企業知財部の仕事内容はどんな感じ?企業内弁理士がお答えします。

知財業務全般

この記事は、令和3年度に1年10万円以下で弁理士試験に合格した現役企業内弁理士が実体験を元に書いています。

知財部員の仕事気になるけど、なかなか周りにいないですよね?知財部の仕事内容、そしてどんな人が向いているのか解説していきます。

知財部の仕事はどんな仕事内容?

発明発掘活動~出願依頼

開発部署と共に発明発掘活動を行います。もちろん発明を発掘するのは開発の担当部署の方ですが、従来事例の調査や、特許の新規性、進歩性があるかの判断やクレーム作成をサポートします。

大体部署ごとや知財部の担当者ごとに1年間の出願件数の目標が掲げられているので、1年間でその目標に向けて計画的に活動をしていきます。

発明の理解が必要とされるので、理系のバックグラウンドが生きるところです。

大体年間一人当たり20~50件の出願目標があります。

また、明細書作成を特許事務所に依頼した後出来上がった明細書がちゃんと意図通り作成できているか確認するのも企業知財部の仕事です。

企業の権利活用の観点でどうすれば広い権利、有効な権利になるかを検討して修正があれば特許事務所に対して修正依頼を行います。

発明者の中には良いアイデアを持っていても、特許出願したことが無い人がいるので、知財部の腕の見せ所だね。

中間処理

中間処理と言われても聞き慣れないですよね。特許庁に出願してから、それが拒絶理由通知として帰ってくることがあります。そういった時に、補正書や意見書によって対応して拒絶理由を克服するのですが、その際の対応方針を決めるのは企業知財部です。

特許権を取得、維持するのにはお金がかかるので、権利取得によって、どれくらいの価値があるかを自社の製品や他社の製品の状況を見ながら総合的に判断していきます。

特許事務所にお金を払って、ある程度の対処案を考えてもらっていてそれを参考にしながら検討をしていきます。

大体月に10~20件くらい処理しています。

特許の範囲と特許取得にかかる費用などを鑑みて時には、放棄したりすることもあるよ。

特許侵害調査

自社の保有する権利に対して他社の製品が侵害していないか調査を行います。

調査を行った結果、侵害している場合は他社に対して訴訟。。。とは日本の場合はならず、まずはメールなどでの他社警告から始まります。

侵害に対して否認されて平行線をたどったり、お互いの侵害をクロスライセンスとして解消したりといったことも多いです。(クロスライセンス:お互いに特許侵害を認めて、侵害同士を相殺するもしくは差額をどちらかが払う行為を言います。)

反対に相手側から侵害訴訟や侵害に対する警告をされて、それに対応する業務も発生します。

結構アメリカでは訴訟を頻繁に起こすので、企業でもアメリカの拠点に訴訟を起こされて日本の知財部が対応するときもあるよ。

知財部員は何人くらいいるの?そのうち弁理士資格を持っている人は?

出願件数や会社の大きさにもよりますが、私の体感だと出願20件に対して一人くらいのイメージです。

例えば1000件出願している会社だと50人くらいいる印象です。

小さい会社だと一人ひとりの技術範囲は狭い一方、大きな会社だと分野ごとに細かく担当が分かれる傾向にあります。

弁理士資格を持っている人は意外にも少ないです。10人に1人から多くて5人に1人くらいですね。なので弁理士資格を取ると会社の中で一目置かれることは間違いなく、昇進にも有利に働くこともあります。

企業知財部の業務と特許事務所の業務の違い

企業知財部の仕事は、特許事務所に比べて扱う件数がかなり多いです。

なので、特許事務所の業務は、1件、1件に対してしっかり時間をかけて丁寧に仕上げるのに対し、企業知財部の業務は『素早く理解して、素早く対応策を考えて処理する』といったのがポイントです。

実際の企業知財部と特許事務所の関わり方は、下記をご参照ください。

最初は、案件を覚えて処理して、すぐ忘れてまた次の案件に取り組むのに慣れるのが大変だったよ。

知財部の仕事のメリット、デメリット

メリット
  • 多くの案件について触れることができるので、技術的な知識を得られます。
  • 無駄な会議が少なく、自分の仕事に集中できる。
  • 自分のスケジュールに合わせて業務時間を好きに決められる。
  • 在宅も多い。
デメリット
  • 黙々と仕事をするのが嫌いな人にはちょっと辛いかも。。。

知財部員1日のスケジュール例

9:00 業務開始

特に毎日その日の業務について上司と相談する場は特にありません。自分でその日にやるべきことを決めます。(30分くらい)

9:30~12:00 中間処理を2件

特許事務所の作成した対処案や拒絶理由書、引例文献を見ながら、どのような補正の方針をするか検討をします。

12:00~13:00 昼休み
13:00~14:00 発明相談

発明者との打ち合わせをして、発明者から新しい発明の相談を受けます。

発明内容を理解して、発明ストーリーの整理、新規性があるかどうかの判断や発明の深堀を行います。

最後に今後のアクションを整理します。

14:00~15:00 中間処理案件を上司へ説明

午前検討した中間処理案件を上司へ打ち合わせの中で説明します。

説明して、方針に問題が無ければそのまま特許事務所に依頼をします。FBがあれば、再検討修正を行います。

15:00~15:30 中間処理指示を事務所に依頼

システムを使って、先ほどの中間指示を事務所に依頼します。

15:30~17:00 特許事務所に出願発明の内容説明

打ち合わせの中で、発明者と一緒に特許事務所に出願発明の内容について説明します。

発明の詳細については、基本的に発明者から出願のクレームや明細書の構成については知財部担当者から説明します。

17:00~18:00 発明内容の従来事例について調査

本日相談された発明内容の従来事例について調査をします。

18:00 業務終了

この日は打ち合わせが多かったイメージだね。

会議が一日中無くて、ひたすら中間処理とか発明相談の従来事例の検索をしている場合もあるよ~

いかがだったでしょうか?ぜひ企業知財部に異動してみましょう!!

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