直接PCT出願から国内移行までの流れ[弁理士試験受験生及び知財部必見]

知財業務全般

この記事は、令和3年度に1年10万円以下で弁理士試験に合格した現役企業内弁理士が実体験を元に書いています。

PCT出願って中々複雑で難しいですよね。弁理士試験受験生も知財部勤務、特許事務所勤務の方にも役立つように今日はざっくりお教えいたします。

PCT出願とは

PCTとは、「Patent Cooperation Treaty」の略で、日本語では「特許協力条約」となります。

目的は手続きの簡素化

従来、ある発明に対して特許権を付与するか否かの判断は、各国がそれぞれの特許法に基づいて行っております。すなわち、ある国で特許を取得するためには、その国に対して直接、特許出願をしなければなりません。

しかし、それでは手続きが非常に煩雑です。

また、先願主義のもと、一日でも早く出願することが重要なのですが、全ての国に早期に同時に出すことはほぼ不可能と言えます。

PCT国際出願日が、各国の出願日としてみなされる。

PCT国際出願は、自国の特許庁に対してその特許庁が定めた言語日本国特許庁の場合は日本語若しくは英語)で出願すれば、同時に全てのPCT加盟国に対して出願をしたものと見なされます。

国際調査、国際予備審査を利用することができ、国際段階で補正や審査を受けられる。

PCT出願をすると、国際調査と呼ばれる新規性や進歩性についての審査官の調査結果が作成されます。この調査で特許性があったからと言ってすなわち各国で特許を受けられるわけではありませんが、各国の審査の参考とされ、かつPCT出願を行った出願国においては国内の審査でも特許を受けられることが多いです。

出願人が希望すれば、費用は掛かりますが、国際予備審査という追加の審査を受けることができます

国際予備審査では、国際調査の結果を受けて補正したクレームについても審査を受けることができます。

あくまで各国の特許性の判断は各国で行う。

PCT出願はあくまで手続きの簡素化が目的であるので、特許性の判断は各国が独立して決めることになります。

また国際段階で認められた補正が、各国で認められない場合もあります。

最終的な審査の判断基準は各国で行われるので、国際調査報告で特許性が認められても各国で拒絶されることはよくあるよね~

海外に出願を行う場合には2種類ルートがある。

直接出願ルート(パリルート)

「パリ条約ルート」とはパリ条約に基づいて外国に出願する方法の事です。

主に自国の第一出願に基づいて、パリ条約による優先権を主張して、外国に出願していきます。

優先権を主張しているので第一国での出願と同じ出願日で出したのと同じ効果が得られますが、1国ずつ出すので、出願国が多くなってくると煩雑になってきます。

PCT国際出願ルート

このページで主に説明しているPCT出願ですね。

最初からPCT出願として一括で出願するパターンです。

出願国が多くなればなるほど、直接出願ルート(パリルート)に比べて手続き面もコスト面もメリットが出てきます。

通常は直接PCT出願を行う場合が多いね

PCT出願の流れ

PCT出願のフローチャートを下記に示します。

PCT出願のフローチャート
国際調査、国際調査報告
  • PCT出願を行うと国際調査機関(出願が日本語の場合は日本国特許庁、英語の場合は日本国特許庁又は欧州特許庁から選択できる)はクレームに記載された発明に関連のある先行技術を発見することを目的として国際調査を行います。
  • 国際調査報告は、上記国際調査の結果として所定の期間内に作成され、出願人に送付されます。
  • 国際調査報告は各国の審査の参考にはなりますが、最終的には各国の審査で特許性を判断します。
19条補正、34条補正
  • 出願人の希望で19条補正、34条補正を行うことができます。
  • 19条補正は、国際調査報告を受領してから所定の期間の間に、国際出願の請求の範囲について1回に限り補正をすることができます。
  • 34条補正は、国際予備審査を請求してから何度でも明細書について補正をすることができます。
国際予備審査
  • 出願人の希望で国際予備審査請求を行うことができます。
  • さらなる見解を入手したい場合や34補正をしたい場合などに国際予備審査を請求することができます。
  • 国際予備審査が請求されると、国際予備審査機関は、クレームの発明が特許性(新規性、進歩性(非自明性)、産業上の利用可能性)を有するかどうかについて国際予備審査を行います。
  • 国際予備審査報告は各国の審査の参考にはなりますが、最終的には各国の審査で特許性を判断します。
国際公開
  • 国際出願(明細書、請求の範囲、図面)は、国際調査報告と共に優先日から18ヶ月を経過した後、速やかに国際公開されます。
  • 国際公開の内容は、明細書、請求の範囲及び図面の全文に加えて、国際調査報告及び国際調査見解書、そして、19条補正があった場合には補正後の請求の範囲等も合わせて掲載されます。
国内移行、翻訳文提出
  • 出願人は、特許を受けたい国を決めて優先日から30ヶ月以内にそれらの国へ国内移行手続を行う必要があります。
  • 上記期間内に国内移行手続を行わなかった国については、国際出願は取り下げられたものとみなされます。。
  • 国内移行した後は、各国の定める国内法令に従って手続きが行われます。

PCT出願は用語と流れが大事なのでまずは大体どの時期に何が行われるのかを抑えておこう

国際調査報告書の読み方

特許出願2019-523259の例を使わせていただきます。

下記に国際調査報告の例を添付させていただきます。

基本的に重要なのは、関連すると認められる文献のところです。

引用文献のカテゴリー

引用文献のカテゴリーとは

X: 単⼀の⽂献のみで発明の新規性⼜は進歩性がない
Y: 他の⽂献との組み合わせにより発明の進歩性がない
A: ⼀般の技術⽔準を⽰すもの

を表します。

国際調査報告書から何が分かるか

中段は引用文献名とその関連する箇所が書かれています。

そして一番右には、関連する請求項の番号が書かれています。

つまりこの報告書から何が分かるかというと

請求項1~5は上記の2つの引例に基づいて進歩性が無いということで、詳細は中段の指し示す明細書や図面に書いてあるということです。

この見解に基づいて19条補正を行っていくかどうかを検討します。

本日はPCT出願の全体の流れについて解説いたしました。ぜひ受験生や実務に関わる方は参考にしてください。

また他にも弁理士試験の勉強方法、知財部で仕事内容に解説していますので、ぜひご覧ください。

私が弁理士試験にかけたコストや時間及びおすすめの講座についてはこちらにまとめていますのでご参照ください。

知財関係の転職をご検討中の方はこちらをご参照ください。

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