。

つまり、

  • 取れば自社の利益になる(独占)
  • 公開すれば他社にも真似される可能性がある(リスク)

という、相反する要素が常に存在します。

QRコードの場合、開発元のデンソーウェーブは、あえて後者、つまり「公開して普及させる」ことに重きを置きました。

この判断は、実は技術者や知財担当者、そして弁理士にとっては非常に難しい選択肢でもあります。

なぜなら、多くの企業が「とにかく権利を取り、囲い込む」ことで競争優位を築こうとするからです。

なぜ囲い込みに走る企業が多いのか?

例えば新しい製品の技術が市場に出たとき、他社に簡単に模倣されてしまえば、開発投資が回収できなくなります

このため、以下のような考え方が一般的です。

  • 「まずは特許で囲っておく」
  • 「ライセンス収入で稼げるかもしれない」
  • 「競合の参入を遅らせられる」

こうした「守るための特許」が一般的な中で、QRコードのように**「開くための特許」**を選んだのは、まさに逆張りの発想だったのです。

なぜオープン戦略が成功したのか?

QRコードの成功は偶然ではありません。以下のような点が、成功を後押ししました。

  • 技術が極めてシンプルかつ応用範囲が広かった
  • 利用者側にとって「導入のコストがゼロ」というメリットが大きかった
  • 開発元が信頼される企業(トヨタグループ)であった

これらの要素が合わさり、QRコードはインフラのような存在にまで成長しました。

「どの企業にも使ってもらえる」というオープン戦略は、結果的にデンソーウェーブのブランド価値を大きく高めることにもつながったのです。

特許か?オープンか?弁理士が問われる判断力

私が弁理士を目指そうと思ったきっかけも、こうした特許の奥深さと社会への影響力の大きさに気づいたことでした。

企業が「この技術はどう扱うべきか?」と悩むとき、専門家である弁理士が判断を支援することができます。

守るべきか、開放すべきか――。
その判断は、単なる法的知識だけでなく、ビジネス戦略と技術的な視点の両方が求められます。

こうした知財の世界に一歩踏み込んでみたいと思った方に、次のパートでは知識ゼロから弁理士を目指せるオンライン講座「スタディング」をご紹介します。

資格取得を通じて、QRコードのような「社会にインパクトを与える技術戦略」にも関われるようになるかもしれません。

弁理士を目指すならスタディング弁理士講座という選択肢

〜知財のプロフェッショナルとして、次のQRコードを支える側へ〜

QRコードのように、社会に大きな影響を与える技術と、それをどう活かすかの判断には、知財の専門家である弁理士の関与が欠かせません。

私自身、もともとは理系出身のメーカー技術者でしたが、特許に関する社内研修をきっかけに、「発明を守る・広めるという知財の世界に関わりたい」という思いが芽生えました。

そして選んだのが、弁理士という国家資格でした。

とはいえ、弁理士試験は簡単なものではありません。合格率は例年8〜9%前後と非常に低く、法律科目を中心に広範な学習が求められます。

忙しい社会人でも合格を目指せた理由

私が働きながら短期合格できた最大の理由は、学習の効率性を徹底的に追求したことです。

そのとき活用したのが、「スタディング弁理士講座」でした。

スタディングの特長

  • スマホ1台でスキマ時間に学習できる
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特に社会人や主婦、学生のような「フルタイムの学習が難しい層」にとって、スタディングは極めて心強い味方になります。

実際に私はこの講座を使って、働きながら1年ちょっとで合格することができました。

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【スタディング】受講者14万人突破!スマホで学べる人気のオンライン資格講座申込 (弁理士)

また自身の体験についてもこちらでご紹介しています。

知財と特許に関わる仕事がしたい人のキャリアパスとは?

QRコードのような発明を世に送り出す裏側には、技術者だけでなく知財のプロフェッショナルたちの存在があります。

「技術が好き」「知的な仕事に就きたい」「論理的に考えるのが得意」

そんな方にとって、知財業界は非常に魅力的なフィールドです。では実際に、どのような職種・キャリアパスがあるのでしょうか?

① 企業の知財部

理系出身者が目指すキャリアとして、特に人気があるのがメーカーの知財部です。

ここでは発明届の審査、特許出願、権利化戦略の立案、他社特許の調査など、「攻め」と「守り」の両面で知財を扱う業務が求められます。

私も実際に開発職から知財部へ異動し、日々発明者と会話しながら出願戦略を立てる面白さを実感しています。

② 特許事務所

一方で、より専門性を極めたいという方には、特許事務所での勤務という選択肢もあります。

弁理士の資格があれば独立開業も可能で、将来的にはフリーランス的な働き方も夢ではありません。

所内では、出願書類(明細書)の作成、拒絶対応、クライアント企業とのやり取りなどが主な業務になります。

「文章を書くのが好き」「理屈で物事を詰めていくのが得意」な方にはぴったりです。

③ 未経験からのチャレンジも可能

「でも自分には経験がないし、今から目指せるのか不安…」という方もいるでしょう。

実は、知財業界は未経験歓迎の求人も少なくありません

特に技術バックグラウンドがあれば、企業知財部や特許事務所でポテンシャル採用されるケースもあります。弁理士試験の勉強をしている、または合格済みであれば、なおさらチャンスは広がります。

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知財の世界は、技術×法務×ビジネスのすべてが関わる、極めてダイナミックなフィールドです。

「特許で社会に貢献したい」
「QRコードのような技術の価値を正しく伝えたい」
そう思った今が、きっとキャリアチェンジのタイミングです。

なぜQRコードは特許で儲けなかったのか?本当の狙いは何だったのか?

QRコードが特許を「取らなかった」と思われている理由のひとつに、「ライセンス料を取らなかった」という事実があります。

実際には、QRコードを開発した株式会社デンソーウェーブは、1997年に「コード読み取り装置」など複数の特許を出願・取得しています。
つまり、QRコードに関連する技術はきちんと特許化されていたのです。

しかし、「誰でも無料で使ってよい」と明言し、ライセンス料を一切取らなかった。ここにこそ、真の戦略がありました。

狙いは普及。それが最大の武器だった

QRコードの本当の狙いは「普及」でした。

バーコードは縦方向のみの情報しか読み取れないのに対し、QRコードは縦横2次元で大量の情報を読み込めるという大きな利点がありました。
しかし、いくら技術的に優れていても、使う人がいなければ意味がない
だからこそ、「ライセンスフリー」とすることで業界標準になることを最優先したのです。

その結果、QRコードはスマートフォンの普及とともに爆発的に広がり、世界中で当たり前の存在になりました。

これこそが、知財の「使い方」の勝利です。

特許=儲ける道具ではない?

特許は単に「他人に使わせない」ための道具ではありません。

むしろ、「どう使うか」「誰に使わせるか」「どこで囲い込むか」を戦略的に設計することで、
ビジネスに与える影響は何倍にも膨らみます。

QRコードの例は、「特許をあえて無償開放する」という一見矛盾するような選択が、
実は長期的な市場支配の土台を作る、非常に洗練された戦略であったことを示しています。

弁理士という資格がもたらす知財戦略への理解と価値

QRコードの事例から分かるように、特許は「取る」こと自体よりも、「どう活用するか」が圧倒的に重要です。

では、こうした知財戦略を立てたり、企業の方向性に知財面から関与するには、どんなスキルが必要でしょうか?

ここで登場するのが、「弁理士」という国家資格です。

弁理士=特許出願だけじゃない

一般には、「弁理士=特許や商標の代理人」というイメージが強いかもしれません。

しかし、実務の現場ではそれに留まらず、

  • どの技術を権利化すべきか?
  • 競合の特許網はどうなっているか?
  • オープンにすべき技術と囲い込むべき技術の線引きはどこか?

といった、知財の戦略設計に深く関与する場面も増えています。

QRコードのような「オープン戦略」も、知財に詳しい人間が企業の中にいたからこそ、実行できた戦略なのです。

知財を“事後”ではなく“事前”に動かす

従来、特許や商標は「できたものに対して申請する」受け身の仕事でした。

しかし、現在はむしろ事業開発の段階から知財を組み込む「IPランドスケープ」のような手法が注目されており、弁理士にはより戦略的な視座が求められるようになっています。

つまり、弁理士とは単なる書類屋ではなく、

  • 技術に強く、
  • 法律に精通し、
  • ビジネスに貢献できる

希少な“ハイブリッド人材”だということです。

「技術×法律×戦略」の力を身につける

弁理士という資格は、技術系出身者にとって極めて親和性の高い国家資格です。

理系バックグラウンドを持っているなら、さらに法律知識と文系的なロジックを取り入れることで、
自分の市場価値を一気に高めることができます。

私も理系大学院からメーカーに入り、そこから弁理士試験に挑戦しましたが、
知財の考え方を身につけてからは、「物事の構造」や「情報の流通」についての理解が根本的に変わりました。

まとめ:QRコードの特許に学ぶ、知財と弁理士の本当の価値とは

QRコードが特許を“取らなかった”のではなく、意図的に無償公開し、戦略的に利用されたことをご紹介しました。
この事例が示すのは、「知財とは単なる防衛手段ではなく、企業の未来を切り拓く力である」ということです。

そしてその知財戦略を担えるのが、弁理士という資格です。

私自身、技術職から知財の世界に入り、弁理士としての視点を得たことで、技術・法律・ビジネスをつなぐ醍醐味を日々感じています。
特許を「取る・取らない」の二元論ではなく、「活用する・仕掛ける」というダイナミックな視野を持つことで、
企業も、個人のキャリアも、大きく変えることができます。

この記事を読んで、

  • 「知財って面白いかも」
  • 「弁理士って戦略的な仕事なんだ」
  • 「自分にも挑戦できるかもしれない」

そんなふうに思った方がいたら、ぜひ一歩踏み出してみてください。

知財の世界は、意外とオープンで、努力がしっかり報われる世界です。

そして、もしかしたら数年後には、あなたが次の「QRコード戦略」を仕掛ける立場になっているかもしれません。

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