この記事は、令和3年度にわずか10万円以下・1年の学習期間で弁理士試験に合格した現役企業内弁理士が、実体験をもとに執筆しています。
「弁護士は聞いたことあるけど、弁理士って何?」
「そもそもどんな仕事?難易度は?」
そんな疑問を持つ方に向けて、この記事では以下を徹底解説します。
- 合格に必要な試験とポイント
- 弁理士とは何か?
- 弁理士になるメリット
- 弁理士の具体的な仕事内容
- 弁理士試験の仕組みと流れ
【弁理士とは?技術と法律の両面に強い“知的財産の専門家”】
弁理士とは、「特許」「実用新案」「意匠」「商標」などの**知的財産(IP:Intellectual Property)に関する法律手続を専門に扱う国家資格者です。特許庁への出願代理をはじめ、発明者や企業の知的財産権を守るための重要な役割を担っています。弁理士は、理系的な技術の理解と、法律知識の両方を兼ね備えた、まさに“知財のプロフェッショナル”**といえる存在です。
私自身もこの資格に興味を持ったきっかけは、ある企業の開発部門で「特許出願ができないと、技術が守れない」という現実に直面したことでした。そのとき初めて、「弁理士」という存在がいかに重要なのかを実感しました。
【弁理士の独占業務とは?他の士業と違う専門性】
弁理士の主な業務には、以下のような独占業務(弁理士しか行えない業務)があります:
- 特許庁への出願代理業務(特許・実用新案・意匠・商標)
- 拒絶理由通知への応答(中間処理)など審査対応
- ライセンス契約・技術移転交渉のサポート
- 知的財産権侵害に関する訴訟代理(※特定侵害訴訟代理付記が必要)
これらの業務を通じて、弁理士は企業の研究開発から知財戦略まで幅広く支援しています。私も仕事を通じて「ただの法律家ではなく、技術の裏側も理解して交渉や戦略を練れるのが弁理士なんだ」と知ったとき、技術系出身の自分にもチャンスがある資格だと感じました。

法律の知識の無い人が勝手に出願業務とかしちゃうと企業も、特許庁も困っちゃうよね。
弁理士の主な勤務先と仕事内容|特許事務所と企業知財部での役割とは?
弁理士が活躍するフィールドは多岐にわたりますが、大きく分類すると「特許事務所」と「企業の知的財産部(知財部)」の2つが代表的な勤務先です。それぞれの職場での仕事内容や求められるスキルは異なり、自身のキャリアや適性によって進むべき道が分かれてきます。以下では、両者の業務内容や特徴について具体的に解説します。
① 特許事務所で働く弁理士|出願のプロフェッショナル
特許事務所に勤務する弁理士は、主に企業や大学などの依頼を受けて、知的財産の取得をサポートする業務に従事します。日々の仕事は、発明の内容をヒアリングし、それをもとに明細書(発明の内容を記述する書類)を作成して特許庁へ出願する「出願業務」が中心です。
特許出願後には、特許庁からの「拒絶理由通知」に対して、意見書や補正書を提出して対応する中間処理も重要な業務の一つです。その他にも、クライアント企業が他社と締結するライセンス契約の支援や、特許権侵害を巡る訴訟対応(付記弁理士の場合)など、法務寄りのサポートも担う場面があります。
明細書作成は弁理士としての“腕の見せ所”とも言える作業であり、技術への理解力と法律的な知識、さらには文章構成力が三位一体で求められる専門スキルです。経験を重ねるほど、権利範囲の広さや質の高さが問われる高度な業務になっていきます。
② 企業知財部で働く弁理士|知財戦略の中核を担う存在
一方、企業の知的財産部(知財部)で働く弁理士は、自社の技術やブランドを守り、知財を活用した経営戦略を立案・実行する役割を担います。具体的には、研究開発部門と連携して発明の発掘や特許出願の指示・依頼を行い、知財ポートフォリオの構築・管理を進めます。
また、特許出願後の拒絶理由への対応では、社内の技術者や経営層と相談しながら、中間処理の方針を決定する調整業務も発生します。加えて、競合他社の特許調査や、自社技術の抵触リスク評価、特許無効化戦略の立案といった、攻めと守りの両面から知財を活用する視点が求められます。
💼 現場のリアル:私が知財部に異動したばかりの頃、開発チームとの関係構築にとても苦労しました。技術的な知見だけでなく、現場の悩みやタイミングを把握することで、発明届が出やすい雰囲気をつくることができました。
知財部では、単に出願書類を作るだけではなく、経営目線で知財を戦略的に活用する思考力や、部門間の調整力が強く求められるのが特徴です。特許事務所の弁理士とは異なり、社内のあらゆる関係者と連携を取りながら、会社の競争力を根底から支える重要なポジションとなります。
どちらを選ぶ? 弁理士のキャリア選択の視点
特許事務所と企業知財部、どちらの勤務先にもそれぞれの魅力があります。「手に職」をつけて技術分野を極めたい人には特許事務所が向いており、「会社経営に貢献したい」「事業戦略の一端を担いたい」という志向の人には企業知財部がフィットするかもしれません。
私自身、企業開発でキャリアをスタートし、その後弁理士資格を取って企業知財部に異動しましたが、それぞれにやりがいや成長機会がありました。もし今、弁理士としての進路に悩んでいる方がいたら、実際に働く人の声やインターン制度を活用して、現場の空気感を知ることをおすすめします。
▶ さらに詳しく知りたい方へ:
以下の記事では「企業知財部のリアルな仕事内容」について、より具体的なエピソードや実務の流れを紹介しています。

企業の知財部にしても特許事務所と密接にかかわるので、弁理士資格を持っていると業務に役立つことは間違いないよ。
2025年度(令和7年度)弁理士試験スケジュール
受験願書の請求と提出
- インターネットによる願書請求期間:2025年2月3日(月)9:00 ~ 3月21日(金)23:59
- 郵送による願書請求期間:2025年3月3日(月)~ 3月21日(金)消印有効
- 窓口での願書交付期間:2025年3月3日(月)~ 3月31日(月)9:00~17:00
- 願書受付期間:2025年3月6日(木)~ 4月3日(木)消印有効
試験日程
- 短答式筆記試験:2025年5月18日(日)12:30~16:00
- 試験会場:
- 東京:立教大学池袋キャンパス
- 大阪:大阪経済大学大隅キャンパス
- 仙台:北杜学園仙台大原簿記情報公務員専門学校中央校舎5号館
- 名古屋:愛知大学車道キャンパス
- 福岡:福岡工業大学
- 試験会場:
- 論文式筆記試験(必須科目):2025年6月29日(日)
- 試験時間:
- 特許・実用新案法:10:00~12:00
- 意匠法:13:15~14:45
- 商標法:15:30~17:00
- 試験会場:
- 東京:立教大学池袋キャンパス
- 大阪:関西大学千里山キャンパス
- 試験時間:
- 論文式筆記試験(選択科目):2025年7月27日(日)10:00~11:30
- 試験会場:
- 東京:東京富士大学
- 大阪:大阪経済大学大隅キャンパス
- 試験会場:
- 口述試験:2025年10月18日(土)~10月20日(月)のいずれかの日
- 試験会場:東京:ザ・プリンスパークタワー東京
合格発表
- 短答式筆記試験合格発表:2025年6月9日(月)予定
- 論文式筆記試験合格発表:2025年9月24日(水)予定
- 最終合格発表:2025年11月10日(月)予定
弁理士試験の試験内容と科目構成(2025年版)
弁理士試験は、知的財産法に関する高度な専門知識と論理的思考力、実務適性を評価する国家試験です。試験は大きく3段階に分かれており、それぞれで異なるスキルが問われます。
1. 【短答式筆記試験】(択一式)
試験概要:
短答式試験は、マークシート形式(5肢択一)で、合計60問が出題されます。
試験時間は 3時間30分、満点は 60点(各科目20点)で、総合点で一定の基準点を超えることが必要です。
出題科目と内訳:
科目名 | 主な出題内容 |
---|---|
特許法・実用新案法 | 出願・審査・拒絶理由・訂正・無効審判・特許権の効力など、制度全般が幅広く出題される |
意匠法 | 新しい意匠の定義・登録要件・類似判断・意匠権の範囲・画像意匠など、改正点にも注意が必要 |
商標法 | 登録要件・類似商標・識別力・不使用取消・周知・著名商標、国際出願制度(マドプロ)など |
※令和5年改正法(意匠・商標)にも対応した対策が必要です。
合格基準:
例年、総得点の65〜70%程度(40点前後)がボーダーライン。
この短答合格は3年間有効で、その間に論文試験・口述試験に合格すればOKです。
短答試験対策の勉強方法は下記で解説していますのでご参照ください。
2. 【論文式筆記試験】
試験概要:
記述式の試験で、与えられた設問に対して法律的な論述力・条文運用能力・実務的な判断を記述します。
次の2区分に分かれます。
【必須科目】
各科目1問ずつ出題、各問2時間の記述式。
科目 | 内容 |
---|---|
特許法・実用新案法 | 発明の要件・請求項の解釈・補正・分割・無効理由等を論述。条文をベースに論理的展開が必要。 |
意匠法 | 登録要件・類似意匠との比較・画像意匠等、改正法の理解が重要。 |
商標法 | 類似性の判断、商標の使用、取消審判・異議申立等、実務的ケースで出題される。 |
※例年は、出願人の立場・代理人の立場など設定が与えられ、その観点から回答が求められます。
【選択科目】
大学・大学院などで学んだ分野や得意分野を選択。文系・理系どちらの受験者にも対応した選択肢があります。
分類 | 選択科目一覧(2025年現在) |
---|---|
理系 | 機械、電気・電子、情報、化学、バイオ、物理 |
文系 | 法律、経済 |
選択科目の特徴:
- 1問90分(または120分)の記述式試験
- 配点が高く、記述量も多いため、大学レベルの専門知識が必要
- 文系出身者は法律や経済が選ばれる傾向
- 理系出身者は専攻分野(例:情報工学・有機化学)を選択するのが一般的
論文試験対策の勉強方法は下記で解説していますのでご参照ください。
3. 【口述試験】
論文試験の必須科目に合格した者のみが受験可能です。
面接形式で、試験官の質問に対して口頭で即座に答える形式です。
対象科目と内容:
科目名 | 試験内容のポイント |
---|---|
特許法・実用新案法 | 条文の趣旨や手続きの流れ、実務的判断などを即答形式で問われる |
意匠法 | 意匠の定義や類否判断、画像意匠、権利範囲の解釈等 |
商標法 | 類似商標・識別力・使用の有無・国際登録制度(マドプロ)など |
試験時間は各科目5分程度、合計で15分前後の短時間勝負。
論理的に正確に答えられるよう、模擬練習が非常に重要です。
合格率:
例年90%以上と高いものの、準備不足で落ちるケースもあるため油断は禁物です。
口述試験についてはこちらで解説しております。
弁理士試験の合格率・難易度
弁理士試験は国家資格の中でも難関に位置づけられており、合格率は例年7〜9%前後で推移しています。
特に論文試験と口述試験での難易度が高く、以下のような特徴があります。
試験区分 | 合格率(目安) | 特徴 |
---|---|---|
短答式 | 約15〜20% | 知識量とスピード重視。過去問演習が有効。 |
論文式(必須) | 約10% | 法律的な論述力が問われる。条文解釈力が必要。 |
論文式(選択) | 約70〜90% | 大学での専攻などにより差が出る。理系出身者は理工系を選ぶ傾向。 |
口述試験 | 約90%以上 | 論理的説明力、瞬発力、条文の理解が試される。 |
特に短答→論文→口述と進むごとに絞り込みが行われ、最終的な合格者数は例年250〜300名程度に限られています。
受験資格と受験回数の制限
弁理士試験は、年齢・学歴・職歴に関係なく、誰でも受験可能です。
ただし、短答式合格の有効期間は3年間であり、その間に論文試験・口述試験に合格しなければ再度短答から受け直す必要があります。
実務修習と弁理士登録
最終合格後、弁理士として登録するためには日本弁理士会が実施する「実務修習(約6ヶ月)」の受講と修了が必要です。
- 修習は、eラーニング+集合研修(演習・ロールプレイ等)で構成されます。
- 実務で必要な書類作成・手続き・面談スキル等を体系的に学びます。
修習を修了し、日本弁理士会に登録申請・承認されて初めて「弁理士」として活動できるようになります。
実務修習についてはこちらで解説しています。
まとめ:弁理士試験は「法律×技術」の知的職業への第一歩
弁理士は、技術革新が絶え間なく続く現代社会において、発明・デザイン・ブランドを法的に保護し、ビジネス価値に変換するプロフェッショナルです。
試験のハードルは決して低くありませんが、その分だけ取得後のやりがいと活躍のフィールドは非常に広く、多様なキャリアパスを描くことができます。
- 技術と法律の両方に携わりたい方
- 知的財産やイノベーションに関心のある方
- 企業内で知財戦略に携わりたい方
- 独立開業も視野に入れた専門職を目指す方
そんな方には、弁理士はまさに「唯一無二」の資格といえるでしょう。
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