意外と教えてもらえない特許調査のやり方について[基本から企業内知財部弁理士が徹底解説]

知財業務全般

企業の知財部や弁理士事務所はもちろん、開発部署も使う機会のある特許調査。

でも、なかなか丁寧に教えてくれる人はいないですよね。とりあえずやってみれば慣れるとかそんな説明されても困りますよね。。。。

本日は基礎から企業内知財部の弁理士が徹底解説します。

特許調査とは?

特許調査とは、一言で言うと特許情報を収集して内容を確認することです。

広い意味では以下の情報を収集します。

項目内容
特許公報特許権が発生した後に公開される公報
公開特許公報出願公開が行われた後に発行される公報
審査経過情報特許庁からの拒絶理由通知や出願人のそれに対する応答内容など。
登録情報特許権利者の特許料納付情報や、権利の消滅情報など。
パテントファミリー情報1つの発明に関連した複数の発明群(分割、優先権、他国の出願)情報など。

メインとなるのは上の2段の特許関連の公報がメインの調査元の情報になります。

侵害発見を行うときは、審査経過情報や登録情報も見るよ。

特許情報のメリット

技術情報には、例えば他にも展示会情報、論文、ジャーナル、専門情報などもありますが、技術調査に特許情報を使うことには以下のようなメリットがあります。

  • 各国で審査された信頼できる情報である。
  • 特許情報の入手・収集が容易
  • 国際的に統一された技術分類分けがされている
  • 技術分野に偏りがない
  • 書誌的事項の書式が決まっている
  • 公報に記載されている発明の内容が詳細に記載されている。

信頼できる情報であり、かつ検索性に優れているので特許情報は従来技術の調査によく使われているってことだね。

特許調査の種類と目的

特許調査の種類には、大きく分けて①動向調査、②先行技術調査、③他社権利調査、④無効資料調査の4つがあります。

①動向調査とは

動向調査とは研究や開発の開始段階において、他者の技術レベルを把握したり、発明創出への手がかりを取得する調査の事を言う。

[目的]

技術文献として公開特許公報をベースに自社開発のリファレンスとする。

[内容] 

  • 競合他社の技術動向を知る
  • 新たな技術開発テーマを見つける
  • 研究の方向性を定めるための情報を発見する

②先行技術調査とは

先行技術調査とは、発明を着想した段階で行う、出願する発明が他人によって出願されていないかを調べるための調査です。

[目的]

着想したアイデアが既に出願されていないかを把握して、無駄な出願を未然に防止する。

[内容] 

  • アイデアに最も近い出願をピックアップ
  • 発見した他社出願に合わせて、発明内容を修正or断念する

先行技術調査の結果に合わせて、発明を修正したり、深堀したりするところが企業知財部の腕の見せ所だね

③他社権利調査とは

他社権利調査とは、自社の製品仕様が他社特許に含まれるか否かを把握する調査です。

[目的]

他社の特許に対する侵害を未然に防止する。

[内容] 

  • 製品発売後に侵害が発覚すると、設計変更や他社のライセンス契約により大きな労力、時間、費用を要してしまう。
  • 特許法に基づいて、自社の製品が他社の特許の請求の範囲に含まれるかどうかを検討する。
  • 該当特許があった場合には、後述の無効資料調査を行う。

同じライセンス契約でも、販売前と販売後では金額に大きく差が出るから早く見つけるに越したことはないよ

④無効資料調査とは

無効資料調査とは、他者権利調査で発見した自社製品を販売する上で障害になりうる他社の特許を無効化できる証拠資料を調査することを言います。

[目的]

無効資料を発見することで、安心して自社製品を販売することができる。

[内容] 

  • 無効資料が見つかれば、他社が仮に権利行使をしてきても反論することができる。
  • 無効資料が見つからなければ、設計変更もしくは早期のライセンス契約を他社と交渉することになる。

各特許調査とフェーズについて

上で説明したそれぞれの特許調査のフェーズは下記のようになります。

動向調査は、研究、開発の方向性を定めるものなので、研究開発の初期段階で行います。

先行技術調査は、特許の出願を製品の生産までに行わないといけないので、上記のような期間になっています。

他社権利調査無効資料調査はある程度開発が形になってから行うものなので、開発の後半段階から行われます

動向調査、先行技術調査は従来技術を参考に特許や開発の方向性を変える前向きな調査、逆に他社権利調査、無効資料調査は他社との権利抵触を避けるための少し後ろ向きな調査ってイメージかな。

特許調査の具体的な方法(keyword検索)

①調査観点の設定

まずは調査観点を設定しましょう。

つまり調査対象を抜けなく簡潔に構成として示します。

例えばルンバの発明を調査対象とします。

まずルンバを発明の構成として示します。

『センサにより部屋の環境を学習して記憶し、最適なパターンで清掃する自立走行可能な掃除機。』と定義付けます。(実際にこのような特許は無いのですが、仮にこう定義付けます。)

②検索マトリクスの設定

マトリクスは以下のように図で表すとイメージしやすいです。

赤色の部分が本発明の調査領域となる部分です。

③検索式の作成

上記のマトリクスの通り検索式を作成すると

『掃除機 AND 自立走行 AND 学習 AND 周囲環境』となります。

しかしながら自立走行の代わりに自動走行などの表現を使った出願があると漏れてしまいます。

なので類義語を設定してもれなく検索する必要があります。

類義語の設定

例えば掃除機の類義語としてクリーナー、掃除用ロボットなどが挙げられます。

できるだけ多くをあげて漏れの無い検索式を作り上げましょう。類義語の設定の観点としては、以下があります。

  • 漢字、ひらがな、カタカナで置き換える
  • 上位概念の言葉を考える
  • 検索して似たような言葉を探す。
  • 英和、和英辞典を使う

類義語を設定したらあとは検索式を入れて検索してみましょう。

④スクリーニング

検索式が作成できたら実際に検索を行います。

その検索でヒットした文献を確認するのがスクリーニングになります。

基本は要約をサラッと見て関連がありそうだと思ったら、深く確認します。

検索で絞り込む件数は大体100件から300件くらいが目安になります。

検索してみて、見当違いの場合は再度構成と検索式を見直してみるのも手です。

特許調査に関するよくある質問

実際にどこで検索すれば良いの?

企業の方で特許検索のプラットフォームをお持ちでしたらそちらを、なければJ-Plat PAT(特許情報プラットフォーム)を使いましょう。(→「特許情報プラットフォームホームページ」へ)

無料で使えますし、外国公報の閲覧、拒絶理由、意見書などの審査書類を閲覧することもできます。

J-Plat PATでできる検索は以下です。

①特許・実用新案番号照会

出願公開番号、出願公告番号、国内公表番号などで検索が可能です。

②特許・実用新案テキスト検索

発明の名称、要約、請求の範囲、代理人、審査官などでキーワード検索が可能です。

入力したキーワードを論理式にしてandやorでさらに絞り込み検索をすることもできます。

③特許・実用新案分類検索

FI、Fターム、IPC(国際特許分類)の検索式による検索ができます。

ちなみにIPCは世界共通の分類で例えばD01F 1/04などがあり、

D01F・・・人造のフィラメント,より糸,繊維,剛毛またはリボンの製造において化
学的な特徴をもつもの;炭素フィラメントの製造に特に適合した装置

1/04・・・顔料

を表します。

FI(File Index)はIPCをさらに分類した日本独自の分類です。

Fターム(File Forming Term)は、目的、用途、構造、材料、製法など様々な観点から検索するために、テーマコード+観点+数字から成り立っています。

例えば3B030 BA09があり、3B030は和服のテーマコードで、BAは「和服の用途、形態」、09は「和洋折衷着」を表します。

④外国公報DB(データベース)

米国、欧州、イギリス、ドイツ、フランス、スイス、カナダの公開公報などを閲覧できます。

自分で検索する方法以外は無いの?

調査機関に依頼する

時間が無い場合やお金に余裕がある場合は専門の調査機関に依頼すると良いでしょう。

特許庁ホームページの関連ホームページリンクの特許情報提供事業者リスト集で調査機関を検索できます。

特許事務所等に依頼しても良いかと思います。

ちょうどこの前、調査会社に動向調査を依頼したけど、すごい検索のノウハウを持っていてびっくりしたよ

最後に

本日は特許調査の概要や目的から、実際の調査のやり方まで、説明させていただきました。

実際に上記のような方法で検索をして見てください。その中で困りごとなどがあればぜひコメントいただければ解答したいと思います。少しでもお役に立てればと思います。

私が弁理士試験にかけたコストや時間及びおすすめの講座についてはこちらにまとめていますのでご参照ください。

知財関係の転職をご検討中の方はこちらをご参照ください。

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