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10万円弁理士coffee|令和3年度弁理士試験に1年・総費用10万円以下で一発合格した現役の企業内弁理士。メーカー開発職→知財部→外資系IT企業。実体験と一次データに基づいて執筆しています。 → 詳しいプロフィール
キルビー事件・オリンパス事件(職務発明)・プラバスタチンナトリウム事件(PBPクレーム)・医療行為の特許適格性・発明の反復可能性・冒認出願——弁理士試験で頻出のこの6判例を、判決原文つきで一気に押さえられるようにまとめました。気になる判例から読んでもOKです。
この記事では、弁理士試験(短答・論文・口述)で繰り返し問われる特許法の重要判例6件を、判決原文の引用つきで解説します。執筆者は令和3年度に1年・総費用10万円以下で一発合格した現役の企業内弁理士です。私が受験時代に実際に使っていた「覚え方」もあわせて公開します。
| 判例 | 判決・出典 | 争点 | 結論ひとこと |
|---|---|---|---|
| キルビー事件 | 最高裁三小 平成12年4月11日(民集54巻4号1368頁) | 無効理由が明白な特許権を行使できるか | 権利濫用で行使不可 → 特104条の3へ立法化 |
| オリンパス事件 | 最高裁三小 平成15年4月22日(民集57巻4号477頁) | 職務発明の「相当の対価」に会社規程は絶対か | 規程額が不足なら差額を請求できる |
| プラバスタチンナトリウム事件 | 最高裁二小 平成27年6月5日(平成24年(受)1204号ほか) | PBPクレームの範囲と明確性 | 物同一で判断。製法記載は「不可能・非実際的事情」がある場合のみ |
| 外科手術の光学的表示方法事件 | 東京高裁 平成14年4月11日 | 医療行為は特許を受けられるか | 人を手術・治療する方法は「産業上利用できる発明」に当たらない |
| 黄桃の育種増殖法事件 | 最高裁三小 平成12年2月29日(民集54巻2号709頁) | 育種方法に反復可能性は必要か | 再現可能なら足り、確率が高いことは不要 |
| 生ゴミ処理装置事件 | 最高裁三小 平成13年6月12日(民集55巻4号793頁) | 冒認された真の権利者は特許権を取り戻せるか | (当時)移転請求は否定 → 平成23年改正の特74条で立法解決 |
⚖ 1. キルビー事件(最高裁 平成12年4月11日)|無効の抗弁の原点
◆ 背景と事案
半導体集積回路の基本特許(TI社の「キルビー特許」に基づく分割出願に係る特許)をめぐり、特許権者が富士通に権利行使した事件です。当時は「特許を無効にできるのは特許庁の無効審判だけ。裁判所は侵害訴訟で特許の有効性を判断できない」という建前があり、明らかに無効な特許でも、無効審決が確定するまでは侵害訴訟で争えないという不合理がありました。
◆ 判旨(原文)
「審理の結果、当該特許に無効理由が存在することが明らかであるときは、その特許権に基づく差止め、損害賠償等の請求は、特段の事情がない限り、権利の濫用に当たり許されないと解するのが相当である。」
最高裁第三小法廷 平成12年4月11日判決 民集54巻4号1368頁
◆ 試験ポイントと覚え方
この判決を受けて平成16年改正で特許法104条の3(特許権者等の権利行使の制限)が新設され、現在は条文上、侵害訴訟の中で無効の抗弁を主張できます。試験では「キルビー事件(権利濫用)→104条の3(立法化)」という流れそのものが問われます。私は「キルビーは104条の3のお父さん」と一言で覚えていました。条文と判例を紐付けて覚えると、短答でも論文でも迷いません。
⚖ 2. オリンパス事件(最高裁 平成15年4月22日)|職務発明の「相当の対価」
◆ 背景と事案
従業員がビデオディスクのピックアップ装置に関する職務発明をし、会社は社内規程に基づき特許を受ける権利を承継、報奨金として支払われたのは合計約21万円でした。従業員は「発明の価値に見合わない」として差額を請求しました。争点は、会社が規程で定めた対価額に従業員は拘束されるのかです。
◆ 判旨(原文の要旨)
「勤務規則等により職務発明について特許を受ける権利等を使用者等に承継させた従業者等は、当該勤務規則等による対価の額が特許法35条の規定に従って定められる対価の額に満たないときは、その不足する額に相当する対価の支払を求めることができる。」
最高裁第三小法廷 平成15年4月22日判決 民集57巻4号477頁(要旨)
◆ 試験ポイントと覚え方
「規程があっても、足りなければ差額請求できる」——これがこの判例の一言まとめです。同時期の青色LED事件(東京地裁が約604億円の対価を認定し、控訴審で約8.4億円で和解)と並び、企業を揺るがせた職務発明訴訟の代表例で、その後の平成16年・27年の35条改正(手続の合理性重視、「相当の利益」への変更)につながりました。試験では「判例→改正の流れ」がそのまま論点になります。
⚖ 3. プラバスタチンナトリウム事件(最高裁 平成27年6月5日)|PBPクレーム
◆ 背景と事案
「〜の方法により製造された物」という形式のクレーム(プロダクト・バイ・プロセス・クレーム)について、①その権利範囲は製法に限定されるのか物全体に及ぶのか、②そもそもそのようなクレームは明確といえるのか、が医薬品プラバスタチンナトリウムをめぐって争われました。
◆ 判旨のポイント
最高裁は、①発明の要旨・技術的範囲は「当該製造方法により製造された物と構造、特性等が同一である物」として捉える(物同一説)と判断しつつ、②明確性要件については、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが「不可能であるか、又はおよそ実際的でない」という事情が存在する場合に限って、製造方法による物の特定が許されるとしました(平成24年(受)第1204号・第2658号)。
◆ 試験ポイントと覚え方
私は「範囲は広く(物同一)、書くのは厳しく(不可能・非実際的)」と対で覚えていました。この「不可能・非実際的事情」という言い回しは特許庁の審査運用にもそのまま使われており、短答・論文・口述のどこで出ても答えられるようにしておくべき最重要フレーズです。
⚖ 4. 外科手術の光学的表示方法事件(東京高裁 平成14年4月11日)|医療行為と特許
◆ 背景と事案
人体の手術方法に関する発明が「産業上利用することができる発明」(特29条1項柱書)に当たるかが争われた事件です。
◆ 判旨のポイントと試験での使い方
東京高裁は、人間を手術・治療・診断する方法(医療行為)は「産業上利用することができる発明」に当たらないとの判断を示し、この考え方は現在の特許庁審査基準にも引き継がれています。ここで重要な整理は「方法はダメ、物はOK」——医療機器や医薬品そのものは特許対象です。短答の定番のひっかけなので、「医療『行為』だけが対象外」と正確に押さえてください。
⚖ 5. 黄桃の育種増殖法事件(最高裁 平成12年2月29日)|発明の反復可能性
◆ 背景と事案
新品種「黄桃」の育種増殖法が「自然法則を利用した技術的思想の創作」(特2条1項)といえるか——植物の育種は偶然に左右されるため、同じ結果を繰り返し得られる「反復可能性」があるのかが争われました。
◆ 判旨(原文)
「(育種過程における反復可能性は)科学的にその植物を再現することが当業者において可能であれば足り、その確率が高いことを要しないものと解するのが相当である。」
最高裁第三小法廷 平成12年2月29日判決 民集54巻2号709頁
◆ 試験ポイントと覚え方
「再現できれば確率は低くてもいい」——この一言に尽きます。反復可能性は出願当時にあれば足り、その後に親品種が所在不明になっても結論は変わらない、という点も付随論点として押さえておくと盤石です。
⚖ 6. 生ゴミ処理装置事件(最高裁 平成13年6月12日)|冒認出願と真の権利者の救済
◆ 背景と事案
発明者でない者が勝手に出願して特許権を取得した「冒認出願」に対し、真の権利者が「その特許権を自分に移転せよ」と請求できるかが争われました。
◆ 判旨のポイントと立法解決
最高裁は、当時の法律の下では真の権利者による特許権の移転登録請求を認めませんでした(民集55巻4号793頁)。冒認は無効理由(特123条1項6号)にはなるものの、「無効にできても取り戻せない」という救済の穴が残ったのです。この不都合を解消するため、平成23年改正で特許法74条(特許権の移転の特例)が新設され、現在は真の権利者が特許権の移転を請求できます。「判例が穴を示し、立法が塞いだ」——キルビー事件→104条の3と同じ構図で覚えると、2判例セットで整理できます。
💡 試験対策:6判例を貫く「覚え方」
私の受験時代の整理法は、判例を単体で覚えるのではなく「判例→条文」の矢印で覚えることでした。キルビー→104条の3、生ゴミ処理装置→74条、オリンパス→35条改正。判例は「なぜその条文が生まれたか」の物語として覚えると、論文の題意把握でも口述の深掘りでも崩れません。逆に、PBP・黄桃・医療行為のように判例の言い回し自体が規範になるもの(「不可能・非実際的事情」「確率が高いことを要しない」)は、キーフレーズを一言一句レベルで口に馴染ませておくのが最短です。
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まとめ
要点は3つです。①キルビー事件・生ゴミ処理装置事件は「判例が示した穴を立法(104条の3・74条)が塞いだ」ペアとして覚える。②PBP・黄桃・医療行為は判決のキーフレーズ(不可能・非実際的事情/確率が高いことを要しない/医療行為は産業上利用不可)をそのまま使えるようにする。③職務発明は「規程があっても不足分は請求できる」から35条改正の流れへ。判例は暗記物ではなく、条文の「なぜ」を教えてくれる最高の教材です。
判例と条文を最短で結びつける学習は、私が受験時代に使ったスタディングの講義構成が秀逸でした。詳しくは本音レビュー記事(実質8.5万円)をご参照ください。
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