【弁理士試験 判例解説】均等論・特許権の消尽・BBS事件を徹底攻略!~具体例と試験対策まで~

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こんにちは、令和3年度に1年・10万円以下で弁理士試験に合格した現役企業内弁理士の〇〇です。今回は、弁理士試験の重要論点のひとつである判例問題の中から、「均等論(ボールスプライン事件)」「特許権の消尽」「並行輸入品の特許権消尽(BBS事件)」を徹底解説します。

これらの判例は試験頻出だけでなく、実務でも頻繁に登場します。判例を単なる暗記で終わらせず、背景や趣旨、具体例、実務での意味合いまで理解することで、論文試験や口述試験、さらには実務でも差をつけられます。

【1】均等論(ボールスプライン事件)

◆ 概要

「ボールスプライン軸受け事件」(最判平成10年2月24日)は、日本の特許法上の均等論を確立した記念碑的判例です。

均等論とは、特許請求の範囲に記載されていない構成が、特許発明の技術的範囲に属するかを判断する考え方。つまり、表面的に構成が異なっても、実質的に同じなら特許侵害と認める理論です。

◆ 事件の経緯

  • イ号製品(被告製品)は、特許発明と一部構造が異なっていた。
  • 高裁は非侵害と判断。
  • 最高裁はこれを破棄し、「均等論」の5要件を示し、事件を差戻し。

◆ 均等論の5要件

  1. 相違部分が発明の本質的部分でないこと
    → 発明の核心ではない部分の違いは問題にならない。
  2. 置換しても発明の目的を達成し、同一の作用効果を奏すること
    → 別の部品に変えても同じ性能・効果が得られるか。
  3. 置換が当業者にとって容易に想到できたこと
    → 普通の技術者なら考えつく範囲か。
  4. 置換部分が出願時の公知技術ではない、または公知技術から容易に推考できないこと
    → 公知技術の寄せ集めでは特許の範囲に入らない。
  5. 出願手続で除外された部分でないこと(特段の事情がないこと)
    → 出願の過程であえて外した範囲は後から含められない。

受験生にとってはマストで覚えなきゃいけない項目だね。

趣旨とセットで覚えると覚えやすいよ。

◆ 趣旨

最高裁は次の趣旨を述べました。

  • 出願時に全ての侵害態様を予想するのは困難。
  • 技術の進歩により、当初の構成を一部置換しても本質が同じなら保護されるべき。
  • 公知技術や除外部分は除外しないと社会正義・衡平に反する。

◆ 具体例・試験の出題パターン

例:
特許発明は「A+B+C」という構成。イ号製品は「A+B’+C」。
BとB’が本質的部分でなく、置換しても作用効果が同じなら侵害。

試験では、以下のような問われ方をされます。

  • 均等論の5要件を簡潔に説明せよ。
  • 均等論の要件を充足するか具体例で論じよ。
  • 均等論の趣旨・目的を述べよ。

対策:
「要件+趣旨+具体例」のセットで暗記し、口述対策では要件を順に説明できるよう練習する。

弁理士論文試験の「法の概要・趣旨問題」対策法についてはこちらで詳しく解説しています。

【2】特許権の消尽

◆ 概要

特許権の消尽とは、一度特許権者が適法に販売した製品については、その後の譲渡・使用に特許権を主張できないという原則です。

◆ BBS事件の前提となる考え方

BBS事件以前から国内取引では「消尽説」が定着していました。

例:特許製品AをX社から買ったY社が、それをZ社に転売。
このZ社への転売はX社の特許権を侵害しない。

趣旨:

  • 特許製品の自由流通の確保。
  • 特許権者の二重利得を防止。

【3】並行輸入品の特許権消尽(BBS事件)

◆ 概要と経緯

  • BBS社はドイツと日本で自動車用アルミホイールの特許を保有。
  • BBS社がドイツで販売した製品を並行輸入業者が日本に輸入・販売。
  • BBS社が日本特許権を根拠に差止・損害賠償を請求。
  • 裁判所は請求を棄却。

◆ 最高裁の判断

国外譲渡品の消尽は原則認めない。ただし例外あり。

  • 例外:
    特許権者が輸出時に「日本を除外する」という合意をせず、かつその旨を明示しなかった場合は、暗黙に日本国内流通を許諾したとみなされる。

理由:

  • 対応特許権は必ずしも各国で取得されているとは限らない。
  • 国際商取引は広範囲・高度化しており、並行輸入の可能性は予見可能。
  • 権利行使を制限しないと、自由流通を阻害し、消費者・市場に悪影響。

◆ 具体例・試験の出題パターン

例:

  • 日本特許を持つA社がアメリカで特許製品を売り、B社が日本に輸入。
    A社は日本特許権を主張できるか。

試験では以下が問われやすい。

  • BBS事件の結論を説明せよ。
  • 並行輸入品の消尽の要件・趣旨を述べよ。
  • 国際商取引の観点から論ぜよ。

対策:
「原則消尽しない+例外的に黙示の許諾を認める」構造を押さえる。

【4】試験対策のポイント

  • 判例は単に覚えるのではなく、要件・趣旨・具体例・結論の流れで整理。
  • 論文では要件を端的に説明し、具体例で論証。
  • 口述では趣旨・結論を説明できるように練習。

おすすめ勉強法:

  • 判例カードを作成(片面:事件名、もう片面:要件・趣旨・例)。
  • 短答過去問で関連問題を解く。
  • 模試・演習で判例論述の練習。

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【5】実務での意義

  • 均等論は特許侵害の判断に日常的に使われる。
  • 消尽・BBS事件は製造業・流通業の契約・輸出入管理に影響。
  • 知財部・法務部では知っていて当然の知識。

知財業務全般については下記で解説をしています。

【6】よくある質問(FAQ)

Q1. 均等論(ボールスプライン事件)は短答式試験、論文式試験、口述試験のどれで出題されやすいですか?

A1. 均等論は、短答式・論文式・口述式のいずれでも頻出です。特に短答では要件を問う形で、論文では事例に当てはめる形で、口述では簡単な要件確認や趣旨説明を求められやすいので、丸暗記ではなく本質を理解しておくことが重要です。

Q2. BBS事件の「特許権の消尽」と「並行輸入品の特許権消尽」はどう違いますか?

A2. 基本的な「特許権の消尽」は、国内で特許権者が適法に譲渡した製品が自由流通することで、以後の譲渡等には特許権が及ばないという考えです。一方、BBS事件は国外譲渡品(並行輸入品)についての消尽を問題にしており、「国外譲渡時に特許権者が日本国内での使用を制限しなかった場合、黙示的に国内での使用を許したと解釈される」という重要なルールを示しました。

Q3. BBS事件は論文式試験ではどのように問われますか?

A3. 論文式試験では、並行輸入品の特許権消尽に関する事例問題が出される可能性があります。論点整理(消尽の有無、黙示許諾の成立要件など)をしっかり行い、趣旨や社会的背景(流通の自由、二重利得の回避など)まで書けると高得点が狙えます。

Q4. 判例の趣旨はどこまで覚えるべきですか?

A4. 趣旨部分は、短答では選択肢の正誤判断、論文では説得力ある答案作成に不可欠です。判決文そのものを丸暗記する必要はありませんが、「なぜその結論になるのか」「その背後にどんな社会的・制度的理由があるのか」を自分の言葉で説明できるようにすることをおすすめします。

Q5. 均等論・BBS事件に関する具体例は覚えておくべきですか?

A5. はい、具体例は非常に重要です。例えば、均等論では「部材を別の材質に置き換えても同じ効果がある場合」、BBS事件では「ドイツで買ったホイールを日本に持ち込んで売った場合」など、典型例を頭に入れておくと、事例問題や口述試験で素早く思い出せます。

Q6. 試験対策として判例集は何を使えばよいですか?

A6. 定評のあるものとしては『弁理士試験 判例マスター』『知財判例百選』があります。受験予備校のテキストや講座付属資料も非常に有用です。判例集だけでなく、講義動画や要件整理ノートと併用すると理解が深まります。

【まとめ】

今回解説した判例は、弁理士試験の判例問題の中でもトップクラスの重要度です。

判例名試験頻度実務重要度
均等論(ボールスプライン事件)
特許権の消尽
並行輸入品の特許権消尽(BBS事件)

単なる丸暗記ではなく、「要件・趣旨・具体例・結論」の4点を自分の言葉で説明できるように練習しましょう。

最後に

弁理士試験、知財実務に役立つ判例編①~均等論、特許権の消尽、並行輸入品の特許権消尽について本日は解説いたしました。

他にも弁理士試験の勉強方法、知財部で仕事内容に解説していますので、ぜひご覧ください。

私が弁理士試験にかけたコストや時間及びおすすめの講座についてはこちらにまとめていますのでご参照ください。

知財関係の転職をご検討中の方はこちらをご参照ください。

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