弁理士試験、知財実務に役立つ判例編①~均等論、特許権の消尽、並行輸入品の特許権消尽

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この記事は、令和3年度に1年10万円以下で弁理士試験に合格した現役企業内弁理士が実体験を元に書いています。

弁理士試験には覚えなければならない重要な判例がいくつもあります。ここでは簡単に要点だけまとめて解説していきたいと思います。

そしてそれはもちろん実務にも役に立ちます。

均等論~ボールスプライン軸受け事件

概要

経緯

最高裁判所が均等論についての判断を示した事件で、原審にあたる東京高等裁判所の判決を破棄して、事件を差し戻したものであります。

内容

イ号と特許製品の間に差異が存在しても、以下の要件を満たす場合はイ号が特許請求の範囲に入ると認めるものであります。

  • 要件①異なる部分が発明の本質的部分でないこと
  • 要件②置換しても発明本来の目的を達成することができ、同一の作用効果を奏すること
  • 要件③置換することが侵害時点の当業者にとって容易に想到することができたものであること
  • 要件④対象製品が特許出願時点における公知技術と同一、または公知技術から容易に推考することができたものでないこと
  • 要件⑤対象製品が出願手続きにおいて意識的に除外されている等の特段の事情のないこと
趣旨(以下判決文になります。)

①特許出願の際に将来のあらゆる侵害態様を予想して明細書の特許請求の範囲を記載することは極めて困難であり、相手方において特許請求の範囲に記載された構成の一部を特許出願後に明らかになった物質、技術等に置き換えることによって、特許権者による差し止め等の権利行使を容易に免れることができるとすれば、社会一般の発明への意欲を減殺することとなり、発明の保護、奨励を通じて産業の発達に寄与するという特許法の目的に反するばかりでなく、社会正義に反し、衡平の理念にもとる結果となるのであって、

②このような点を考慮すると、特許発明の実質的価値は第三者が特許請求の範囲に記載された構成からこれと実質的に同一なものとして容易に想到することができる技術及び、第三者はこれを予期すべきものと称するのが相当であり、

③他方、特許発明の特許出願時において公知であった技術及び当業者がこれから右出願時に容易に遂行することのできた技術については、そもそも何人も特許を受けることができなかったはずのものであるから(特許法29条参照)、特許発明の技術的範囲に属するものということができず、

④また、特許出願手続きにおいて出願人が特許請求の範囲から意識的に除外したなど、特許権者のがわにおいていったん特許発明の技術的範囲に属しないことを承認するか、または外形的にそのように解されるような行動をとったものについて、特許権者が後にこれと反する主張をすることは、禁反言の法理に照らし許されないからである。

受験生にとってはマストで覚えなきゃいけない項目だね。

趣旨とセットで覚えると覚えやすいよ。

特許権の消尽~BBS事件~

概要

経緯

BBS社の自動車用アルミホイールの特許に関する事件。BBS社はドイツ、日本において、自動車用アルミホイールに関する同一発明について特許権を有しており、同社は特許発明を実施して生産した製品をドイツ国内で販売しました。一方、並行輸入業者がこの製品を購入して日本に輸入し、日本国内で販売しました。それに対してBBS社は、並行輸入した業者及び日本で販売した業者に対し、日本での特許権に基づき差し止め請求及び損害賠償請求をしましたが棄却されたという事件です。

その傍論にて特許権の消尽について記載されているものです。

内容

特許権者から特許製品が流出し、その後転々流通する場合において、転々流通する行為については特許権が及ばない(消尽説)

趣旨
  • 特許製品の自由な流通が妨げられてしまう
  • 二重の利得を認めるべきではない

簡単だからきちんと書けるようにしておこう

並行輸入品の特許権消尽~BBS事件~

概要

経緯

BBS社の自動車用アルミホイールの特許に関する事件。BBS社はドイツ、日本において、自動車用アルミホイールに関する同一発明について特許権を有しており、同社は特許発明を実施して生産した製品をドイツ国内で販売しました。一方、並行輸入業者がこの製品を購入して日本に輸入し、日本国内で販売しました。それに対してBBS社は、並行輸入した業者及び日本で販売した業者に対し、日本での特許権に基づき差し止め請求及び損害賠償請求をしましたが棄却されたという事件です。

その中で並行輸入品の特許権が消尽するかどうかについて述べられています。

内容(以下判決文になります。)

まず、「特許権者が国外において特許製品を譲渡した場合には、…特許権者は,特許製品を譲渡した地の所在する国において…対応特許権を有する場合であっても、我が国において有する特許権と…対応特許権とは別個の権利であることに照らせば、特許権者が対応特許権に係る製品につき我が国において特許権に基づく権利を行使したとしても、これをもって直ちに二重の利得を得たものということはできない」と述べています。

「我が国の特許権者又はこれと同視し得る者が、国外において特許製品を譲渡した場合においては、特許権者は、譲受人に対しては、当該製品について販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨を譲受人との間で合意した場合を除き、譲受人から特許製品を譲り受けた第三者及びその後の転得者に対しては、譲受人との間で右の旨を合意した上特許製品にこれを明確に表示した場合を除いて、当該製品について我が国において特許権を行使することは許されないものと解するのが相当である。

趣旨
  • 対応特許権が必ずしも存在するとは限らない
  • 自国の特許権と対応特許権は別個の権利なので権利行使を認めたとしても、二重に利得を得たとは必ずしもいえない。
  • 国際商取引が極めて広範囲、かつ高度に発展しているため譲受人または譲り受け人から特許製品を譲り受けた第三者が我が国に輸入し、特許製品を使用、譲渡することは十分に考えられる。
  • 特許権者が留保を付さないまま特許製品を国外において譲渡した場合には譲受人及びその後の転得者に対して、我が国において譲渡人の有する特許権の制限を受けないで当該製品を支配する権利を黙示的に許諾したと解すことができる

少し難しいけど、そのまんま出ても文句は言えないよ

最後に

弁理士試験、知財実務に役立つ判例編①~均等論、特許権の消尽、並行輸入品の特許権消尽について本日は解説いたしました。

いかがだったでしょうか?

また他にも弁理士試験の勉強方法、知財部で仕事内容に解説していますので、ぜひご覧ください。

私が弁理士試験にかけたコストや時間及びおすすめの講座についてはこちらにまとめていますのでご参照ください。

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