【体験談】企業知財部の仕事内容とは?現役企業内弁理士が実情を解説!

知財業務全般

この記事は、令和3年度に10万円以下・1年未満の勉強で弁理士試験に合格した現役企業知財部員が、実体験をもとに執筆しています。

知財部って実際どんな仕事をしているの?」「理系だけど、知財に興味ある!でも周りに知財部員がいない…

そんな方に向けて、企業知財部のリアルな仕事内容・向いている人の特徴・働き方・弁理士資格の活かし方まで、わかりやすく紹介していきます!

企業知財部の主な仕事内容とは?

企業知財部の仕事は、主に以下の4つに分類されます。

  • 発明発掘と特許出願対応
  • 特許の中間処理(拒絶理由通知対応)
  • 特許侵害調査(リスク管理・他社対応)
  • 特許権の活用・戦略立案

それぞれ、詳しく解説していきます。

発明発掘活動~出願依頼まで

技術者が発明を行った際、知財部は開発部門と連携し、発明の内容をヒアリングしながら出願方針を検討します。

  • 発明の新規性・進歩性の判断
  • 従来技術調査(特許検索)
  • 出願明細書のチェック・修正指示

出願書類の作成自体は特許事務所に依頼することが多いですが、内容を精査し、「意図通りのクレーム構成になっているか」などをしっかり確認します。

💡 出願件数の目安
企業の規模や担当部署にもよりますが、1人あたり年間20〜50件程度が一般的です。

発明者の中には良いアイデアを持っていても、特許出願したことが無い人がいるので、知財部の腕の見せ所だね。

発明発掘活動の詳細については、こちらでも紹介しております。

中間処理:特許庁からの拒絶理由通知への対応

出願後、特許庁から「拒絶理由通知」が来ることがあります。

この対応(=中間処理)では、以下のような業務が発生します。

  • 特許事務所からの対処案の精査
  • 拒絶理由に対する補正・意見書の方針決定
  • 費用対効果を考慮した権利化方針の決定

「権利取得する価値があるか?」を他社の動向・製品ロードマップ・費用などから多面的に判断し、ときには出願放棄の決断を下すことも。

📌 処理件数の目安
月あたり10〜20件ほどが平均的です。

特許の範囲と特許取得にかかる費用などを鑑みて時には、放棄したりすることもあるよ。

中間対応の詳細についてはこちらをご参照ください。

特許侵害調査:他社・自社のリスク管理

知財部は、自社の特許が他社に侵害されていないか調査したり、逆に他社特許に自社が抵触していないかの確認も行います。

  • 他社製品が自社特許を侵害していないか調査
  • 他社からの警告・訴訟対応
  • クロスライセンス(特許の相殺)対応

日本では訴訟に発展するケースは多くありませんが、アメリカでは訴訟リスクが高いため、海外案件の対応も業務に含まれます。

結構アメリカでは訴訟を頻繁に起こすので、企業でもアメリカの拠点に訴訟を起こされて日本の知財部が対応するときもあるよ。

特許侵害調査については下記の記事をご参照ください。

知財部には何人いる?弁理士資格者の割合は?

企業によって異なりますが、出願20件あたり1人程度の知財部員がいるのが一般的。

例えば、年間出願件数が1,000件の企業では約50人規模の知財部があるイメージです。

🧑‍⚖️ 弁理士資格を持っている人の割合
意外にも、弁理士資格を持っている人は10人に1人〜5人に1人程度
取得していると社内で一目置かれ、昇進や評価にもプラスに働くことが多いです。

特許事務所との違いとは?

項目企業知財部特許事務所
案件数多い(年間20〜50件)少なめ(1件に集中)
業務スタイルスピード重視丁寧さ重視
主な役割発明の戦略的活用、社内調整明細書作成、中間処理の技術補完

特許事務所が「職人型」だとすれば、知財部は「経営戦略と特許をつなぐ翻訳者・調整者」といったイメージです。

特許事務所との関係について詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

最初は、案件を覚えて処理して、すぐ忘れてまた次の案件に取り組むのに慣れるのが大変だったよ。

知財部のメリット・デメリット

メリット

  • 幅広い技術・業界知識が自然と身につく
  • 無駄な会議が少なく、業務に集中しやすい
  • 自由度が高く、自分でスケジュールを管理できる
  • 在宅勤務もしやすい

デメリット

  • 黙々と仕事を進める時間が多く、対人業務が少なめ
  • スピード重視なので、のんびり作業したい人には不向きかも…

企業知財部員の1日のスケジュール例

時間内容
9:00業務開始(今日のタスク整理)
9:30〜12:00中間処理(2件分)
12:00〜13:00昼休憩
13:00〜14:00発明相談(発明内容のヒアリング・整理)
14:00〜15:00中間処理の社内報告・方針決定
15:00〜15:30特許事務所への対応依頼(オンラインシステム)
15:30〜17:00出願案件の説明(発明者+特許事務所との打ち合わせ)
17:00〜18:00発明の従来技術調査
18:00業務終了

この日は打ち合わせ多めですが、1日中ひたすら調査と中間処理に集中する日もあります。

知財部に向いている人の特徴とは?

企業知財部の業務は、特許出願や中間処理といった専門的かつ緻密な作業が中心となります。そのため、以下のような資質やスキルを持つ人が、知財部で力を発揮しやすいといえるでしょう。

  • 論理的思考が得意な人
    特許実務では、発明の要点を構造的に捉えたり、拒絶理由に対して論理的に反論したりする場面が多くあります。筋道立てて考え、説明できる力がある人は非常に重宝されます。
  • 地道な作業にも粘り強く取り組める人
    知財の仕事は、一見すると地味で細かい作業の連続です。文献調査や補正書作成など、忍耐力と丁寧さが求められる場面が多いため、コツコツ型の人に向いています。
  • コミュニケーション能力がある人
    発明者との打ち合わせや特許事務所との調整、場合によっては法務部や経営層との連携も必要になります。技術を理解したうえで、分かりやすく伝える力が求められます。
  • 技術に興味がある人
    特許の前提には技術があります。特に理系出身であれば、大学や実務で学んだことを活かせる機会が多く、技術の進化を追いながら知的財産に関わることができる点は大きな魅力です。

なお、文系出身者でも論理的な考え方ができる人や法律に強い人であれば、知財部で十分に活躍可能です。「発明を守る」視点を持ち、技術とビジネスの橋渡しができる人材が重宝されます。

知財部への配属・転職を目指すには?

「知財部の仕事に興味はあるけれど、どうやって配属されるの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。実際には、以下のようなルートから知財部入りを果たす人が多数います。

社内異動で知財部に入るケース

特に製造業や技術系企業では、開発や設計部門からの社内異動によって知財部に配属されるケースが多くあります。日々の業務の中で発明創出に関わるうちに、「もっと特許実務に携わりたい」と考えるようになり、異動希望を出す方が少なくありません。

社内異動を目指す場合、以下のような準備が効果的です。

  • 発明届を積極的に出し、知財部との接点を増やす
  • 弁理士試験の学習を始めることで、知財への本気度を示す
  • 知財教育や社内セミナーを活用し、基本知識を身につける

上司や人事に対して「知財に興味がある」と意思表示をしておくことも、異動への大きな一歩になります。

転職で知財部に入るには?

中途採用で知財部に入る場合、以下のような経験や資格があると有利になります。

  • 特許事務所での実務経験(明細書作成、中間処理など)
  • 開発・設計経験+特許出願・発明発掘の実績
  • 弁理士資格、知財検定などの知識の証明

企業によっては未経験からの採用も行っていますが、その場合は「技術理解力」「論理構成力」などのポテンシャルを評価されることが多いです。特許法や審査基準の基礎を学んでおくと、面接でも好印象を与えられます。

知財部は、専門性がありながらも社内での立ち位置が高く、会社の技術資産を支える重要な役割を担います。技術と法律の両方に関心がある人にとっては、非常にやりがいのあるキャリアといえるでしょう。

知財部のキャリアパスと将来性

企業知財部は、専門性の高い業務を担う部署でありながら、キャリアの選択肢が非常に多様なのが特徴です。知財業務を通じて培ったスキルや経験は、社内外問わず幅広い場面で活かすことができます。

社内でのキャリアアップ

企業内では、以下のようなキャリアパスがよく見られます。

  • 知財部内での昇進(リーダー → マネージャー → 部長など)
    出願戦略の立案や係争対応、知財ポートフォリオの管理など、より経営に近い立場で判断を下す役割へと進むことができます。特に、知財戦略を事業戦略と統合して推進できる人材は重宝されます。
  • 他部門への異動(法務部、経営企画部など)
    知財の視点を持つ人材は、法務、契約、M&A、ライセンス交渉といった業務でも活躍できます。実際、技術法務やビジネス法務に強い知財出身者は各社で需要があります。
  • 海外拠点への駐在やグローバル知財業務への関与
    国際出願(PCT)、外国特許対応、ライセンス契約などを通じて、海外法務やグローバルビジネスに携わるチャンスもあります。語学力を活かしてグローバルに活躍したい方にも魅力的な道です。

社外へのキャリア展開

知財部で経験を積んだ後に、以下のような外部キャリアを目指す人も多くいます。

  • 特許事務所や法律事務所への転職
    実務経験者として、企業側の視点を理解している人材は即戦力と見なされやすく、高く評価されます。
  • 弁理士として独立開業
    弁理士資格を取得すれば、個人事務所の開設やコンサルタントとしての活動も視野に入ります。独立後は、自由な働き方や報酬の上限が広がるのも魅力です。
  • スタートアップの知財責任者(CIPO)
    知財の重要性が高まる近年では、ベンチャー企業やスタートアップでも「知財に強い人材」が求められています。事業立ち上げ段階から知財戦略に関与できる貴重なポジションです。

将来性と市場価値

知財人材のニーズは今後さらに高まると予測されています。特に以下のようなトレンドが後押ししています。

  • DX(デジタルトランスフォーメーション)やAIなど新技術の登場
  • オープンイノベーションの加速に伴うライセンス戦略の重要性
  • 国際的な知財訴訟や標準必須特許(SEP)への対応強化

これらにより、単なる「特許出願担当」ではなく、「経営戦略の一部として知財を動かせる人材」が今後の企業知財部で強く求められるようになっています。

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