弁理士試験、知財実務に役立つ判例編③~化学に関する発明

知財業務全般

この記事は、令和3年度に1年10万円以下で弁理士試験に合格した現役企業内弁理士が実体験を元に書いています。

弁理士試験には覚えなければならない重要な判例がいくつもあります。ここでは簡単に要点だけまとめて解説していきたいと思います。

そしてそれはもちろん実務にも役に立ちます。

化学に関する発明①(実施例)

概要

化学に関する発明は、機械や電気と異なり、実験に裏付けされた実施例が無ければ、一般的に発明として認められない。

機械の分野などは、結構アイデア発明とかいっぱいあるよね~

内容(以下判決文の抜粋になります。昭和43(行ケ)132、昭和52-1-27)

①従来知られている反応を考慮すれば、化学反応を種々想定して、原料から所望の化合物を得るような過程を反応方程式ないし化学方程式として書くことは比較的容易である。しかし、このように想定しても化学反応は現実に起きるとは限らない。けだし、原料成分を混合することは人為的にできるが、その後の化学反応は自然法則によって進行するから、原子の組み換えを人為的に行わせることはできないからである。

②このように反応の化学方程式が示されても、果たしてそのとおり反応が進行するかどうかは、一般的には実際に実験して確認してみなければ分からないのであって、化学が実験の科学といわれる所以もそこにある。

化学反応の実在を裏付け、作用効果を確認するためには、実際にその反応を行ってみなければならず、発明を記述する明細書には、かような実験が行われたことを証する資料が記載されてなければならない。実施例はそのための最も適切な資料であり、必ずしもそれに限定されるものではないが、少なくともこれに変わり得るものがあることが必要である。

どちらかというと実務に役立つ判例だね。受験生はそういう判例もあったなぐらいの認識で良いと思います。

化学に関する発明②(合金の発明)

概要

合金に関する発明は、元素の比率だけでなく、性質や用途を記載する必要がある。

内容(以下判決文の抜粋になります。昭和55(行ケ)176、昭和58-11-16)

①ところで、合金はある金属元素に別の元素を一つ以上加えたもので、やはり金属としての性質を有するものであるが、自然科学の現段階において、元素として未知なものが存在しないとされている以上、合金成分としての元素の組み合わせは限られることとなるので、

②単にある種の合金を組成する数種の元素の必要が率を示すだけでは、未だこれをもって合金に関する完成された発明ということはできず、少なくともそれがどのような性質又は用途を有するかということを明らかにすることによって、はじめて合金としての発明が完成するというものというべきである。

合金の組成って限られているから適当な組成でたくさん出願されちゃうと困っちゃうよね~

化学に関する発明(有用性)

概要

化学物質発明は、その有用性の開示が必要がある。

判例①の内容(以下判決文の抜粋になります。平成2(行ケ)243、平成6-3-22)

①産業上利用できる発明としての化学物質発明が成立するためには、その化学物質が産業上利用できること、すなわちその有用性が無ければならず、当明細書においてその有用性が開示されていることが必要であること、一般的に化学物質の性質をその化学構造から予測することは困難であり、(ある化学構造から置換基の一つだけ異にするのみであっても、その性質を変じる可能性がある。)、一般には、実際に製造して試験をしてみなければその性質を知ることはできないこと、

②したがって、化学発明が認められるためには、当初明細書において、その性質について実際に試験がされて有用性のあることが明らかにされているか、その試験から有用性を推認できることが必要である。

判例②の内容(以下判決文の抜粋になります。平成13(行ケ)219、平成15-1-29)

①そして「いわゆる化学物質発明は、新規で、有用、すなわち産業上利用できる化学物質を提供することにその本質があるから、その成立性が肯定されるためには、化学物質そのものが確認され、製造できるだけでは足りず、その有用性が明細書に開示されていることを必要とするというべきである」

化学物質の発明は、総じて結構要件が厳しいことが分かるね~

最後に

弁理士試験、知財実務に役立つ判例編③~化学に関する発明性について本日は解説いたしました。

いかがだったでしょうか?

また他にも弁理士試験の勉強方法、知財部で仕事内容に解説していますので、ぜひご覧ください。

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