弁理士試験、知財実務に役立つ判例編⑤~プロダクトバイプロセスクレーム、用途発明~

知財業務全般

この記事は、令和3年度に1年10万円以下で弁理士試験に合格した現役企業内弁理士が実体験を元に書いています。

弁理士試験には覚えなければならない重要な判例がいくつもあります。ここでは簡単に要点だけまとめて解説していきたいと思います。

そしてそれはもちろん実務にも役に立ちます。

プロダクトバイプロセスクレーム

概要

特許法36条5項によると特許請求の範囲の請求項の記載は出願人の自己責任において記載する。

したがって物の発明において方法的記載(プロダクトバイプロセスクレーム)をすることも、特許を受けようとする発明が明確である限り、出願の自由であるとも考えることもできる。

下記判例には「方法的記載においても権利範囲は物自体であること」「方法的記載によらなければ発明の構成を特定できない時に限るべき」が示されています。

方法的記載にして、権利範囲を不当に分かりにくくするのはあんまりみんなの利益にならないよね。

内容(以下判決文の抜粋になります。平成11(行ケ)437、平成14-6-11)

①本件発明が、製造方法の発明ではなく、物の発明であることは、特許請求の範囲の記載から明らかであるから、本件発明の特許請求の範囲は物(プロダクト)に係るものでありながら、その中に物に関する製法(プロセス)を包含するという意味で、広い意味でのいわゆるプロダクトバイプロセスクレームに該当するものである。そして、本件発明が物の発明である以上、本件製法要件は、物の製造方法の特許発明の要件として規定されたものではなく、光ディスク用ポリカーボネート成形材料という物の構成を特定するために規定されたものという以上の意味は有しえない。

②そうである以上、本件発明の特許要件を考えるに当たっては、本件製法要件についても、果たしてそれが本件発明の対象である物の構成を特定した要件としてどのような意味を有するかを検討する必要はあるものの、物の製造方法自体としてその特許性を検討する必要はない

③発明の対象を物を製造方法としないで物自体として特許を得ようとする者は、本来なら、発明の対象となる物の構成を直接的に特定するべきなのであり、それにもかかわらず、プロダクトバイプロセスクレームという形による特定が認められるのは、発明の対象となる物の構成を製造方法と無関係に直接的に特定することが、不可能、困難、あるいは何らかの意味で不適切(例えば、不可能でも困難でもないものの、理解しにくくなる度合が大きい場合などが考えられる。)であるときは、そのものの製造方法によって物自体を特定することに、例外として合理性が認められるが故である。というべきであるから、このような発明についてその特許要件となる新規性あるいは進歩性を判断する場合においては、当該製法要件については、発明の対象となる物の構成を特定するための要件として、都のような意味を有するかという観点から検討して、これを判断する必要はあるものの、それ以上に、その製造方法としての新規性あるいは進歩性等を検討する必要はないのである。

受験生も抑えておくべき判例になるので、概要は理解しておこう。

用途発明

概要

用途発明とは、既知の物質において未知の属性を発見し、この属性によって、この物質が新たな用途への使用に適することを見出したことに基づいた発明をいいます。

一般に、ある物の道の属性の発見に基づき、その物の使用目的として従来知られていなかった一定の目的に使用する点に創作性が認められた場合にその発明は用途発明として新規性が認められる。

化学物質の技術分野にはあり得る発明だね。逆に機械や装置などの技術分野では結構少ないかな。

内容(以下判決文の抜粋になります。平成10(行ケ)401、平成13-4-25)

①本願発明の要旨は、「タピオカ澱粉12~15重量%と殻粉類88~50重量%とからなる即席冷凍麺類用殻粉」というものであるから、本願発明は、タピオカ澱粉という既知の物質の特定の属性により、これを特定割合で他の殻粉類と配合して即席冷凍麺類用殻粉という用途に使用することについての発明であるということができ、講学上用途発明と称されるものということができる。

用途発明は、既知の物質のある未知の属性を発見し、この属性により、当該物質が新たな用途への使用に適することを見出したことに基づく発明であると解すべきである。なぜなら、既知の物質につき未知の物質の属性を発見したとしても、それによって当該物質の適用範囲が従来の用途を超えなければ、技術的思想の創作であるということはできず、また、新たな用途への使用に適するといえるものでなければ、適用範囲が従来の用途を超えたとは言い難いからである。

用途発明に係る特許出願については、出願前に、その物質自体は公知であっても、当該新たな用途への使用に適することが見出されてなければ、発明の新規性は否定されないというべきである。したがって、用途発明の新規性を判断する上で、これと対比して同一であるかどうかを判断する対象となる発明も用途発明でなければならない。

④同様に、用途発明に係る特許出願につき、当該特許出願の日前の他の特許出願であって当該特許出願後に出願公開等がされたものの願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であるとして特許法29条の2第1項により、特許を受けることができないとされるためには、上記「当該特許出願の日前の他の特許出願に係る発明」も用途発明でなければならない。

⑤また、用途発明に係る特許出願に限らず、一般に、特許出願に係る発明が特許法29条の2第1項により、特許を受けることができないとされるためには、上記「当該特許出願の日前の他の特許出願に係る発明」は、発明として完成していることを必要とするものというべきである。そして、発明が完成したというためには、その技術手段が当該技術分野における通常の知識を有する者が反復実施して目的とする効果を上げることができる程度までに具体的、客観的なものとして構成されていることを要し、かつこれをもって足りるものを解すべきである。

どちらかというと実務寄りの内容なので、受験生は聞いたことあるぐらいで良いかと思います。

最後に

弁理士試験、知財実務に役立つ判例編判例編⑤~プロダクトバイプロセスクレーム、用途発明~について本日は解説いたしました。

いかがだったでしょうか?

また他にも弁理士試験の勉強方法、知財部で仕事内容に解説していますので、ぜひご覧ください。

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