明確性要件違反、簡潔性要件とは?弁理士試験にも役立つ特許の審査基準を徹底解説いたします。

知財業務全般

特許出願において、拒絶理由通知として明確性要件の違反は拒絶理由としてよく通知されますよね。でもなかなか完全に理解している人は少ないのではないでしょうか

知財の実務に関わっている人はもちろん、弁理士試験受験者にとっても重要な箇所になります。本日はここを徹底解説したいと思います。

明確性要件とは?

明確性要件の概要

特許法36条第6項第2号に規定されている拒絶理由の一つで、その特許請求の範囲の発明が明確である事を指します。

実際の条文は以下です。

 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。

 特許を受けようとする発明が明確であること。

簡単に言うと、請求項の表現が不明確で発明が曖昧なときに言われたりするね。審査官が疑念を生じるようなクレームだね。

国別で言うと日本比較的優しくて、ヨーロッパは厳しいイメージだね~

例えばどんな場合に明確性要件違反になる?

明確性要件違反には以下のような類型があります。

  1. 請求項の記載自体が不明確であるため、発明が不明確である場合
  2. 発明特定事項に技術的な不備がある結果、発明が不明確となる場合
  3. 請求項にかかる発明の属するカテゴリーが不明確またはいずれのカテゴリーでもないため発明が不明確である場合
  4. 発明特定事項が選択肢で表現されていて、その選択肢同士が類似の性質又は機能を有しないため発明が不明確である場合
  5. 発明を曖昧にし得る表現があるため、発明の範囲が不明確となる場合

以下でそれぞれをもう少し具体的に説明していきます。

①請求項の記載自体が不明確であるため、発明が不明確である場合

例えば日本語として不適切な表現がある場合や明細書を見ても請求項に使われている用語の意味が理解できない場合が該当します。

外国出願の日本語翻訳で結構不適切な表現が発生する場合はよくあるよ。

②発明特定事項に技術的な不備がある結果、発明が不明確となる場合

請求項の発明特定事項の中に技術的な欠陥がある場合がこのような場合に該当します。

例えば材料の組成がA50%、B40%、C15%と書いてあり、100%を超えてしまう場合などがあります。

③請求項にかかる発明の属するカテゴリーが不明確またはいずれのカテゴリーでもないため発明が不明確である場合

特許発明には『物の発明』、『方法の発明』、『物の生産方法の発明』がありますが、例えばこのいずれに該当するか分からない場合は、この明確性違反に該当します。

④発明特定事項が選択肢で表現されていて、その選択肢同士が類似の性質又は機能を有しないため発明が不明確である場合

例えば○○を有する自動運転制御システムまたは自動車といった表現の場合です。

1の請求項の記載から1の発明が特定されなければなりません。この二つの『自動運転制御システム』と『自動車』は類似の機能を持たないため不明確となります。

⑤発明を曖昧にし得る表現があるため、発明の範囲が不明確となる場合

例えば、○○以上○○以下や○○を除くという表現は発明を不明確にしてしまう可能性があります。必ずしもこのような場合全てではありませんが、当業者の目線で明確かどうかの判定を行います。

明確性要件違反にはどう対応すれば良いのか

①明確性要件を満たすように補正

上記のいずれのパターンに該当するのかをまずは確認して見ましょう

審査官の拒絶理由通知に示唆がある場合があるので、それに従って補正を行って満たせば拒絶理由を解消することができます。

②意見書により反論

例えば意見書で審査官が考慮している出願時の技術常識とは異なる技術常識を証明すれば、拒絶理由を解消できる可能性があります。

例えば、出願人が示した技術常識を参酌すると請求項中の用語が明確であると審査官が納得すれば、拒絶理由が解消します。

補正により権利範囲に影響がない場合はおとなしく補正を行うのも手だよ。

簡潔性要件とは?

簡潔性要件の概要

特許法36条第6項第3号に規定されている拒絶理由の一つで、その特許請求の範囲が簡潔で分かりやすい事を指します。

実際の条文は以下です。

 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。

三 請求項ごとの記載が簡潔であること

簡単に言うと、請求項の表現が冗長で分かりにくいときに通知されるね。結構レアなケースだと思うけど。

例えばどんな場合に簡潔性要件違反になる?

明確性要件違反には以下のような類型があります。

  1. 請求項に同一内容が重複して記載してあって記載が必要以上に冗長すぎる場合
  2. 択一形式による記載において選択肢の数が膨大である場合

簡潔性要件違反にはどう対応すれば良いのか

①簡潔要件を満たすように補正

上記のいずれのパターンに該当するのかをまずは確認して見ましょう

審査官の拒絶理由通知に示唆がある場合があるので、それに従って補正を行って満たせば拒絶理由を解消することができます。

②意見書により反論

例えば意見書で反論することで審査官の心証が変われば拒絶理由を解消できる場合があります。

補正により権利範囲に影響がない場合はおとなしく補正を行うのも手だよ。

他にはどのような拒絶理由がある?

拒絶理由の内容には他にも以下のものがあります。

  • 新規性がない(特許法29条第1項)
  • 進歩性がない(特許法29条第2項)
  • 発明に該当しない(特許法第29条1項柱書)
  • 産業上利用可能でない(特許法第29条1項柱書)
  • 拡大先願による後願に該当する(特許法第29条の2)
  • 最先の出願でない(特許法第39条)
  • 明細書等の記載が不明瞭である(特許法題36条4項、6項)
  • 発明の単一性違反(37条)

以下に解説しているのご参照お願いいたします。

最後に

本日は明確性要件違反、簡潔性について説明させていただきました。

とても重要な内容なので、実務や試験にもきっと役立つと思います。

私が弁理士試験にかけたコストや時間及びおすすめの講座についてはこちらにまとめていますのでご参照ください。

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