弁理士試験は独学で合格可能?~一発合格の現役弁理士が解説いたします~

弁理士試験~勉強方法全般~

この記事は、令和3年度に約10万円以下の費用、1年の学習期間で弁理士試験に合格した現役企業内弁理士の実体験に基づいて執筆しています。

「できるだけお金をかけずに弁理士試験に合格したい」という方も多いと思います。市販の通信講座や予備校に通うと、40万〜50万円以上が一般的。そうなると、まずは「独学で合格できないか」と考えるのは自然なことです。

本記事では、私自身の体験に基づき、

  • 独学合格の可能性
  • 独学に向いている人の特徴
  • 注意すべきポイント
  • 独学に必要な教材と費用
  • おすすめ参考書の紹介

を詳しく解説します。独学での合格を本気で目指す方は、ぜひ最後までご覧ください。

  1. そもそも弁理士とは?
    1. 弁理士の主な業務
    2. 弁理士になるには?必要なステップをわかりやすく解説
      1. ① 弁理士試験に合格すること(短答式・論文式・口述式)
      2. ② 実務修習の修了(修了試験あり)
      3. ③ 特許庁への登録申請
  2. 弁理士試験に独学で合格することは可能か?
    1. 結論:可能だがハードルは高い。短期合格は非常に困難。
    2. 独学が難しい理由
  3. 独学に向いている人の特徴
    1. ① 過去に長期学習の成功体験がある人
    2. ② 普段から学習・習慣化ができている人
    3. ③ 情報収集力が高い人
  4. 独学合格を目指す人が気を付けるべきポイント
    1. 1. 学習スケジュール・費用を事前に設計する
    2. 2. 投げ出さないための仕組みを作る
  5. 弁理士試験を独学で突破するメリット・デメリット
    1. 独学のメリット:コスパ最強&自分のペースで学べる自由さ
    2. 独学のデメリット:孤独・情報不足との闘い
    3. まとめ:独学は「コスパ重視」「自律型」な人におすすめ
  6. 弁理士試験の勉強スケジュールの立て方【1〜2年目別】
    1. 【1年目】基礎固め+短答試験に集中
      1. 勉強時間の目安:月100〜150時間/年間1200〜1500時間
    2. 【2年目】論文式試験・口述式試験へのシフト
      1. 勉強時間の目安:年間1000〜1200時間(特に論文期は集中)
    3. スケジュール管理のコツ:逆算&記録
  7. 独学で弁理士試験を受ける場合の費用は?
  8. 独学におすすめの参考書と教材
    1. メインテキスト:弁理士試験 エレメンツシリーズ
    2. 法文集
      1. ① 四法横断法文集(TAC出版)
      2. ② 知的財産権法文集(PATECH出版)
    3. 短答試験用問題集
      1. 体系別短答過去問(東京リーガルマインド)
    4. 論文試験用問題集
      1. 論文式試験 過去問題集(早稲田経営出版)
    5. 口述試験用問題集
      1. 口述試験バイブル
  9. 独学での弁理士試験合格のための勉強法
    1. ① 基礎力の養成:法律の全体像をつかむ
    2. ② 短答試験対策:問題演習+法文への書き込み
    3. ③ 論文試験対策:独学最大の壁
    4. ④ 口述試験対策:ここまで来れば差は小さい
  10. 【通信講座との比較】独学 vs Studying
    1. 独学のコスト:圧倒的な安さ(1〜2万円)
    2. 通信講座(Studying)のコスパ:1年で合格も可能

そもそも弁理士とは?

弁理士とは、特許・実用新案・意匠・商標などの知的財産権に関する業務を行う国家資格者です。

弁理士の主な業務

  • 特許庁に対する出願手続の代理(特許・意匠・商標など)
  • 拒絶理由通知に対する意見書作成などの中間処理
  • 知財権のライセンス契約交渉
  • 知的財産に関する訴訟の代理(※付記弁理士に限る)

これらは弁理士の独占業務であり、法律的な専門知識が求められます。

企業知財部の業務についてはこちらの記事をご参照ください。

弁理士になるには?必要なステップをわかりやすく解説

弁理士になるためには、以下の3つのステップをすべてクリアする必要があります。それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。

① 弁理士試験に合格すること(短答式・論文式・口述式)

まずは、年に一度実施される国家試験「弁理士試験」に合格することが必要です。試験は次の3段階で構成されています:

  • 短答式試験(マークシート):知的財産に関する法律知識を幅広く問う形式。特許法・実用新案法・意匠法・商標法・条約などが対象です。
  • 論文式試験(記述式):事例問題に対して、法律知識をもとに論理的に記述する力が求められます。選択科目もあり、理系の専門性も試されます。
  • 口述式試験(面接形式):法律知識に加え、実務上の判断力やコミュニケーション力を確認される試験です。

これらをすべて合格して、初めて「弁理士試験合格者」となります。

② 実務修習の修了(修了試験あり)

弁理士試験に合格した後は、「実務修習」と呼ばれる法定研修を受ける必要があります。
この研修では、実際の弁理士業務(特許明細書の作成や中間対応など)を模擬的に体験し、弁理士としての実務力を身につけます。

  • 修習期間:約6か月
  • 修習方法:eラーニング・集合研修など
  • 最後に「修了考査(筆記試験)」があり、合格が必要です。

③ 特許庁への登録申請

実務修習を修了すると、特許庁に「弁理士登録申請」を行うことができます。登録が完了すると、正式に「弁理士」として名簿に記載され、業務を行う資格が与えられます。

登録には、次のような費用や書類が必要です:

  • 登録免許税
  • 日本弁理士会への入会金・年会費
  • 戸籍謄本などの添付書類

この3ステップをすべてクリアすることで、ようやく「弁理士」として活動することが可能になります。国家資格であるため、合格までの道のりは長いですが、合格後は専門性の高いプロフェッショナルとして活躍できるチャンスが広がります。

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法律の知識の無い人が勝手に出願業務とかしちゃうと企業も、特許庁も困っちゃうよね。

弁理士試験について詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。

弁理士試験に独学で合格することは可能か?

結論:可能だがハードルは高い。短期合格は非常に困難。

私の経験や周囲の合格者の話から言えることは、以下の通りです。

  • 独学合格は可能だが、効率が悪く難易度は高い
  • 独学合格者は多くの場合3年以上の学習期間をかけている
  • 1〜2年以内の短期合格を狙うなら通信講座の活用が圧倒的に有利

独学が難しいとされる主な理由は以下の通りです。

独学が難しい理由

  • 市販教材が少なく、体系的な学習が困難
  • 基礎的な条文理解に時間がかかる(動画講義がない)
  • 論文の書き方を誰にも教えてもらえない
  • 学習ペースが単調でモチベーションが維持しにくい
  • 試験傾向の変化に対応しづらい(情報不足)

逆に言えば、上記を工夫と覚悟で乗り越えられる人なら、独学合格も十分に現実的です。

独学に向いている人の特徴

独学合格に成功している人には、以下のような共通点があります。

① 過去に長期学習の成功体験がある人

  • 大学受験や難関資格試験の合格経験がある
  • 自分に合った学習スタイルを確立している

② 普段から学習・習慣化ができている人

  • 毎日の勉強や読書、筋トレなどを日常に組み込んでいる
  • 習慣化の力を信じている

※筆者も普段から英語学習や読書、筋トレの習慣があり、その時間をそのまま弁理士試験の勉強に置き換えました。

僕も普段から本読んだり、英語の勉強したり、筋トレしてたのでその時間を弁理士試験に宛てました。

③ 情報収集力が高い人

  • SNSやブログ、知恵袋などを活用して最新情報をキャッチアップできる
  • 市販書の選定や法改正への対応を自力でできる

こういったブログを見たりするのも情報収集の一つだね

独学合格を目指す人が気を付けるべきポイント

1. 学習スケジュール・費用を事前に設計する

  • 「何時間かけて、何年で合格するか」
  • 「どこまでお金をかけるか」

を明確に決めましょう。あいまいな目標設定ではズルズルと長期化し、最終的に通信講座の方が安上がりだった、という事態にもなりかねません。

2. 投げ出さないための仕組みを作る

  • 家族や友人に勉強中であることを伝える
  • SNSやブログで学習記録を公開する

など、「やらざるを得ない状況」を意図的に作ることが重要です。

弁理士試験を独学で突破するメリット・デメリット

独学のメリット:コスパ最強&自分のペースで学べる自由さ

弁理士試験を独学で目指す最大のメリットは、圧倒的なコストパフォーマンス自由度の高さです。

通信講座や予備校に通う場合、受講料だけでもかなりの金額がかかります。以下は代表的な通信講座の価格例です:

通信講座名受講料(初学者向けコース)特徴
スタディング約6万〜7万円(税込)圧倒的低価格。スマホ学習対応で社会人に人気
アガルート約25万円(税込)添削・講師フォローが充実。論文対策に強い
LEAGAL MIND(旧TAC)約35万円(税込)老舗予備校。通学+映像講義が選べる
資格スクエア約20〜30万円(税込)AI問題演習が特徴的。論文試験対応も手厚い

これに対し、独学で必要なのは主に市販の参考書・過去問集・法文集などです。すべてそろえても2〜3万円以内で十分対応可能です。さらに、時間の制約なく自分のペースで勉強できるため、働きながら、家事をしながら、といった隙間時間の活用が可能です。

独学のデメリット:孤独・情報不足との闘い

一方、独学には注意すべきデメリットも存在します。特に以下の点に悩まされる受験生が多くいます:

  • 情報不足:法改正・試験傾向・出題のクセなど、最新情報を自力でキャッチアップし続けるのは大変です。通信講座では自動的に最新情報が反映される教材が届くのに対し、独学では逐一チェックが必要です。
  • 孤独感とモチベーション維持の難しさ:周囲に同じ目標を持つ仲間がいない場合、継続的にモチベーションを保つのが難しいことがあります。
  • アウトプット不足(特に論文対策):独学では、論文の添削やフィードバックを受ける機会が少なく、客観的評価を得にくいのが大きなネックです。

そのため、論文対策だけは通信講座を併用する、X(旧Twitter)などSNSで受験生とつながる、などの工夫が重要になります。

まとめ:独学は「コスパ重視」「自律型」な人におすすめ

独学での合格は決して不可能ではありません。事実、市販教材+過去問+戦略的なスケジュール管理で合格している受験生は毎年存在します。
費用を抑えたい方、自分のペースでじっくり学びたい方には、独学は非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。
ただし、情報収集とアウトプットの機会は意識的に確保する必要がある点には注意しましょう。

弁理士試験の勉強スケジュールの立て方【1〜2年目別】

弁理士試験は範囲が広く、長期戦になりがちな試験です。独学の場合はなおさら、計画的なスケジュール設計が合否を分ける重要なカギとなります。ここでは、1年目と2年目に分けたおすすめの学習スケジュールを紹介します。

【1年目】基礎固め+短答試験に集中

勉強時間の目安:月100〜150時間/年間1200〜1500時間

  • 4〜6月:基礎固め(インプット中心)
     → 各法域(特許・意匠・商標・条約)の条文・趣旨を読み、基礎的な理解を深める
     → スタンダードな参考書+逐条解説で、体系的に学習を進める
  • 7〜10月:短答過去問演習(アウトプット強化)
     → 本試験レベルの問題に挑戦しながら、弱点の洗い出しと復習をループ
  • 11〜翌年1月:法改正・予備校公開模試を活用
     → 情報整理と実戦形式に慣れておくことが重要
  • 2〜5月:短答集中対策期
     → 5肢択一対策に絞って集中的に演習。過去問+予想問題を何周も回す

【2年目】論文式試験・口述式試験へのシフト

勉強時間の目安:年間1000〜1200時間(特に論文期は集中)

  • 6〜8月:論文基礎+答案構成練習
     → 論文の「型(構成パターン)」を覚え、短時間で書けるように訓練
     → 書いた答案は、予備校の模範解答やSNSでフィードバックを得る
  • 9〜10月:実戦論文演習(時間内記述)
     → 本試験レベルの問題で、制限時間内で書く練習を徹底
  • 11月〜12月:口述対策スタート(短時間でもOK)
     → 法律用語を声に出して答える練習、口述模試の申し込みも忘れずに
  • 1月以降:場合によっては実務修習や登録手続きに向けた準備も

スケジュール管理のコツ:逆算&記録

  • 試験日から逆算して学習計画を立てる
  • 週ごとの進捗を記録し、遅れがあれば調整する
  • 無理のないペース(毎日2〜3時間)を目安に継続する

独学は自由度が高い分、スケジューリングの精度が重要になります。今回のスケジュールをベースに、自分の生活リズムや学習スタイルに合わせて調整してみてください。

独学で弁理士試験を受ける場合の費用は?

項目費用(税込)
メインテキスト約12,100円
法文集(2種)約9,700円
短答問題集約8,030円
論文問題集約7,150円
口述問題集約5,280円
論文模試約20,000円
合計約62,260円

※模試などオプションを含めれば最大10万円程度になる想定です。

私が受けていたStudyingの弁理士講座について知りたい方は下記をご参照ください。

【スタディング】受講者14万人突破!スマホで学べる人気のオンライン資格講座申込 (弁理士)

独学におすすめの参考書と教材

メインテキスト:弁理士試験 エレメンツシリーズ

  • 特許法・実用新案法編(4,620円)
  • 意匠法・商標法編(4,180円)
  • 条約編(3,300円)

体系的に学べる貴重な市販テキスト。独学者の必須教材です。

法文集

① 四法横断法文集(TAC出版)

  • 価格:5,500円程度
  • 特徴:4法(特・実・意・商)を比較しながら学べる
  • 短答試験対策に必須

② 知的財産権法文集(PATECH出版)

  • 価格:4,200円程度
  • 特徴:論文試験用。貸与法文集に近い構成
  • 模試時にも使用できる

短答試験用問題集

体系別短答過去問(東京リーガルマインド)

  • 価格:各4,950円、3,080円(2冊構成)
  • 特徴:過去10年分の過去問を体系別に網羅。絶対にやるべき教材。

論文試験用問題集

論文式試験 過去問題集(早稲田経営出版)

  • 価格:7,150円
  • 特徴:過去問中心の構成。演習量としてはやや不足気味だが基礎固めに最適。

口述試験用問題集

口述試験バイブル

  • 価格:5,280円
  • 特徴:本番形式の問答例と重要ポイントを網羅。これ一冊で十分。

独学での弁理士試験合格のための勉強法

弁理士試験を独学で乗り切るためには、戦略的な教材選びとスケジューリングが欠かせません。以下に、各試験段階ごとの勉強法と注意点を紹介します。

① 基礎力の養成:法律の全体像をつかむ

まずは「弁理士試験 エレメンツ」や「四法横断法文集(TAC弁理士講座)」を使って、試験で問われる法律の構造と趣旨を理解するところからスタートします。

ただし、このフェーズは 一切動画が無く、完全にテキストベースの学習 になるため、初学者にはやや苦しい部分でもあります。最低でも2〜3周は読み込みましょう。

この基礎力が全体の土台となるため、手を抜くと後の短答や論文で詰まってしまいます。

② 短答試験対策:問題演習+法文への書き込み

基礎が固まったら、「弁理士試験 体系別短答過去問(LEC)」を活用して問題演習に取り組みます。

問題を解きながら、 根拠となる条文を「四法横断法文集」にマーカーやメモで記録 していくのが効果的です。これは通信講座の受講者も行う一般的な方法であり、独学でも十分に対応可能です。

詳細な短答試験対策については、以下の記事をご参照ください。

③ 論文試験対策:独学最大の壁

論文試験は独学者にとって 最大の難関 です。理由は、「論文の型」や「法的思考の流れ」が非常に独特で、 解説を聞いたり、添削を受けたりしないと身につきにくい ためです。

独学での対策例は以下の通り:

  • 市販の論文問題を丸写しして形式に慣れる
  • メルカリなどで通信講座の論文教材を購入して自学
  • 知人に添削やフィードバックを依頼
  • 論文だけ通信講座を取る(コストを抑える手段)

つまり、論文対策においては 時間かお金、もしくはその両方の投資が必要不可欠 です。

より詳細な論文対策については以下をご参照ください。

④ 口述試験対策:ここまで来れば差は小さい

最終関門である口述試験では、「弁理士試験 口述試験バイブル」などを用いて音読やQ&A練習を中心に対策します。

独学でも、ここまで来た受験生は法律知識のベースがあるため、 通信講座との差はほぼなくなります。むしろ、実践形式での練習(友人とペア練習など)を重ねることが重要です。

【通信講座との比較】独学 vs Studying

独学のコスト:圧倒的な安さ(1〜2万円)

独学の最大のメリットは 費用が圧倒的に安い 点です。市販教材だけであれば、トータル1〜2万円程度に抑えることも可能です。時間に融通が利き、自分のペースで勉強できる自由さも魅力です。

ただし、論文でのつまずきや、情報不足、孤独感といった 「非効率なつまずき」が早期合格を妨げるリスク もあります。

通信講座(Studying)のコスパ:1年で合格も可能

一方、近年人気の Studying(スタディング) は、通信講座としては破格の料金(※短答+論文パックで7万円〜9万円程度)で、 基礎から口述まで一貫してサポート があります。

実際、Studyingを使って1年で合格した例も出ており、 独学で2年かけて迷うより、通信講座で一気に駆け抜ける方が合理的 という考えもあります。

私が受けていたStudyingの弁理士講座について知りたい方は下記をご参照ください。

【スタディング】受講者14万人突破!スマホで学べる人気のオンライン資格講座申込 (弁理士)

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