はじめまして。サイト運営者のcoffeeと申します。 このブログにご訪問いただき、ありがとうございます。
この記事を読んでいるあなたは、開発現場で「知財部はいつも特許のノルマばかり押し付けてくるが、現場の苦労を理解していない」と不満を感じている方かもしれません。あるいは、ネットで「知財部 無能」という過激な検索ワードを目にし、自身の職種の将来性に不安を感じている知財部員の方かもしれません。
率直に申し上げます。現役の知財部員であり、弁理士である私も、この言葉を耳にするたびに複雑な思いを抱きます。しかし、ビジネスの現場において「知財部が機能していない」と感じさせてしまう背景には、明確な構造的要因とコミュニケーションの乖離が存在します。
この記事では、知財部に対するネガティブな評価がなぜ生まれるのか、その実態を徹底的に分析し、本来あるべき「戦略的知財部門」の姿を提示します。
1. 開発職から知財部へ:技術と法律の両面を経験した視点
まず、私が「知財のリアル」を語る背景についてお話しします。
私は2018年に理系大学院を卒業後、国内大手メーカーの開発職としてキャリアをスタートさせました。当時は、研究開発に没頭する一方で、知財業務を「開発のスピードを鈍らせる事務作業」のように感じていた時期もありました。
転機となったのは、社内の特許研修です。講師を務めた弁理士の言葉──「特許は単なる記録ではない。競合他社の動きを封じ、自社の技術を独占するための『経営のカード』である」──という視点に衝撃を受けました。
- 2020年: 働きながら弁理士試験の学習を開始。
- 2021年: 開発現場での知見を評価され、念願の知財部への異動を実現。
- 2022年: 弁理士試験に合格。
**「技術を作る苦労」と「権利を守るロジック」**の両方を知る立場になったからこそ、知財部が「無能」と揶揄される根本的な原因が見えてきたのです。
2. 知財部の仕事が「理解されにくい」3つの本質的な理由
なぜ知財部は、他部署から「何をやっているのか分からない」と思われがちなのでしょうか。その仕事内容の特殊性に原因があります。
① 成果の「可視化」に時間がかかる
営業であれば売上、開発であればプロトタイプの完成といった即時的な成果があります。しかし、知財部が行う「特許出願」や「他社特許の侵害調査」の効果が実証されるのは、製品が市場に出て競合とぶつかる数年、時には10年以上先の話です。 日常的な「リスク回避(他社に訴えられないための活動)」は、成功しても「何も起きない」という結果に終わるため、その貢献度が社内で認識されにくいのです。
② 評価指標(KPI)がビジネスの実態と乖離している
多くの企業で知財部の評価は「出願件数」や「権利化率」といった数字に依存します。 もし知財部員が評価を上げるために、事業に寄与しない「質の低い特許」の件数稼ぎに走れば、開発者は無意味な書類作成に追われることになります。この「数ありきのノルマ」が、現場からの「知財部は仕事を作っているだけだ」という不信感を生みます。
③ 専門用語による「コミュニケーションの断絶」
特許法という厳格な法律の世界に浸っていると、知らず知らずのうちに難解な専門用語(新規性、進歩性、17条の2、拒絶査定など)を多用してしまいます。 これらをそのまま他部署にぶつけることは、プロフェッショナルとしての「翻訳」を放棄しているのと同じです。これが「知財部は理屈っぽくて役に立たない」と言われる一因です。
3. 「無能な知財部」と「戦略的な知財部」の決定的な違い
現場から「無能」と見なされるのは、単に「手続き」として知財を扱っている場合です。
- 無能と揶揄される知財部:
- 法律の条文を振りかざし、できない理由(リスク)ばかりを並べる。
- 事業戦略を理解せず、ただ来た発明を機械的に出願する。
- 専門用語に終始し、開発者の意図を汲み取ろうとしない。
- 戦略的で信頼される知財部:
- ビジネスモデルを理解し、競合の弱点を突くような「攻めの権利」を提案する。
- リスクがある場合は、必ず「どうすれば回避できるか」という代替案を出す。
- 技術の内容を深く理解し、開発者と一緒に発明をブラッシュアップする。
専門性を高めることが、不信感を打破する第一歩
知財部員が「無能」というレッテルを剥がすために最も必要なのは、他部署を納得させ、動かすことができる「圧倒的な専門性」です。
法律知識があるのは大前提。その上で、自社の技術トレンドや競合のポートフォリオを誰よりも熟知していなければなりません。その専門性を客観的に証明する最強の武器が**「弁理士資格」**です。
私自身、弁理士試験に合格したことで、社内での発言力は劇的に変わりました。単なる「相談相手」から、経営や開発の「戦略パートナー」へとステージが変わったのです。許に関する知識も深めておく必要があります。
4. 知財部員が「現場の信頼」を勝ち取るための3つの具体策
「何を言っているかわからない」という評価を覆すには、知財部側からの能動的なアプローチが不可欠です。
① 専門用語を「ビジネス言語」に翻訳する
開発者や経営陣が知りたいのは、法律の条文ではなく「事業へのインパクト」です。
- NG: 「本件は進歩性の欠如により、36条1項の拒絶理由を受ける可能性が高いです」
- OK: 「この技術は他社が既に行っている手法と似ているため、このままでは権利化が難しいです。ですが、〇〇の数値を特定すれば、競合が真似できない独自の強みとして守れる可能性があります」 このように、相手のメリットに変換して伝える「翻訳能力」**こそが、知財部員の真のスキルです。
② 開発の「川上」に入り込み、リスクを先回りして潰す
製品が完成してから「特許を確認してください」と言われる状態では、手遅れなことが多いです。 知財部員自らが開発の定例会議に参加し、企画段階から**「他社特許の地雷」を見つけ、回避策を提案する。あるいは、何気ないアイデアを「強い特許」へと育てる提案を行う。この伴走型スタイル**を確立すれば、「知財部がいないとプロジェクトが進まない」と言われるようになります。
③ 「NO」ではなく「ALTERNATIVE(代替案)」を出す
他社特許に抵触する可能性があるとき、「これは侵害なのでダメです」と止めるのは簡単です。しかし、それではただのブレーキ役です。 「この構成はリスクがありますが、機能を少し変更して、こちらのルートで回避すれば、逆に新しい特許として権利化できるチャンスがあります」と、代替案をセットで提示するのが、デキる知財部員の振る舞いです。
5. 弁理士資格という「圧倒的な専門性」の証明
知財部員として社内外で発言力を高めるために、最も有効な手段はやはり弁理士資格の取得です。
なぜ弁理士資格が必要なのか
- 信頼のブースト: 「弁理士」という肩書きがあるだけで、他部署の担当者は「この人の言うことには専門的な根拠がある」と認識し、相談の質が劇的に変わります。
- 法的スキルの裏付け: 難関試験を突破した知識は、他社との交渉や契約書のリーディングにおいて、絶対的な自信に繋がります。
- キャリアの柔軟性: 万が一、社内で正当な評価が得られない場合でも、資格があれば好条件での転職が容易になります。
働きながら合格を掴むための「スタディング」活用術
私も開発職から知財部へ異動し、働きながら2年で合格しましたが、その最大の武器がオンライン講座の[スタディング(STUDYing)でした。
効率的なアウトプット: AIを活用した問題演習機能により、自分の弱点をピンポイントで潰せるため、最小限の学習時間で合格ラインまで到達可能です。
スマホ完結の学習体験: 法律の分厚い基本書を持ち歩く必要はありません。通勤中の15分、昼休みの10分を積み重ねるだけで、難関試験に必要な知識をインストールできます。
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【スタディング】受講者14万人突破!スマホで学べる人気のオンライン資格講座申込 (弁理士)弁理士試験に合格した後のキャリアについては、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
6. 知財部員のキャリア戦略:社内昇進か、外資・事務所への転職か
「今の環境では知財を戦略的に活かせない」と感じるなら、外の世界へ目を向けるのも一つの正解です。知財人材の市場価値は、現在非常に高まっています。
知財専門の転職エージェントを使い倒す
一般的な転職サイトでは、知財部の「実態」は見えてきません。
- 企業の知財に対する投資意欲は高いか?
- 知財部が経営層に近いポジションにあるか?
- 弁理士手当や評価制度は整っているか?
これらの情報を得るには、[リーガルジョブボード]のような特化型エージェントの活用が必須です。専門のコンサルタントが、あなたの経験やスキルに見合った「攻めの知財部」を紹介してくれます。財人材の需要は高まっています。知財の専門知識と、ビジネス感覚を兼ね備えた人材は、まさに引く手あまたです。
👉今よりも働きやすい事務所に転職できる。 弁理士・特許技術者求人サイト【リーガルジョブボード】
7. 知財部を志す・今の状況を変えたいあなたへの必読書
知識のアップデートは欠かせません。私が特におすすめする2冊です。
『知財部という仕事』 実務の現場で直面する「他部署との連携」や「戦略の立て方」が具体的に描かれています。若手知財部員だけでなく、知財部と関わる開発者にも読んでほしい一冊です。
『弁理士スタートアップテキスト』 試験勉強の導入としてだけでなく、法律の全体像を「概念」から理解するのに最適です。
まとめ:「無能」と言わせない、これからの知財部員像
「知財部 無能」という揶揄は、現場が知財部に「もっと自分たちの技術を理解し、ビジネスの力になってほしい」という期待を込めた、ある種のSOSでもあります。
専門性に閉じこもるのではなく、現場の技術と言葉を理解し、それを法律の力で「企業の利益」に変える。そんな「ビジネスがわかる知財部員」になれば、無能という言葉は自然と消えていくはずです。
知財は、企業の未来を創るエキサイティングな仕事です。もし今の環境に満足していないなら、一歩踏み出して専門性を磨き、自分自身の市場価値を高めていきましょう。その努力は、必ずあなたのキャリアを明るいものに変えてくれます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。





