この記事は、令和3年度に1年10万円以下で弁理士試験に合格した現役企業内弁理士が実体験を元に書いています。
弁理士試験を受けようと思っているけど、実際に特許の発明から権利化までの流れがわからない。。。僕もかつてそうでした。弁理士試験の中でも法律が出てくるけど、実際の業務までは分からないですよね。このページでばっちり解説します。
業務全体の大まかな流れ
業務フローを上にまとめました。大まかに言うとこのような流れになります。以下でそれぞれを少し詳細に解説していきます。
企業内の発明発掘活動
知財部担当者が企業内の開発部署や研究部署の担当者と協力して、発明の発掘活動を行います。会社全体で1000件など目標が掲げられていて、それに合わせて部署ごとに件数の目標が定められています。
開発部署や研究部署の方は知財の分野の知識が少ない方も多いので知財部担当者がサポートします。
具体的には、下記のサポートを行います。
- 先行文献の検索
- 発明内容の深堀り
- 権利範囲の上位概念化
- クレームの作成
知財部担当者のアドバイスで広い権利が取れたりするので、そういったところが腕の見せ所だね!
たまに知財部担当者の貢献度が大きいときは、共同発明者になってたりするよね。
企業から特許事務所への出願依頼
企業から特許事務所へ出願依頼を行います。こちらは、システム上で行われることが多く、その際に発明についての詳細な資料が企業から特許事務所へ送られます。
ただ、資料だけだと分からないので、大抵は発明者、知財部担当者、特許事務所担当者の3者で内容の説明のための打ち合わせを行います。(1時間~2時間)
特許事務所での明細書作成
特許事務所の業務の中心となるのがこの出願業務(明細書作成業務)になります。大体企業からの納品の期限は1か月~2か月が多いですね。
1件当たりの作業時間は人によりますが、早い人だと丸々2日、業務に慣れてない人だと1週間近くかかります。作成した出願書類は企業に送られます。
特許事務所で仕事のできる人の給与が1000万円以上いく理由はこの作業時間が早いって事なんだね。
企業知財部での明細書のチェック
特許事務所から送られてきた出願書類のチェックを行います。企業として取りたい特許の範囲やそれが明細書の実施例でカバーされているかをチェックし、修正してほしい点があれば特許事務所に再度修正依頼をします。
特許事務所担当者の方が出願書類作成のスペシャリストだけど、企業戦略として判断できるのは企業の知財部なんだね。
特許事務所で出願処理
上記企業側の修正を含めた出願書類を特許庁に提出します。
実際の提出作業は事務員が行うことが多いです。
特許庁から拒絶理由通知
出願した特許がそのまま登録されることは、めったに無いです。
拒絶理由通知という書類が特許庁から届きます。拒絶理由の内容は以下のようなものがあります。
- 新規性違反
- 進歩性違反
- 明細書の不備(実施可能要件違反、明確性要件違反など)
特許事務所で対処案の作成、提案
これは企業と特許事務所の契約によりますが、拒絶理由に対する対処案を特許事務所側から作成して提案するという形が多いです。
できるだけ特許請求の範囲が小さくならないような強気の補正案と安全に権利を確保する補正案の2つを提案してもらいます。
対処案には、補正案だけでなく引用文献の解説や審査官のロジックの解説なども含まれているのですごく参考にしています。
企業内で対処案の最終決定、指示
特許事務所の対処案の提案をもとに、最終的にどのように対応するか決めて、特許事務所に対応の依頼をします。対応内容としては以下があります。
- 補正
- 意見書による反論
- 放棄
当初考えてた広い範囲での権利化が厳しいときは、お金を無駄にしないために放棄という選択をする場合もあるよ!
特許事務所で補正書、意見書による応答処理
企業から指示のあった応答書(補正書もしくは意見書)を特許庁に対して提出します。
拒絶理由通知から応答までの期限が決まっているので、ここの期限管理をするのも特許事務所の仕事の一つです。
もちろん企業側でも期限管理は行っているよ!
特許庁で登録査定
特許庁から登録査定されます。実際は、一度の補正で解消しない場合もたくさんあります。。。
こののち、登録料納付を行います。
最後に
ここまでいかがだったでしょうか。本日は発明発掘から特許が登録されるまでを解説いたしました。
私が弁理士試験にかけたコストや時間及びおすすめの講座についてはこちらにまとめていますのでご参照ください。
coffee
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