この記事は、令和3年度に10万円以下・1年以内の学習で弁理士試験に合格した現役企業内弁理士が、実体験をもとに執筆しています。
はじめに:弁理士試験は「思い立ったが吉日」でも、準備は必要!
「とりあえず資格を取っておこうかな…」
「何か手に職をつけたいし、知財って将来性ありそう」
そんなきっかけで弁理士試験の勉強を始める方も多いのではないでしょうか。実際、私もキャリアの明確なビジョンがあるわけではなく、知財に少し興味があってなんとなく始めた側の人間でした。
しかし、何も考えずに始めると後で苦労するのもまた事実です。
本記事では、弁理士試験を受ける前にぜひ整理しておきたい「3つのポイント」を詳しく解説します。スケジュールの確保や登録費用、将来のキャリアのイメージまで、合格後に「こんなはずじゃなかった…」とならないために、ぜひ最後までお読みください。
1. 弁理士登録・実務修習にかかる費用とスケジュール
登録・修習に必要な費用一覧
項目 | 費用(税込) |
---|---|
弁理士の実務修習 | 118,000円 |
登録免許税 | 60,000円 |
登録手数料(初月会費含) | 50,800円 |
継続的な会費(月額) | 15,000円 |
初年度だけで20万円以上かかることもあります。合格しても「費用面で登録できない」という事態を避けるためにも、必ず事前に確認しておきましょう。
実務修習の支払いタイミング
- 実務修習:合格発表の翌年2月〜5月が多い(年1回)
- 登録手続き:修習終了後、すぐに可能
企業負担が可能か確認を
- 特許事務所:ほぼ確実に費用負担あり
- 企業知財部:費用を出してくれるケースが多いが事前確認が必要
- 他部門:自己負担の可能性が高いため、異動・転職の視野も
実際に私の友人でも、知財部に異動できず実費で実務修習を受けた例がありました。
可能であれば、試験前に自分の企業が支援してくれるかを確認しておくのがベストです。特に企業内の異動を目指す方は、内示や異動時期との調整も重要です。
実務修習自体の詳細についてはこちらで解説しています。

メーカーの友達で一発合格した者の知財部に移れず、泣く泣く弁理士の実務修習の費用118,000円を自腹で払った友達もいたよ。
実務修習の具体的な構成
実務修習は、主に以下の2つで構成されます:
- 集合研修(eラーニング+Zoomでのディスカッション)
- 実務修習課題(書類作成や論点整理など)
具体的には、以下のような課題が毎週課されます:
- 拒絶理由通知に対する意見書の起案
- 裁判例の検討と論点整理
- 出願戦略の提案文書の作成
- 他人の答案に対するレビュー(添削)
これらは全て期限付きかつ再提出ありで、妥協は許されません。さらにZoomでのグループディスカッションでは、自らの答案について説明・反論を求められることも。
スケジュール例(私の場合)
曜日 | 内容 |
---|---|
月曜日 | 課題配信・事前調査・資料収集 |
水曜日 | 下書き・メモ作成 |
土曜日 | 実務修習課題仕上げ・提出(深夜までかかることも) |
日曜日 | 課題仕上げ・提出(深夜までかかることも) |
社会人であっても、週10〜15時間は確保したいボリュームでした。

ちなみに僕は先輩の結婚式のために実務修習を休むことを断られたよ。
常にカメラONだし、それなりに時間を取られることは覚悟しよう。
2. 将来のキャリアと資格の使い道を整理しておこう
弁理士資格は、単なる「国家資格」にとどまりません。専門性と実務スキルの証明となる武器です。だからこそ、自分がどのようなキャリアを描きたいかを一度立ち止まって考えることをおすすめします。
弁理士資格が活きる就職・転職先
職種 | 特徴 |
特許事務所 | 実務経験がそのままスキルに。将来独立も可能 |
法律事務所 | 民事・商標など弁護士と協業も |
企業知財部 | 安定した給与と福利厚生。知財戦略にも関与可能 |
特許調査会社 | 特許検索・調査のスペシャリスト |
翻訳会社 | 特許翻訳など語学力も活かせる |
例えば「将来、特許事務所で独立したい」なら、早いうちに特許事務所に入って実務経験を積みながら資格取得を目指す選択肢もあります。
逆に「企業で安定して働きたい」なら、まずは自社の知財部への異動を目指す → 試験合格後に登録 → 将来的に管理職へというルートも有望です。
合格後に「結局やりたいことが見つからない」という状況を避けるためにも、キャリアの方向性と資格取得の目的を明確にすることが大切です。
平均年収と働き方の違い
- 特許事務所:年収600万〜1,000万円(実力主義)
- 企業知財部:年収700万〜1,200万円(大企業中心)
- 独立開業:年収500万〜2,000万円超も(波あり)
転職前提で考えるなら、資格取得前にキャリアのゴールを一度見つめ直すことをおすすめします。
弁理士資格取得で目指すべき就職先及び転職先はこちらで紹介しています。
実際に私が体験した転職活動についてはこちらで紹介しています。
3. スケジュールと選択科目免除の可否を早めに確認しよう
勉強スケジュールを確保できるか?
弁理士試験は長丁場です。特に働きながら受験する方は、日々の勉強時間を確保できるかが成功の鍵を握ります。
- 勉強時間の目安:1,000〜2,000時間
- 短答試験:5月頃
- 論文試験(選択科目含む):7月
- 口述試験:10月以降
特に本試験と大事な仕事・家庭行事が重ならないように注意が必要です。結婚式、育児、転職活動、出張などとのバッティングは想像以上に大きな負担となります。
チェックポイント
- 試験直前期に出張・結婚・出産など大イベントはないか?
- 仕事との両立スケジュールは確保できるか?
- 合格後に何をしたいか?登録するのか、転職するのか
これらが明確だと、勉強中の迷いが減り、集中力が高まります。
実際の私の受験スケジュールについては、以下の記事をご参照ください。
選択科目の免除制度について
選択科目とは?
弁理士試験では「選択科目」の受験が必要です。以下の分野から1つ選び、論文試験で回答します。
- 理工Ⅰ(機械・応用力学)…材料力学、流体力学、熱力学、土質工学
- 理工Ⅱ(数学・物理)…基礎物理学、電磁気学、回路理論
- 理工Ⅲ(化学)…物理化学、有機化学、無機化学
- 理工Ⅳ(生物)…生物学一般、生物化学
- 理工Ⅴ(情報)…情報理論、計算機工学
- 法律(弁理士の業務に関する法律)…民法
意味合いとしては、ある程度弁理士の法律以外の専門性も業務に必要なため試験として求めています。
免除制度を活用しよう!
大学院で該当分野の研究を行っていた場合、選択科目の免除を受けることができます。
必要書類(大学院修了証明書・成績証明書・授業概要など)をそろえて、願書提出前に「免除申請」を郵送で行う必要があります。
※審査は月1回のため、計画的に動きましょう。
私も修士課程で材料工学を専攻していたため、「理工Ⅰ(機械)」で免除を受けました。これがなければ合格は厳しかったかもしれません。

僕の場合も大学院の修論データから要約を書いて当時の教授にサインをしてもらうという手続きをしたよ。
審査も月に一回という頻度でしか行われないので早めに動き出しておこう。
とはいえ、とりあえず始めてみるのも全然アリ!
ここまで読むと「準備が大変そうだな」と思うかもしれませんが、完璧に準備が整ってから始める必要はありません。
弁理士試験の勉強で得られる「知的財産法の知識」は、たとえ途中で断念しても必ず役立ちます。
- 発明活動や特許出願での知識
- 企業内での昇進や業務の幅拡大
- 知財系の職種への転職
試験勉強を通じて「自分に向いているかどうか」「キャリアとして選ぶべきか」も見えてくるはずです。
まずは安価な通信講座からお試しを!
いきなり高額な予備校に申し込まずとも、安価にスタートできる講座もあります。
どちらも無料体験や資料請求が可能なので、まずは試してみてからでも遅くありません。
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Q1. 文系出身でも本当に合格できますか?
A. はい、文系出身者でも民法や理工Ⅱを選べば十分に合格可能です。
実際、私の知人でも法学部出身で合格した方が複数います。数学や物理に不安がある場合は、選択科目を「民法」にするのがおすすめです。講義も民法向けが充実してきており、対策しやすくなっています。
Q2. 実務修習はどのくらい大変ですか?働きながらでも可能?
A. 週単位の課題提出とZoomでの討論があり、正直ハードです。
ただし、工夫次第で十分両立可能です。 通勤時間や早朝・休日を活用し、「毎週決まった時間を修習用に確保」するのがコツです。また、半数以上が再提出になるほど課題の質が求められるため、手抜きはできません。
Q3. 弁理士資格を取れば転職は簡単になりますか?
A. 資格だけでの転職は甘くない現実もあります。
特許事務所や企業知財部では実務経験が重視されるため、「未経験OK」の求人は限られています。転職成功には、事前のキャリア設計と、資格以外の強み(技術知識・語学力・業界知識)がカギになります。
Q4. 試験対策の講座はどれを選ぶべきですか?
A. 初学者ならスタディング、論文対策に力を入れたいなら資格スクエアがおすすめです。
私自身はスタディングを中心に使いましたが、論文期は資格スクエアを併用することで効果的に学べました。無料体験もあるので、まずは比較してみましょう。
まとめ:弁理士試験を始める前に考えておくべき3つのこと
- ✅ 登録・修習にかかる費用を確認しよう(企業負担の可否もチェック)
- ✅ 将来のキャリアを描いて、資格の活かし方を明確にしよう
- ✅ 勉強スケジュールと選択科目免除の有無を早めに検討しよう
最後に一番伝えたいのは、「知財の世界は知れば知るほど面白い」ということです。
資格の有無に関わらず、学んだ知識は必ずあなたの未来に活きてきます。
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