弁理士試験、知財実務に役立つ判例編⑥~間接侵害~

その他

この記事は、令和3年度に1年10万円以下で弁理士試験に合格した現役企業内弁理士が実体験を元に書いています。

弁理士試験には覚えなければならない重要な判例がいくつもあります。ここでは簡単に要点だけまとめて解説していきたいと思います。

そしてそれはもちろん実務にも役に立ちます。

間接侵害①

概要

間接侵害は構成要件の一部を充足した実施によって、特許権侵害の予備的行為を行うことであり、特許法第101条第1号から第6号に規定されています。

第1号は、いわゆる「のみ品」についての規定になります。侵害にのみ使えわれるものであれば、間接侵害として侵害認定できるというものです。

下記判例にはその「のみ品」についての要件が表されています。

判決を覚える必要はないけど、なぜ間接侵害が規定されているのかぐらいは抑えておこう

内容(以下判決文の抜粋になります。昭和50(ワ)9647、昭和56-2-25)

①特許権に対する侵害とは、本来、正当な権原なくして特許発明の構成全体を実施することであり、したがつて、その一部のみの実施は特許権に対する侵害とはならないのであつて、これを特許が物の発明についてされている場合についていえば、原則として(均等論等の適用にある場合は別として)、特許発明の構成要件をすべて具備する物の生産譲渡等が特許権に対する侵害となるのであつて、その構成要件を一部でも欠如する物の生産譲渡等は特許権に対する侵害とはならないところ、かくては、数個の構成要件から成る特許発明に係る物が二つ以上の部品に分けて生産、譲渡され、譲渡を受けた者によつて組立てられ右構成要件のすべてを具備する物が完成される場合において、部品を組立てて完成する業者が多数にのぼり、これに対して権利行使をすることが著しく困難なときや、右組立て、完成が最終の需要者によつて個人的、家庭的に行われるためこれに対して権利行使をすることが許されないときなどのように、特許権の効力が著しく減殺されることがあることに鑑み、特許法第一〇一条第一号は、特許発明に係る「物の生産にのみ使用する物」を業として生産、譲渡する等の行為に限り、特許権を侵害するものとみなし(いわゆる間接侵害)、特許権の効力を拡張して本来特許権の侵害とならない行為に対し
てまでもその権利行使を認めたもの
と解される。

右規定にいう特許発明に係る「物の生産にのみ使用する物」の意義は、右規定の適用範囲が不
当に広くならないよう、厳格に解釈すべきものといわなければならない。
してみれば、対象物件が特許発明に係る物の生産に使用する以外の用途を有するときは、右規定の適用のないこともちろんであるが、一方、およそあらゆる物について特定の用途以外の用途に使用される抽象的ないしは試験的な可能性が存しないとはいい難く、かかる可能性さえあれば右規定の適用がないということになれば、右規定が設けられた趣旨が没却されることになりかねないことに徴すれば、右「特許発明に係る物の生産に使用する以外の用途」は、右のような抽象的ないしは試験的な使用の可能性では足らず、社会通念上経済的、商業的ないしは実用的であると認められる用途であることを要するというべきである。

のみ品を逃れるためには、実験とかに使ってますだけじゃ不十分ってことだね~

間接侵害②

概要

間接侵害は構成要件の一部を充足した実施によって、特許権侵害の予備的行為を行うことであり、特許法第101条第1号から第6号に規定されています。

第2号は特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く)であってその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であることおよびその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等もしくは輸入または譲渡等の申出をする行為を間接侵害と規定しております。

下記判例には課題の解決に不可欠なものの要件が表されています。

判決を覚える必要はないけど、なぜ間接侵害が規定されているのか、課題の解決に不可欠なものとは何かぐらいは抑えておこう

内容(以下判決文の抜粋になります。平成14(ワ)6035、昭和16-4-23)

①特許法101条は,いわゆる間接侵害を規定したもので,明細書の特許請求の範囲に記載された事項の全部を実施する行為に当たらないため,特許権を直接に侵害するとはいえない行為であっても,直接侵害の予備的行為や幇助行為のうち直接侵害を誘発する蓋然性が極めて高い一定の行為を,特許権の侵害とみなすものである。

②平成14年改正により,従前の特許法101条1号,2号については若干の表現上の修正が加えられて同条1号,3号とされ,新たに同条2号及び4号が設けられた。新たに設けられた同条2号及び4号においては,間接侵害の成立要件から,従前の同条において要するものとされていた(そして改正後の同条1号及び3号では要件として規定されている)「~にのみ用いる」という要件を外した代わりに,その物が「発明による課題の解決に不可欠なもの」であるという客観的要件と,部品等の供給者自身が「その発明が特許発明であること,及びその物がその発明の実施に用いられることを知っていることの主観的要件を規定している。同条2号及び4号における「発明による課題の解決に不可欠なもの」という客観的要件は,「~にのみ用いる」という専用品の要件を外したことにより,間接侵害規定が特許権の効力の不当な拡張とならないよう,間接侵害規定の対象物を「発明」という観点から見て重要な部品等に限定するために設けられたものと説明されている。

③したがって,この「発明による課題の解決に不可欠なもの」とは,特許請求の範囲に記載された発明の構成要素(発明特定事項)とは異なる概念であり,当該発明の構成要素以外の物であっても,物の生産や方法の使用に用いられる道具,原料なども含まれ得るが,他方,特許請求の範囲に記載された発明の構成要素であっても,その発明が解決しようとする課題とは無関係に従来から必要とされていたものは,「発明による課題の解決に不可欠なもの」には当たらない。すなわち,それを用いることにより初めて「発明の解決しようとする課題」が解決されるような部品,道具,原料等が「発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当するものというべきである。これを言い換えれば,従来技術の問題点を解決するための方法として,当該発明が新たに開示する,従来技術に見られない特徴的技術手段について,当該手段を特徴付けている特有の構成ないし成分を直接もたらす,特徴的な部材,原料,道具等が,これに該当するものと解するのが相当である。したがって,特許請求の範囲に記載された部材,成分等であっても,課題解決のために当該発明が新たに開示する特徴的技術手段を直接形成するものに当たらないものは,「発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当するものではない。

従来から必要とされていたものは、「発明による課題の解決に不可欠なもの」に当たらないということだね。発明が新たに開示する部分が「発明による課題の解決に不可欠なもの」じゃないといけないということだよ。

最後に

弁理士試験、知財実務に役立つ判例編判例編⑥~間接侵害~について本日は解説いたしました。

いかがだったでしょうか?

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