この記事は、令和3年度に1年・10万円以下で弁理士試験に合格した現役企業内弁理士が、自身の受験経験をもとに執筆しています。
弁理士試験の受験勉強を始めてまず直面する壁。それは――
圧倒的な条文量と、その暗記の大変さ。
私自身、最初は「これは本当に覚えきれるのか…?」と不安になりました。
特に「不正競争防止法第2条」の1号から22号までは、条文の内容も長く、イメージもしにくいので記憶に残りづらいです。
そこで、今回は私が実際に使っていた語呂合わせ暗記法を全公開します。
✅ 本記事の対象:
- 不正競争防止法の条文が全然頭に入らない方
- 一つ一つの要件を覚える時間がない方
- 少しでも楽に暗記したい方
弁理士試験の短答式試験とは?特徴や出題科目をわかりやすく解説
弁理士試験の最初の関門となるのが、短答式試験(択一試験)です。マークシート方式で実施され、特許法、実用新案法、意匠法、商標法といった主要4法に加えて、不正競争防止法、著作権法、条約、一般知識なども出題対象となります。
この試験は、広範な知識と正確な条文理解が求められるため、多くの受験生にとって大きなハードルとなります。全体で50問が出題され、足切り制度もあるため、苦手分野を放置せず、まんべんなく対策することが合格のカギとなります。
弁理士試験について詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
不正競争防止法の短答対策は難しい?条文構造と出題傾向を押さえよう
短答式試験の中でも特に不正競争防止法は要注意科目です。条文の数自体は少ないものの、第2条第1項に規定される多数の「不正競争行為」の類型を正確に区別する必要があるため、学習難易度は高めです。
たとえば、「商品形態の模倣」「営業秘密の漏えい」「周知表示の混同惹起」「ドメイン名の不正取得」など、一見似ているようで微妙に異なる行為類型が条文の中に並列されています。そのため、「どれがどの号か」「どの行為が不正競争とみなされるか」を条文レベルで記憶することが必須です。
さらに、他の法律に比べて不正競争防止法は改正頻度が高く、実務対応を意識した条文設計になっているため、法的な理解も求められます。単純な暗記だけでは通用せず、「整理された知識」と「記憶の補助となる工夫」が必要なのです。
第2条第1項:語呂で一気に22号まで!
🔷 覚え方語呂
「こんちょもう、営みの技に限り制限するも、ド下品、巨大」
この語呂で、第2条第1項第1号~第22号までのキーワードを一気に押さえます。
番号 | キーワード | 内容要約 | 語呂対応 |
---|---|---|---|
1号 | 混同 | 周知表示の混同行為 | こん(混) |
2号 | 著名表示の不正使用 | 著名な表示のただ乗り | ちょ(著) |
3号 | 形態模倣 | 商品形態の模倣行為 | もう(模) |
4~9号 | 営業秘密 | 不正取得・使用・開示 | 営み(4~9共通) |
10号 | 技術上の秘密の使用物譲渡等 | 秘密使用物の譲渡等 | 技 |
11~16号 | 限定提供データ | 不正取得・使用・開示 | 限り(11~16共通) |
17・18号 | 技術的制限手段回避 | プログラム・装置など | 制限 |
19号 | ドメイン名 | 不正目的のドメイン保有 | ド |
20号 | 原産地・品質等誤認表示 | 誤認を与える表示行為 | 品 |
21号 | 虚偽事実の流布 | 他社の信用毀損 | 巨 |
22号 | 代理人商標問題 | パリ条約などに基づく保護 | 大(代理人) |
※「ちょっと下ネタっぽい語呂で申し訳ないですが(笑)、これは会社の友人が考えてくれた最強語呂です。」
🧠 イメージ暗記のコツ
- 各語呂の“頭文字”だけでも連想できれば十分。
- 表を自作ノートや単語カードに写すと記憶定着率UP!
- 語呂と実際の条文との対応表を並べて見比べることで、試験の「趣旨説明」対策にもなります。
実際の条文
第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
1号 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為(混同のこんですね。)
2号 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為(著名のちょですね。)
3号 他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為(模のもうですね。)
4号~9号 窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(以下「営業秘密不正取得行為」という。)又は営業秘密不正取得行為により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為(秘密を保持しつつ特定の者に示すことを含む。次号から第九号まで、第十九条第一項第六号、第二十一条及び附則第四条第一号において同じ。)(営業の営みですね。5~9号も同じ)
10号 第四号から前号までに掲げる行為(技術上の秘密(営業秘密のうち、技術上の情報であるものをいう。以下同じ。)を使用する行為に限る。以下この号において「不正使用行為」という。)により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為(当該物を譲り受けた者(その譲り受けた時に当該物が不正使用行為により生じた物であることを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)が当該物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為を除く。)(技術の技ですね。)
11号~16号 窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により限定提供データを取得する行為(以下「限定提供データ不正取得行為」という。)又は限定提供データ不正取得行為により取得した限定提供データを使用し、若しくは開示する行為(限定提供データの限りですね12~16号も同じ)
17号、18号 営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)に記録されたものに限る。以下この号、次号及び第八項において同じ。)の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録をさせないために用いているものを除く。)により制限されている影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)、当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)若しくは指令符号(電子計算機に対する指令であって、当該指令のみによって一の結果を得ることができるものをいう。次号において同じ。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、若しくは当該機能を有するプログラム若しくは指令符号を電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)又は影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする役務を提供する行為(技術的制限手段の制限ですね。18号も同じ)
19号 不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為(ドメイン名のドですね)
20号 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為(品質の品ですね。)
21号 競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為(虚偽の巨ですね。)
22号 パリ条約(商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第四条第一項第二号に規定するパリ条約をいう。)の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。以下この号において単に「権利」という。)を有する者の代理人若しくは代表者又はその行為の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者が、正当な理由がないのに、その権利を有する者の承諾を得ないでその権利に係る商標と同一若しくは類似の商標をその権利に係る商品若しくは役務と同一若しくは類似の商品若しくは役務に使用し、又は当該商標を使用したその権利に係る商品と同一若しくは類似の商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは当該商標を使用してその権利に係る役務と同一若しくは類似の役務を提供する行為(代理人の大ですね。)
第5条:損害額の推定条文も語呂で攻略!
不正競争防止法第5条も試験頻出条文です。特に損害額の算定に関する規定は論文対策・実務的視点の両方から重要です。
🔷 覚え方語呂
「損害の額と推定できなあい」
「なあい」の部分がミソで、以下の号には推定が適用されないことを覚えられます。
🔸 推定される範囲とされない範囲
適用有無 | 対象号 | 備考 |
---|---|---|
推定適用あり | 第1号~第16号、22号 | 主に混同・著名表示・営業秘密・限定提供データ関連等 |
推定適用なし | 第17号~第21号 | 技術的制限手段・ドメイン・誤認・信用毀損関連 |
語呂「なあい」で17(な)・18(あ)・19(あ)・20(い)・21(い)号は対象外!と覚えます。
条文
第五条 第二条第一項第一号から第十六号まで又は第二十二号に掲げる不正競争(同項第四号から第九号までに掲げるものにあっては、技術上の秘密に関するものに限る。)によって営業上の利益を侵害された者(以下この項において「被侵害者」という。)が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、被侵害者の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において、被侵害者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を被侵害者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。(該当しない17号~21号に対する語呂ですね。)
第5条第3項:損害賠償の特則は「破天荒な無礼爺さん」で完全攻略!
不正競争防止法第5条第3項は、一定の不正競争行為に対して損害額の特則的な算定が認められる条文です。論文試験でも出題されることがあり、対象となる号をしっかり覚えておく必要があります。
✅ 第5条第3項の内容とは?
条文の要点を整理すると、以下の不正競争行為によって営業上の利益を侵害された場合、**「次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて、一定額を損害額とみなして請求できる」**という特則的な損害賠償制度が定められています。
対象となるのは、第2条第1項各号のうち、第1〜9号・第11〜16号・第19号・第22号です。
❌ 該当しない号は?覚えにくい例外こそ語呂で覚えよう!
この条文で**対象外(=第5条第3項が適用されない号)**となる号は以下のとおりです:
- 第10号
- 第17号
- 第18号
- 第20号
- 第21号
これらを効率よく覚えるために使えるのが、次の語呂合わせです。
💡 語呂合わせ:「破天荒な無礼爺さん」で例外を一発暗記!
「破天荒な無礼爺さん」
→ 破(8号)・天(10号)・荒(7号)・な(17号)・無(20号)・礼(21号)・爺(18号)・さん(複数号)
少し強引なようで、語呂に含まれる数字との結びつきで自然と記憶に残ります。
フレーズ | 対応号 | 内容の例 |
---|---|---|
破天荒(はてんこう) | 8号・10号・7号 | 商品形態模倣、限定提供データ、誤認表示など |
無礼爺さん(ぶれいじいさん) | 20号・21号・18号・17号 | 信用毀損、技術的制限手段、ドメイン関連など |
この語呂で対象外の号=覚えるべき例外が一目でわかります!

ちょっと無理やり感もあるけど、ないより全然いいと思うので使ってみてね。
弁理士試験勉強方法 語呂合わせの使い方
語呂合わせは全部法文集に書き込みましょう。
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四法横断法文集は短答受験生ならみんな持っているバイブルみたいな感じだね。
よくある質問(FAQ):不正競争防止法をわかりやすく解説!
Q1. 不正競争防止法とは何ですか?簡単に教えてください。
A.
不正競争防止法とは、企業や個人の営業上の利益を守るために、他人のアイデア・信用・技術などを不正に利用する行為(不正競争)を禁止する法律です。主に以下のような行為を取り締まります:
- 他社商品の模倣(形態模倣)
- 営業秘密の不正使用
- 他人の商標に類似した表示の使用(混同惹起)
- ドメイン名の不正取得
- データベースの不正利用(限定提供データ)
この法律は、知的財産法の一つとして、営業上の公正な競争を維持する役割を担っています。
Q2. 不正競争防止法はどんな場面で使われるのですか?
A.
以下のようなケースで実際に利用されます:
- 元社員が持ち出した顧客リストを使って営業を開始した
- 他社そっくりのパッケージで製品を販売した
- 人気ブランドに似たロゴで販売し、消費者を混乱させた
企業間のトラブルやビジネス上の不正行為への民事訴訟や差止請求の根拠として用いられます。
Q3. 弁理士試験で不正競争防止法はどのように出題されますか?
A.
主に以下の形式で出題されます:
- 【短答式】→ 条文知識が中心。特に**第2条(不正競争行為の類型)と第5条(損害額算定)**は頻出です。
- 【論文式】→ 事例問題として出題。営業秘密や限定提供データに関する法的構成力と実務的理解が問われます。
語呂合わせや表で条文を整理することで、短答・論文ともに得点しやすくなります。
Q4. 不正競争防止法で保護される「営業秘密」とは何ですか?
A.
営業秘密は、次の3要件を満たす情報です:
- 秘密として管理されていること(秘密管理性)
- 事業活動に有用な情報であること(有用性)
- 公然と知られていないこと(非公知性)
例:製造ノウハウ、顧客名簿、販売戦略など。
この要件を満たせば、盗用・漏洩から法的に保護されます(不競法2条1項7号など)。
Q5. 最近の改正で注目すべきポイントはありますか?
A.
近年の主な改正ポイントは以下のとおりです:
- 限定提供データの保護(2019年改正)
営業秘密には当たらないが、有償で限定的に提供されるデータを保護対象に追加(2条1項11号) - 不正競争の刑事罰強化
営業秘密侵害の罰則が強化され、国外移転にも適用されるようになっています。 - 損害賠償の立証負担軽減(5条)
推定規定や特則によって、被害者側の立証がしやすくなりました。
その他の分野の語呂合わせ
下記リンクにそれぞれの分野の語呂合わせをまとめているので参照してみてください。
最後に
いかがだったでしょうか?本日は不正競争防止法のゴロ合わせを紹介してみました。ぜひぜひ使ってみてください。
また、私が受けていたStudyingの弁理士講座について知りたい方は下記をご参照ください。
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