「弁理士試験は難しいって聞くけど、実際どのくらい?」「自分に合っているかどうか知りたい」と感じたことはありませんか?
確かに弁理士試験は難関国家資格のひとつに数えられますが、正しい知識と戦略を持てば、誰でも合格できる可能性があります。
本記事では、令和3年度に実際に弁理士試験に合格した筆者が、「なぜ弁理士試験は難しいのか?」というテーマを軸に、以下の点を徹底的に解説します。
第1章:弁理士試験の合格率はなぜここまで低いのか?
平均合格率は約6〜9%。10人に1人も受からない現実
弁理士試験の合格率は、例年6〜9%前後で推移しています。つまり、10人中9人以上が不合格になる計算です。以下は近年の合格率の推移です。
年度 | 受験者数 | 最終合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
令和5年 | 約3,600人 | 約250人 | 約6.9% |
令和4年 | 約3,800人 | 約290人 | 約7.6% |
令和3年 | 約4,000人 | 約275人 | 約6.9% |
これほど合格率が低い国家試験は珍しく、たとえば公認会計士試験や行政書士試験などの他資格と比較しても、かなりの難関であることが分かります。
試験制度が3段階で構成されている
弁理士試験は、以下の3段階で構成されています。
- 短答式試験(マークシート方式)
- 論文式試験(記述式。必須と選択がある)
- 口述試験(面接形式)
1次試験である短答に受かっても、論文で落ちる人が多数。そして最後の口述試験も独特の緊張感があり、油断できません。
つまり「短答が終わっても道半ば」「論文でつまずく人が多い」「口述でも落ちる」という三重苦が、合格率の低さに直結しています。
再受験者が多数。合格までに平均3〜5年かかる?
さらに難しさを増しているのが、「合格までに複数年かかる人が多い」という点です。筆者の同期でも、3〜5回目でようやく合格したという方は珍しくありません。
受験生の中には、毎年のように一部科目だけ受かっては次の年に持ち越し、という「長期戦」に突入してしまうケースも多く、精神的にも金銭的にも消耗しやすいのです。
「受験者層」がハイレベルであることも要因
さらに注目すべきは、そもそもの受験者のレベルが高いという事実です。弁理士試験の受験者は、理系大学出身者、企業の知財部員、特許事務所勤務者など、すでに知的財産の実務に携わっている社会人が多いです。
そのため、完全な初学者が参入するには、他の受験生との「地力の差」を埋める必要があるというハンデが存在します。
合格率の低さは「難しさ」だけが原因ではない
ただし、誤解してはいけないのは、「合格率が低い=誰にも無理」ではないということです。
実際、筆者自身は文系出身・技術職経験なし・独学スタートでも、2年弱で合格しています。その秘訣は、正しい戦略と教材選び、そして継続力です。
弁理士試験について詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
第2章:論文試験の壁が高い理由──法的思考力と答案構成力が求められる
弁理士試験において、最も多くの受験生が不合格となるのが論文式試験です。
短答に合格した受験者でも、論文で再び落とされる現実は、「難しさ」の本質をよく表しています。
ここでは、論文試験がなぜ難関とされるのか、その理由を3つに分けて解説します。
理由①:単なる知識ではなく「論理展開」が問われる
短答式試験が主に知識問題(○×や選択肢)であるのに対し、論文式試験は知識を活用して論理的に説明する力が求められます。
例えば、ある発明について特許性の有無を問われた場合、単に「進歩性がない」と書くだけでは不十分で、以下のような構成が必要になります:
- 問題文から事実を正確に把握
- 条文の趣旨と要件を適用して分析
- 論理的に一貫性のある文章で結論を導く
この「論理の組み立て」が甘いと、いくら知識があっても点数は伸びません。
理由②:特許法・意匠法・商標法それぞれに「論文の型」がある
弁理士試験の論文必須科目では、特許法・実用新案法、意匠法、商標法の3法が出題されます。これらにはそれぞれ独自の論文構成の型(テンプレート)が存在します。
例:特許法の論文構成の基本(進歩性問題)
- 対象発明の認定
- 引用発明との比較
- 相違点の認定
- 当業者の容易想到性
- 結論:進歩性の有無
このような構成を知らずに、自分なりの文章で書いてしまうと、点が入らない構造になってしまうのです。
理由③:「青本」や審査基準の理解も不可欠
弁理士試験の論文では、条文の文言だけでなく、その趣旨・目的や運用実務の理解も重要です。
多くの受験生が勉強で苦戦するのが、いわゆる「青本」(特許庁発行の工業所有権法逐条解説)です。この青本の内容を使って、条文の背景にある政策的な意図まで踏み込んだ論述が求められます。
たとえば、単に「特許法29条2項により進歩性が否定される」と書くだけでは不十分で、なぜそのような制度になっているのか、どのように審査で判断されるのかといった視点も必要です。
合格者は「答案の型」を徹底的に身につけている
論文式試験で合格する受験生の共通点は、「思考プロセスの型」「答案構成の型」「書き方の型」を、徹底的に叩き込んでいることです。
これはスポーツでいう「フォーム作り」に近く、知識を得るだけではなく、何度も答案を書いて添削を受け、修正するという訓練が必要になります。
そのため、市販の教材だけでは限界があり、多くの受験生が通信講座や論文添削サービスを活用しています。
筆者の体験:論文対策に必要だったのは「書きまくり」と「添削」
筆者も当初は、参考書を読むだけで論文対策を進めていました。しかし、いざ本番形式の問題を解いてみると、論理展開がうまくできず撃沈。
その後、「答案の型」を徹底的に学び、毎週2~3通の答案を作成し、添削を受けるという方法に切り替えました。これにより、徐々に書き方が定まり、論文で合格点を取れるようになったのです。
論文試験の勉強方法についてはこちらの記事をご参照ください。
第3章:文系・理系で難しさが異なる理由──バックグラウンドが影響する科目もある
弁理士試験の受験者層には、理系出身者が多い一方で、文系出身者も一定数存在します。
受験者の属性や合格者統計を見ると、理系が優位とも言われますが、それは単純な話ではありません。
実は、「理系が有利な場面」「文系でも十分通用する場面」がそれぞれ存在するのです。
理由①:理系出身者は特許法の「技術的理解」で優位
理系出身者が有利とされる最大の理由は、特許法の問題で扱われる技術的な文脈に強い点です。
弁理士試験では、技術的な発明の構成や作用効果、引用文献との違いなどを読み解き、進歩性や新規性を論じる問題が出題されます。
この際、技術文書や構造の理解が必要となるため、大学や実務で理系分野を経験している受験者はアドバンテージを持ちます。
例:特許法の論文問題で出題された「接着剤を使った複合材料」や「制御装置の構成」など
→ 文系出身者にとっては、まず問題文自体の読解に時間がかかることも。
理由②:文系出身者は「法律科目の処理力」で優位になることも
一方で、文系出身者、特に法学部出身者は、法律条文の読み方や論理展開の感覚において、スタート地点から優位なことがあります。
弁理士試験では、特許法・実用新案法・意匠法・商標法という「法律の体系」を理解し、条文を正しく適用することが求められます。
特に、論文式試験では法律的な筋道で考える力=法的思考力が重視されるため、法学部で民法や憲法を学んだ経験が活かせるケースもあります。
また、文章力や表現力も重要な要素です。論文式試験では、明快かつ論理的な日本語で記述する必要があり、これは法学系や文系の素養が活きる部分です。
理由③:短答式試験は文理差が小さいが、論文と選択科目で差が出やすい
短答式試験(マークシート式)は、選択肢の正誤を判断する問題であり、知識の正確さと量がものを言う試験形式です。
このため、努力量が成果に直結しやすく、文理問わず平等に合格可能です。
しかし、論文式試験では「技術的な説明」+「法的論理の展開」が必要になり、どちらのバックグラウンドも要求されます。
このとき、理系は「技術の説明」が得意で、文系は「論理の展開」が得意という傾向が見られます。
また、選択科目(物理、化学、生物、情報、法律など)は、理系が得意とする科目が多く、物理・化学・情報を選べる人は戦略的にも有利です。
理系出身者が陥りがちな落とし穴
理系出身者の中には、「論理的に考えてるつもりで、条文とのリンクが薄い答案」を書いてしまうケースもあります。
弁理士試験はあくまで法律試験であるため、「条文に基づかない論理」は評価されません。
この点で、理系の発想で技術的に正しくても、法的根拠がないと減点されるというギャップに戸惑う受験者は少なくありません。
文系出身者が陥りがちな落とし穴
一方で文系出身者は、技術的な内容の理解に時間がかかることが多く、問題文の読解に苦戦することもあります。
また、実務における「明細書の構成」や「図面の解釈」など、技術的な文脈を理解する力は試験にも不可欠です。
この点は、実際の出願書類や判例を繰り返し読むことで克服可能ですが、勉強初期には負担が大きく感じられるかもしれません。
文系・理系の壁はあっても「努力」で超えられる
結論として、文系・理系どちらでも合格は可能です。
むしろ重要なのは、自分の弱点を客観的に把握し、どの部分を重点的に補強すべきかを明確にすることです。
- 理系 → 法律的な構成力を意識して答案を書く
- 文系 → 技術文書に慣れ、問題文の正確な読み取りを訓練する
このように、「試験の特性」と「自分の特性」を照らし合わせて、戦略を立てることが合格への最短ルートと言えるでしょう。
第4章:勉強時間とモチベーションの維持が難しい理由
弁理士試験の最大の敵は、難解な法律や技術の知識そのものではなく、勉強を継続し続けることそのものにあります。
実際に、「勉強を始めたけど途中で辞めてしまった」という人は少なくありません。
これは弁理士試験の特性と、社会人受験生の現実が深く関係しています。
理由①:合格までに必要な勉強時間が膨大すぎる
弁理士試験に合格するための平均的な勉強時間は2,000〜3,000時間とも言われています。
これは1日3時間の勉強を継続したとしても、2年以上かかる計算になります。
以下は学習フェーズのイメージです:
- 0〜500時間:基礎知識の習得(特許法・意匠法・商標法)
- 500〜1,500時間:短答試験対策+過去問演習
- 1,500〜2,500時間:論文式対策+選択科目対策
- 2,500〜3,000時間超:答練・模試・口述対策・仕上げ学習
これだけの時間を、仕事や家事をしながら確保すること自体が非常にハードルが高いのです。
理由②:社会人受験生は時間の捻出が難しい
弁理士試験の受験者は、社会人が多数派です。
そのため、日中は仕事、帰宅後に勉強、土日は家族サービスというように、勉強に集中する時間が極めて限られているのが実情です。
また、仕事で疲れている状態で「特許法第29条の2の判例解釈」などを読むのは、精神的にも辛いものがあります。
モチベーションが下がる原因になりやすいのは、以下のような時期です:
- 進歩している実感が得られない(スランプ期)
- 忙しくて1週間勉強できなかった
- 他の受験生のSNSを見て不安になる
- 模試の結果が悪くて落ち込む
このような壁にぶつかったとき、長期戦を見据えて立て直せるかどうかが分かれ道になります。
理由③:結果が出るまでに時間がかかるため、モチベーション維持が困難
弁理士試験は「年1回」しか実施されない国家試験です。
つまり、一度落ちると次の試験まで丸1年待たなければならないのです。
さらに、受験スケジュールが長丁場:
- 5月:短答試験
- 7月:論文試験
- 10月:論文合格発表
- 11月:口述試験
- 12月:最終合格発表
このように、試験の合否が確定するまで半年以上かかるため、「頑張った成果」がすぐに見えにくく、勉強のモチベーションを維持しづらいのが現実です。
理由④:周囲の理解が得られにくく孤独になりやすい
弁理士という資格は、一般にはあまり知られていません。
そのため、「何の勉強をしているのか」「どれくらい難しい試験なのか」が、家族や職場の人に理解されにくいという悩みを持つ受験生が多くいます。
また、勉強仲間がいないという孤独感も大きな壁になります。
たとえば、司法試験や公認会計士試験には予備校の通学仲間が多くいますが、弁理士試験は通信学習が中心になりがちで、孤独に耐える力が必要とされます。
理由⑤:途中でゴールが見えなくなる瞬間がある
弁理士試験の学習は、次のような感覚に陥りがちです:
- 勉強してもしても、理解が追いつかない
- 過去問を解いても、点数が伸びない
- 合格者の再現答案と比べて、自分のレベルが遠いと感じる
- 何年も受験している人がいるのを見て、怖くなる
このような精神的プレッシャーを受け続けることで、「本当に受かるのか?」という疑念が生まれ、やがて勉強そのものが苦痛になるリスクもあります。
筆者がモチベーションを維持した方法はこちらの記事に記載しております。
第5章:試験制度の複雑さが理解を難しくしている理由
弁理士試験が「難しい」と言われる理由の一つに、試験制度の複雑さがあります。単に「法律の勉強をすればよい」という試験ではなく、3段階の試験構成と選択科目の存在、免除制度の多様性が、受験のハードルをさらに引き上げています。
ステップ①:短答試験(マーク式)
まず最初の関門は、5月に実施される短答式試験です。マークシート式で、知識の網羅性と正確さが問われます。
ここで6割以上得点できなければ、その年の受験は終了となります。
しかも、短答試験の問題は年々細かく、難解な選択肢が増加傾向にあります。特許法だけでなく、実用新案法、意匠法、商標法、条約、著作権法、不正競争防止法、民法なども対象。**「全部やるしかない」**という厳しさがあるのです。
ステップ②:論文試験(記述式)
短答を突破した者だけが、7月の論文試験へ進めます。ここでは法律の深い理解と記述力、論理的思考力が問われます。
特許法・意匠法・商標法について、実務に近いシナリオを前提に、数ページにわたる答案を書く必要があります。
さらに、選択科目として物理・化学・生物・情報などの中から1つを選び、専門的な記述を求められます。
つまり、法律だけでなく理系知識も必要という珍しい構造の試験です。
ステップ③:口述試験(面接形式)
論文試験に合格した人は、11月の口述試験に挑みます。試験官との1対1の口頭試問で、時間は10〜15分ほど。
この試験では、「短時間で正確に、要点を話す力」が求められます。
緊張から答えられずに落ちる受験生もいるため、最後の関門として最も精神的な圧力が強い試験といえるでしょう。
複雑な免除制度・受験戦略
さらに、過去に一部試験に合格した者への部分免除制度があり、法改正によって条件も変化していきます。
このため、「自分に必要な科目は何か」「どの順序で対策すべきか」を個別に戦略立てる必要があるという、非常に特殊で難解な試験制度が受験生を悩ませます。
最終章:弁理士試験は難しいが、対策次第で合格可能
ここまで、弁理士試験が「難しい」と言われる理由を体系的に掘り下げてきました。要点をまとめると、以下のとおりです:
- 試験範囲が広く、法律・理系知識・実務感覚の全てが求められる
- 問題の難易度が高く、記憶だけでは太刀打ちできない
- 合格率が非常に低く、競争が激しい
- 勉強時間が膨大で、継続が難しい
- 試験制度が複雑で、受験計画が立てづらい
しかし、裏を返せば、これらの課題を一つずつクリアしていけば合格は十分可能であることも意味します。
では、どうやってこれらの壁を乗り越えるか?
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まとめ:難しいからこそ、正しい戦略で挑もう
弁理士試験は確かに「難しい」。しかし、その難しさの正体を知り、効果的な学習法で乗り越えていけば、合格は不可能ではありません。
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